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彼の気持ち
どう、と聞かれましても。アリエットは特に何も思わなかったのだけれど。それどころか良く分からないイチャモンをつけられて絡まれて、はあ?と思ったくらいだ。
でも、詳しく先程の場面を思い出してみると、皆のと言っているのに、自分が嫁ぎたいと言っていた少女の矛盾する言葉とそれに対する違和感は感じる。そして、彼女の言葉に対してリエナが「馬鹿げた、気持ちの悪いこと」と言っていることから、姉弟はそれを良しとは思っていないという事だ。
アシェルに婚約者が居るという話は聞いたことがない。彼は現在引く手数多で有り相手に困る事はないが、それは言い換えればまた自分達が望まない相手も引き寄せてしまうと言う事のようだ。それに対して、人気者は大変ね、と思う気持ちはある。
…素直に言っておけば良いのか?
「…大変ですね?」
「それだけ?」
「リエナ!」
どこか慌てたように、会話に口を挟んできたアシェルを何故かリエナは鋭く睨みつけるように横目で見た後。もう一度アリエットへと視線を寄越した。
「それ以外は?何も思いませんの?」
「それ以外…?……お気の毒に…?」
「はぁ。なるほどぉ。」
(え、何よ?)
大袈裟に溜息をつき、明らかにジト目でこちらをリエナにアリエットは頬をひくつかせた。アリエットの答えはリエナが望むものではなく、それにより彼女の機嫌が急降下したようだ。
何を言わせたかったのか分からないが、そもそも普段仲良くしていないのだから上辺の言葉しか出てこないのが通常だろう。
「…シェリー、貴方の気持ちは全く伝わっていないようよぉ?」
(シェリーって誰?…、あ、アシェルの愛称か!)
随分と可愛らしい愛称だなあと思いながらアシェルの方へと目を向けると、何やら様子がおかしい。
どこがと言われると、あまり大きな変化がないので難しいところだが、頬が少し赤らんでいて目が泳いでいる、気がする。
それにしても、気持ちが伝わっていないとは…?と考えながら、ふとアリエットは自分の話したかったことを思い出してハッとした。
「すみません。お話の途中なのですが聞きたいことがあります。ランドーソン子息様、宜しいでしょうか?」
「……何でしょう?」
彼は目を逸らしたまま、とても小さな声で返事をした。気まずいのはこちらなんだが?と思いながらもアリエットは話を続けようとする。
「頂いた贈り物の件なのですが、あちらは」
「贈り物?なんですか、それって?」
アリエットの話を遮ってそう聞いてきたのはリエナだった。形の良い水色の瞳が珍しくもまん丸になっている。
あら、と思っていると焦ったようにアシェルが顔を上げてアリエットの顔を見た。その目が、何かを訴えかけているようだったが。
「…夜会用に、宝飾品を頂いた件ですが」
「宝飾品…?宝飾品を送ったんですか?シェリーが貴女に?」
「…ええ」
「何色の?真逆、この色?」
リエナは自分の姿を指さした。語尾が伸びる話し方の癖が消えている。もしかして、わざとそうしているのかしら?とアリエットは戸惑いながらも、その真逆なので頷いた。少女が頷いたのを見て、リエナはバッと自分の真横を勢い良く振り返った。
「シェリー…貴方何をしているの?夜会に誘うだけになさいって言ったでしょう?」
「…それは、…言っていたけれど」
「貴方ね…。顔くらいしか知らない相手から宝飾品なんて贈られたら、好意を抱くどころか引くのよ?毎日引きまくっている私をいつも見ているでしょう?」
「そう、だね…」
「私が一度でも、あの貢物達に喜んでいるのを見たことがあった?」
「いや…」
(毎日…贈られているの?)
リエナ程の美貌になると、顔も知らない相手からのプレゼントも多そうだなと頭の片隅で思いながら。
アリエットはすっかりと意気消沈してしまっているアシェルを改めて見つめた。その視線に気がついたのか、彼もこちらを見つめ返してくる。その顔はいつものように無表情ではなく、何処となく不安感が滲み出ていた。何だか、彼の新しい一面をここに来て知った気がする。それに。
婚約解消後に突然の夜会のパートナーへの誘い。そして友達でも恋人でもないのに、贈られてきた高価なアクセサリー。
真逆、とは思っていたがもしかして。
「…ランドーソン子息様は、私の事が好きなのですか?」
「!!」
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