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双子の魔女
未来のその先
しおりを挟む海に飛ばされた双子は、とりあえずそこをしばらく散歩してみた。所謂、ビーチだ。しかも、リゾートか何からしく、賑わっていて、建物もお洒落。
「すごく気に入ったわ、クロ。」
「私もよ、シロ。」
目の前をヒラヒラと軽いワンピースを着た女の人が通り過ぎてゆく。
「…ねえ。ここって南国なんじゃない?」
「たしかに。太陽の輝き方があの国とは全然違うわ。」
タルメニアの服装とは色合いも薄さも違う。なんだか、鮮やかで軽そうな衣装に双子は好奇心が止まらない。
着てるもの、髪型、言葉なんかは新聞で見ていたからそれとなく知っているつもりだったけれど、国によって違うんだわと再認識する。
二人とも興奮してしまって、キョロキョロしていたら、通りがかりの貴婦人に話し掛けられた。
「アナタ達、随分とアンティークな服装をしているのね。お洒落だわ。素敵。」
そう言ってシゲシゲとこちらを眺める白髪の婦人に、クローディアは目を合わせてニッコリと微笑んだ。すると、一瞬目を見開いた後、うっとりとクローディアの目に魅入った。
「貴女、なんて綺麗な目なのかしら。宝石のようね。…あのカフェでお茶でもいかが?」
「…喜んで。」
「ねえ、おばあ様。私達新しくこの街にやってきたの。もし住むところがあったなら、教えて頂けたら嬉しいのだけれど。」
シローネの澄んだ声が、耳地に優しい。
「まあ、住む場所を探してるのね。家に住むといいわ。娘ももう嫁いでしまって、部屋が空いているのよ。」
老女はにこにこと微笑んだ。クローディアとシローネは顔を見合わせると「是非お願いします」と言った。
力は健在のようだ。しかも、前よりも簡単に使えるようになっている気さえする。
双子を家に招き入れてくれたのは、元富豪の奥様であった。家政婦と侍女と料理人が通いでやって来てくれている街の一等地にある豪邸に一人で住んでいるらしい。
「主人は女癖が悪くてね。育ててた娘も愛人の子だったから。慰謝料代わりに貰ったのよ。」
と言って大きな家を案内してくれた。どの窓からも眼下に海の見える景色が広がる。
クローディアとシローネは、彼女の親戚の孫という事にして家に置いてもらった。
勿論、タダで置いてもらうのは気が引けるところもあったので、老婦人の刺繍の手伝いをしたり、食事の手伝いをしたり、歌を歌ったりお喋りをしたり。
カフェでお茶したり、海辺を一緒に散歩したり、しばらく出来ていなかった事をした。
老婦人は、それは楽しく双子と一緒に幾数年すごし、その後老衰で亡くなった。
亡くなる少し前に「アナタ達を養子にしたのよ」と嬉しそうに笑っていた。「私と一緒にいるのが幸せだと笑ってくれるのが本当に嬉しいの。私の方が幸せなのよ」と笑った。
「…親孝行出来たのかしら?」
「…もう少ししたかったわ。」
「そうね。」
「私達、今みたいに愛されていたら、もっと王子様にも優しくできたかしら?」
その言葉には、二人とも答えが出せなくて黙って波打ち際を歩いた。
老婦人の家には時の流れで老朽化してゆく箇所をずっと直しながら住んでいたけれど、ずっと容姿が変化しない双子は、彼女たちの力によって特に怪しまれなかった。
まあほんの少し、気のいい街の人々を騙すことを悪いなあと思うくらいの心はあるので、悠久の時の中、少女達は少しずつ大人になっていけているのかもしれない。
そんな中、自分たちのかけた呪が、パチンと音を立てて弾けて消えたのを感じた。
浜辺でオープンした新しいカフェでゆっくりとくつろいでる時だった。耳のそばで弾けたからビックリして思わずお互いの顔を見たのだった。
結論から話すと、彼女達が掛けた王子様の呪いは、二千年足らずで解けてしまった。二千年と言えば、とっても長いように聞こえるのかも知れないけれど、その間、彼は五回しか転生をしなかった。
五回。たったの五回。その全ての人生の時間を合計しても、二百年。
なんて短いのだろう。六百年分の怒りをぶつけた、クローディアとシローネの呪いって。
「しょうがないわよ。より強い願いに負けてしまったのだもの。」
「何度思い出しても、納得いかないわ。」
今日も波打ち際で愚痴を零すクローディアと、それを流しながら美味しいおつまみを食べるシローネ。
納得いくもいかないも、空は青いし雲は流れるし、海は今日も穏やかなのだから。
「納得しなくても良いんだよ。そうなんだって思うだけで良いのよ。」
と言って、シローネは笑ったのだった。
[完]今度こそ
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