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再び失った日(アゼリア)
しおりを挟むディオラルドが自分を選んでくれたと家族から聞いた時、嬉しさの余りアゼリアは泣いてしまった。成長する過程で何度もユリアーナと比べられていると感じ、家柄も美しさも能力も届かない相手に勝てたという浅ましい気持ちがそこには確実に存在したいた。
そしてその純粋にディオラルドに好意を寄せているという気持ちだけではない思いは、周りに全て伝わっていたと後で気付かされた。
母だった人はこう言った。
「アゼリア、貴女はもう直ぐ成人となります。わたくし達後見人の手を離れて、ディオラルドと暮らす事を許しましょう。この先はもうステイフィルドとの関係性は無くなりますが、健やかに生きていってください。」
「…どういうことでしょうか?」
「そのままの意味ですよ?
貴女は成人するまでの期間我が家で保護していたサンドール男爵家の娘。本当はこちらでそれなりの貴族の男性を紹介する予定であったけれど、貴女は義理の姉としてずっと接してもらっていたユリアーナから婚約者を譲ってもらったのだからその必要が無くなったのです。
ああ、先に伝えておくけれど、ディオラルド・アヴダントは、既に貴族籍を離れる手続きが終わっています。なので、今は平民のディオラルドです」
「え…、え、あの、お母様…」
「貴女のお母様は、サンドールの母だけと昔、貴女が言っていたはずだけれど?」
混乱するアゼリアの言葉を遮るように、けれど優しく伯爵はそう言った。
確かに何度かそう言った事はある。それはそうだ、自分はまだこちらに来たばかりの幼い子どもだったのだ。突然家族が変わるなんて、受け入れられなくても当然だろう。そう思ったけれど。
焦るアゼリアに対して、伯爵は首を傾げて砕けた口調で言った。
「まさか、三ヶ月前の事を忘れているのかしら?貴女が家へとやって来て七年の月日が流れたけれど、貴女はディオラルドに言っていたじゃない?『亡くなった母の事を忘れたことは一時もありません。今でも母はあの方だけだと思っています』と。それで私達は、貴女を養女にしていなくて本当に良かったと思ったのよ。ね、貴方」
「ああ、そうだな。本当の家族には私達ではなれなかったが、きっとディオラルド君とはなれるだろう」
アゼリアの顔からサッと血の気が引いた。確かにディオラルドにそう伝えた事がある。でもそれは、本当にそう思っていたのではなく彼の気持ちを引きたいだけの言葉だった。
家族となったのに、何時まで経っても自分はユリアーナのように伯爵である母に認めて貰えない。それは自分に力がないからだと、ユリアーナと離れた僅かな時間、そう、見送りの際に泣いて縋った覚えがあった。その言葉を誰かに…きっと周りにいた侍女だろうとアゼリアは検討がつき、冷や汗が額を伝った。
動揺が隠せないまま、アゼリアは伯爵の隣に座る父を泣きそうな顔で見つめた。
「お、お父様…」
「アゼリア嬢。君の未来に幸ある事を祈っているよ。大丈夫だ、ディオラルド君はああ見えて騎士として育ててこられた子どもだからね。きっと兵士としても優秀なんじゃないかな。きっとね」
そう言って優しく微笑まれ、アゼリアは何も言えなくなった。少女は生まれてからずっと貴族として生きてきた。まさか、関係性を切られるとは思ってもおらず、結婚した後もステイフィルド伯爵家と共にあるものだと思い込んでいた。
平民になるというのは未知のことであり、ディオラルドと一緒に居られるのは良かったが、それでも不安の方が大きい。小さく震えながら俯く少女に伯爵はにっこりと微笑んで続ける。
「貴女にはきちんと教育を施したわ。
ユリアーナはしていないのに何故貴女は家事を習うのか?と以前問うたわよね?今、答えましょう。
貴女はいつか貴族に嫁ぐ予定ではあったけれど、もし万が一、貴女が好きになる相手が有力な商人や平民であっても生きていけるようにとの考えだったのよ。知識が役に立ちそうで安心したわ。これで、亡きサンドール男爵夫妻にも貴女は大丈夫だと安心して頂けるでしょう」
……………………………………………
「HOT 女性向け1位」をありがとうございます(*.ˬ.)"
初めましての出来事で、嬉しくも驚愕しております…。。。あわ(;˙꒳˙ 三 ˙꒳˙ 三 ˙꒳˙;)あわ
明日で完結ですので、お時間良かったら是非最後まで読んでやってやって下さいませ☆
7,695
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