好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏

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嘘だ!





「み、らい?」

「ええ。」


 まだ婚約をした事実は無い、というかまだ先程のエディオからの提案に返事をしていない状況なので未来も何もと思うが、これ以上こんな人目の多い場所でロメオに絡まれたくなかった。
 メアリーナがそう告げた途端、ロメオが衝撃を食らったような、どこか傷付いたような表情になった事に疑問を抱いたが、昔のように心は痛まない。


(意味が分からないわ。なぜそんな顔をするのかしら…。)



 エディオの腕に自分の腕を緩く絡ませたまま、メアリーナはぎこちなく背伸びをするとこそっと彼の耳元で囁いた。

「エディオ様、面倒に巻き込んでしまって申し訳ありません。ここから逃れるために少々演技に御付き合い頂きたいのですが…」

「…。」


 ところが、エディオからの返事はなかなかなく、おや?と思ったメアリーナは再び彼を見上げた。するとそこには、顔を真っ赤にしたままメアリーナを見つめて固まっているエディオの姿があった。

「エ、エディオ様…?」

「ああ、フルバード嬢、駄目だよ。エディオは今幸せの妄想の真っ最中だから。」

「!シャインズ様…」

 掛けられた声に後ろを振り返るといつの間にそこに居たのか、ダンスフロアに居たはずの四人が戻ってきてにこにこと笑みを浮かべながらこちらを見つめていたことに気がついて、メアリーナはぱっと頬を染めた。


(まさか、さっきのを聞かれて…?!)


「いやー、良かった良かった。長年のエディオの気持ちがようやく届いたんだな。」

「良かったわね、メア。」

「カレン、それはどういう事?」

「まあまあ、詳しくは向こうに移動して話をいたしましょう。」

「それと、テューダーズ伯爵子息。貴方は本日の来賓ではございませんから、直ぐに衛兵が来るのでそこを動かれませんように。」

 ティアラに優しく促されカレンデュレアのロメオは出席者では無いという言葉に戸惑いながらも、エディオと歩き出そうとしたメアリーナは、途端に足を止められてしまった。ロメオの大きな叫び声によって。


「嘘だ!」

「……」

(この人…)


 ロメオは形の良い唇をひくつかせながら、首を横に振り必死の形相でメアリーナをギラギラとした目でまるで睨みつけるように見つめていた。その狂気じみた視線に、少女は思わず目の前の青年の腕をきゅっと握りしめた。



「だって君は…、君はまだ私の事が好きなはずだ!拗ねてるだけなんだろう?!他の女は全部遊びだと言ったじゃないか!」


 あまりの言葉の内容…そして大きな声に、周りにいた人々がギョッとしたようにロメオに視線を向けたのが、空気で分かった。


「…何を仰ってるんですか?」

「私のことが好きなのに、他の女と遊んだりしたから嫉妬をしただけなんだろ?そうなんだろ?そういうのは可愛げがないと言ったじゃないか、君は黙って受け入れて入れば良いんだ!」



(…私はこんな人のどこを好きだったのかしら…?)



 ロメオの戯言に疲れを感じ頭を抱えたくなりながら。言い返そうとしたメアリーナよりも先に口を開いたのは、エディオだった。彼女と会話をしていた先程よりもかなり低く冷たい声だった。



「非常に不愉快だな。」

「?!」

「いい加減に、だと?それは君の方なんじゃないのかい?さっきから聞いていれば、君はメアリーナ嬢に対して以前に女性に対して失礼な事ばかり言っていることに気がついていないのか?」

「なっ」

「本気じゃない、遊んだだけ。それで?嫉妬をしている?馬鹿なのか?君はただ彼女の優しさにつけ込んでいただけだろう。」

「…っ!」

「挙句に自分の身勝手で婚約破棄になった事にも納得せず、呼ばれてもいない夜会で自らを貶める事をして、満足か?周りを見てみろ。」

「……、ぁ。」


 エディオの言葉に、頭に血が上っていたロメオはやっと思い出したらしい。自分がどこで何をしていたのかを。


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