【完結】え、別れましょう?

須木 水夏

文字の大きさ
7 / 23

諦めない男




 そんな変な事が午前中にあり、その午後。いつも通りにメーベリナと図書館へ行こうとしていたアリエットは、そこへ行くまでの道程でまたしてもディオルに絡まれていた。執拗い男である。



「アリー!話が途中だったのに朝は何故挨拶もなしに行ってしまったんだ?」

「はあ?貴方がとお話をされていたからでしょう?」

「なっ!ま、待ってくれたらいいじゃないか!」
 
「何故待たないといけないのですか?私全く関係ないのですけど」

「関係ないことは無いだろう?!婚約者なのに」

「書類のやり取りが本日もう終わっているはずですから、元 ですわね。。」

「はぁ?!」



(はぁ?って何よ。頭の中どうなっているのかしら?
 自分で婚約を解消っていったんでしょうが!もうお父様にもお伝えして午前中に動くって言ってたわよ!いい加減にして欲しいものだわ)





心の中で悪態をつき続けながら、アリエットはメーベリナに先に行くように促した。メーベリナには朝の時点で婚約解消に今後なる旨を伝えているが、またしても廊下の真ん中で大声で話しかけてくるなんて、これではディオルは恥晒しどころではない、恥を積極的にばら撒くマンだ。
 彼女をディオルの戯れ言に付き合わせるのが申し訳なかった。

 けれど、少女は軽く首を振るとアリエットに対してにっこりと微笑んだ後、ディオルを虫螻を見るような目で見ながらこう言った。


「マニール伯爵子息様。幼馴染とは言え、女性に対してそんなに馴れ馴れしくするのはどうかと思いますが?」

「な、メーベリナ」

「あら?わたくしの事も幼馴染だからと言って名前で呼ぶのはやめて頂けません?」
 


 そうなのだ。アリエットとディオル、そしてメーベリナは三人とも領地が隣同士の幼馴染なのであった。
 アリエットとディオルは婚約を結んでいたが特に親しくなかったのと同じように、メーベリナとディオルも、季節ごとに行われる領地同士のパーティーで顔を合わせるくらいの関係性で、勿論親しくない。アリエットとメーベリナは同性でしかも趣味(絵画鑑賞や読書)が被っていたので、会えない間もしょっちゅう手紙のやり取りをし、親友と呼べるほどに仲良くなったのだ。
 それを、何を勘違いしているのか幼馴染なら馴れ馴れしくしても良いと思っているらしいディオルに少女達は呆れた。



「べ、別にいいじゃないか、名前くらい」

「名前くらいではありません。貴方、まさか高位の方にも同じように仰るつもりなの?伯爵様の躾がなっておられませんわね」

「なっ?!」

「例え幼馴染であったとしても、こうも感性が違っておりますと絡むことも難しいのだと思うのです。だから今後は一切声掛けもしてこないでくださいませ?行きましょう、アリー」

「では、失礼致します」




 言葉を挟む間もなく少女二人に背を向けられ、ディオルは唖然としたままそこに立ち止まっているようだった。廊下を進みながらアリエットは大きなため息をつく。


「淑女としては減点すぎる溜息ね」

「溜め息もつきたくなるでしょ、あんなの相手にしてたら」

「本当にね。…彼、あんな愚かな人だった?子どもの頃から知っているけど、もっと大人しかった気がするんだけど。知らない人を見ているようだったわ」

「私も知らなかったわよ。でも環境と恋は人を変えるというじゃない?」

「あら?あの方恋をしているの?え、だからアリーとの婚約を解消したってこと?」



 メーベリナが興味津々な顔でアリエットを振り返った。



「何が原因なのか言ってなかったかしら?」

「聞いていないわよ?でも昔から結ばれても特に利益なし、恋愛感情なしだったでしょう?何かあれば解消になるんじゃないかとは思っていたわ」

「リナは恋愛本の読みすぎだけれど、正しくその通りになったわ。つい二日前に言われたのよ、好きな人ができたって。それでじゃあ別れましょう?ってお伝えしたの。…付き合ってる訳じゃなかったのだから、解消しましょう?の方が良かったかしら?」

「ふふ、確かに。」



 クスクスと笑いながら歩く少女達の後ろ姿を、廊下の角に隠れながらひっそりと見つめる人影があったが、二人は気が付かなかった。












感想 11

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は、公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日、ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。