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どうしているの?
まだ呼ばれていないので、廻廊からは動くことが出来ない。気分が盛り下がってしまったミアは、廻廊の端っこへと移動すると、そこにあった大きな半円型の窓の外を見た。豪華に金の蔦で縁どりされた窓枠も気になるのだがその向こう側。
王宮の整備された庭園が遠く塀の向こう側にちらりと見えている。春真っ盛りの今は、色とりどりの花が咲き誇っているのだろうと考えて心を落ち着かせた。
暫くの間、そうしていると。大広間から盛大なファンファーレが鳴り響いた。
廻廊側にいた文官がこちらへと向けて手を掲げ、ざわめきが一瞬静けさの中に沈む。
「それでは諸君、ゆっくりと入場をしてください。」
その声に、頬を赤く染めた少女達と殊更顔を引き締めた少年達の列が動き始める。ミアも緊張した面持ちで顔を上げ、そっとその列の後ろに並び歩き始めようとした。けれど。
「あら、ごめんあそばせ。」
そんな声と共に、後ろ側から背中をドン、と誰かに押された。あ、と思う間もなく身体が前に傾き、慌ててバランスを取ろうと左足を前に出したら、それがドレスの裾を踏んづけてしまった。
どっちが悪魔っ?!
と頭のどこかで思いながらも、大理石の廊下にそのまま顔から突っ込みそうになりミアは反射的にぎゅっと強く目を瞑った。直後にぽふ、と何かに当たった気がした。
その後、待てど暮らせどやって来るはずの衝撃も痛みも訪れなくて。
ミアは恐る恐る目を開けた。床の代わりに、目の前に真っ白で光沢のあるものが見えた。
「大丈夫?」
次の瞬間、上から低く耳触りの良い声が降ってきて、ミアは弾かれたように顔を上げる。
そこには、温かな陽光が透けるダイヤモンドのように煌めく瞳が少女を覗き込んでいた。
金色の長い睫毛がその瞳に影を落として、そこには星屑が散らばっているようにも見える。頭一つ分、ミアよりも大きなその人は。
「……ソレイユ?何故、いるの?」
吃驚したミアは目を大きく見開いたまま彼を見つめた。彼は不思議そうな顔をして首を傾げ、こちらを見た。
……本人は自覚ないのだろうが、あざとい。
「何故って。デビュタントだから?」
「だって、貴方。明日の予定じゃなかった?」
この国の二大公爵家の一つ、アジェランデ公爵家の嫡男、ソレイユ・セウ・アジェランデ。
この国のNO.2である現宰相の息子である。
そう。何を隠そう、彼こそがミアの唯一の友人であった。今帝国へと留学中の彼は、デビュタントの為に帰国していたはずだ。但しソレイユは初日ではなく、二日目の目玉であったはずだけれど。
「ああ。叔父上にお願いして、今日にずらしてもらったよ。」
「おじ……?……王様?」
「うん。」
「ず、ずらす、なんてこと出来るの?……というか、ごめんなさい。もう大丈夫よ。」
話をしながら、辺りを見渡すと此方を呆然と見ている数人の子女が残っているだけだった。その中にミアを転ばせようとした少女がいるのかは不明だったけれど。
彼らのその訝しげな視線に、ミアはずっとソレイユに抱き締められるように抱えられたままだったことに漸く気がつき、慌ててその腕から離れる。
目の前に見えていたのは、彼のデビュタント用の白の蝶ネクタイだったようだ。
離れてみると、ソレイユは黒の燕尾服を着ていた。
輝く白金髪は前髪を上げて後ろへと撫で付け、肩を越える程の長さの後ろ髪を黒に金糸で刺繍されたリボンで左サイドに束ねていた。流石公爵家と言った洗練された出で立ちで様になっている。
彼と──ソレイユと友人になったのは、ある偶然の出来事だった。
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