王命を忘れた恋

須木 水夏

文字の大きさ
11 / 14

再び失った日(アゼリア)

しおりを挟む




 ディオラルドが自分を選んでくれたとから聞いた時、嬉しさの余りアゼリアは泣いてしまった。成長する過程で何度もユリアーナと比べられていると感じ、家柄も美しさも能力も届かない相手に勝てたという浅ましい気持ちがそこには確実に存在したいた。
 そしてその純粋にディオラルドに好意を寄せているという気持ちだけではない思いは、周りに全て伝わっていたと後で気付かされた。







「アゼリア、貴女はもう直ぐ成人となります。わたくし達の手を離れて、ディオラルドと暮らす事を許しましょう。この先はもうステイフィルドとの関係性は無くなりますが、健やかに生きていってください。」
「…どういうことでしょうか?」
「そのままの意味ですよ?
 貴女は成人するまでの期間我が家で保護していたサンドール男爵家の娘。本当はこちらでを紹介する予定であったけれど、貴女は義理の姉としてずっと接してもらっていたユリアーナから婚約者をのだからその必要が無くなったのです。
 ああ、先に伝えておくけれど、ディオラルド・アヴダントは、既に貴族籍を離れる手続きが終わっています。なので、今は平民のディオラルドです」
「え…、え、あの、お母様…」
「貴女のお母様は、サンドールの母だけと昔、貴女が言っていたはずだけれど?」



 混乱するアゼリアの言葉を遮るように、けれど優しく伯爵はそう言った。
 
 確かに何度かそう言った事はある。それはそうだ、自分はまだこちらに来たばかりの幼い子どもだったのだ。突然家族が変わるなんて、受け入れられなくても当然だろう。そう思ったけれど。
 焦るアゼリアに対して、伯爵は首を傾げて砕けた口調で言った。



「まさか、三ヶ月前の事を忘れているのかしら?貴女が家へとやって来て七年の月日が流れたけれど、貴女はディオラルドに言っていたじゃない?『亡くなった母の事を忘れたことは一時もありません。今でも母はあの方だけだと思っています』と。それで私達は、貴女をにしていなくて本当に良かったと思ったのよ。ね、貴方」
「ああ、そうだな。には私達ではなれなかったが、きっとディオラルド君とはなれるだろう」



 アゼリアの顔からサッと血の気が引いた。確かにディオラルドにそう伝えた事がある。でもそれは、本当にそう思っていたのではなく
 家族となったのに、何時まで経っても自分はユリアーナのように伯爵である母に認めて貰えない。それは自分に力がないからだと、ユリアーナと離れた僅かな時間、そう、見送りの際に泣いて縋った覚えがあった。その言葉を誰かに…きっと周りにいた侍女だろうとアゼリアは検討がつき、冷や汗が額を伝った。

 動揺が隠せないまま、アゼリアは伯爵の隣に座るを泣きそうな顔で見つめた。


「お、お父様…」
「アゼリア嬢。君の未来に幸ある事を祈っているよ。大丈夫だ、ディオラルド君はああ見えて騎士として育ててこられた子どもだからね。きっと兵士としても優秀なんじゃないかな。きっとね」




 そう言って優しく微笑まれ、アゼリアは何も言えなくなった。少女は生まれてからずっと貴族として生きてきた。まさか、関係性を切られるとは思ってもおらず、結婚した後もステイフィルド伯爵家と共にあるものだと思い込んでいた。
 平民になるというのは未知のことであり、ディオラルドと一緒に居られるのは良かったが、それでも不安の方が大きい。小さく震えながら俯く少女に伯爵はにっこりと微笑んで続ける。






「貴女にはきちんと教育を施したわ。
 ユリアーナはしていないのに何故と以前問うたわよね?今、答えましょう。
 貴女はいつか貴族に嫁ぐ予定ではあったけれど、もし万が一、有力な商人や平民であっても生きていけるようにとの考えだったのよ。知識が役に立ちそうで安心したわ。これで、亡きサンドール男爵夫妻にも貴女は大丈夫だと安心して頂けるでしょう」











……………………………………………


「HOT 女性向け1位」をありがとうございます(*.ˬ.)"
初めましての出来事で、嬉しくも驚愕しております…。。。あわ(;˙꒳˙ 三 ˙꒳˙ 三 ˙꒳˙;)あわ



明日で完結ですので、お時間良かったら是非最後まで読んでやってやって下さいませ☆





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

後悔は手遅れになってから

豆狸
恋愛
もう父にもレオナール様にも伝えたいことはありません。なのに胸に広がる後悔と伝えたいという想いはなんなのでしょうか。

〖完結〗その愛、お断りします。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った…… 彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。 邪魔なのは、私だ。 そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。 「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。 冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない! *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。 この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

処理中です...