婚約破棄から始まる4度の人生、今世は隣国の王太子妃!?

緋水晶

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私は侯爵と仲良くなれる気がします

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「そろそろ種明かしをしようか」
「殿下!!」
どうすればいいかわからず動けなくなっていた私の耳にジェラルド殿下の声が届いた。
先ほどの合図でこちらに来ることになっていた殿下だが、状況のせいか来るのが随分と遅かったように感じる。
「そうですな」
侯爵は殿下に軽く一礼すると、「では場所を変えましょう」と言って殿下と私、マリー様、アゼリアを伴って城内のサロンへ移動する。
お茶会へ呼んだ令嬢たちをほったらかしにすることになってしまうが、殿下と侯爵に呼ばれたのだから仕方ないだろう。
「では私のことからお話ししましょうか」
「頼む」
先に移動して場を整えてくれていたマイラが淹れた温かい紅茶で安堵したのも束の間、殿下と侯爵とアゼリアはまるで予定していたかのように話を始めた。
いや、『まるで』ではない。
侯爵とアゼリアだけだと思っていたが、殿下も含めてこの3人は絶対に組んでいる。
もしかしたら、マリー様も…?
「…アンネローゼ様、お顔が険しくなっていますよ?」
「そりゃなるわよ」
どうやら私はまんまと一杯食わされたようだと気づき、自然と目が眇められた。
それをアゼリアにからかわれたが現状直す気はさらさらない。
「まあそうでしょうね。ですがこれは必要なことだったのです」
アゼリアは再度肩を竦める。
マリー様には唇に人差し指を当てる癖があるが、アゼリアのこれもそうなのだろう。
残念ながら今は同じように可愛いとは思ってあげられないが。
だってマリー様は純粋でぽわぽわで可愛いけれど、彼女は私と同類の匂いがするんだもの。
「まずは私、というよりはイツアーク家の役目についてご説明しますね」
「…役目?」
「はい。我がイツアーク家は、端的に言えば目利きをする家なのです」
「……目利き?」
アゼリアは苦笑したまま私に説明を始める。
しかし第一声の内容が意外過ぎて要点を鸚鵡返しにすることしかできない。
というか目利きをする役目って何なのだろうか。
「はい、簡単に言えばその人物が我が国にとって必要か否かを選別する、という役目ですね」
「えっ」
するとアゼリアは私の思考を読んだように答えをくれる。
そしてその内容は思ってもみなかったことで、私は思わず殿下と侯爵に目で「本当か」と問うた。
「左様、イツアーク家は伯爵家なれどこの国の頭脳と言ってもいいほど優秀な人材を輩出する名家でして、代々その役目を担っております」
「なにせイツアークの別名が国益鑑定士だからな」
その視線への回答は言葉でだったが、ちょっと待ってほしい。
知らないうちに私はとんでもない目に遭っていたのではないか。
「特にアゼリアは『イツアークの珠』と呼ばれる数十年に一度現れる才媛なのです。優秀な一族の中でも突出した才を持っているんですよ」
そこにマリー様が無自覚に追い討ちをかけてくる。
つまり私はオークリッドほどの大国で頭脳と呼ばれている優秀な伯爵家に数十年に一度現れるレベルの逸材にいつの間にか人物鑑定をされていたということだ。
なにそれこっわぁ!
これ、もし彼女に不適格の烙印を押されていたら私はまた婚約破棄をされてマリシティに帰る羽目になっていたのではないだろうか。
「いえ、流石にそんなことにはなりません。ただ殿下が愛した女性としてお飾りの王太子妃になっていただくだけです」
「……思考を読まないで頂戴」
「これは失礼しました」
一気に足から力が抜けるような脱力感に襲われる。
そこに拍車をかけているのは確実にアゼリアだ。
同類だなんてとんでもない、彼女は間違いなく私よりはるかに賢い。
「それほどでも」
だからこそ私の表情の変化や雰囲気で的確に思考を読むのだろうし。
ていうか本当に怖いからやめてほしい。
「すみませんな、一応イツアーク家の役目は一部の人間しか知らないのです。王族の皆様と公爵、侯爵家の当主、そして王太子妃として教育を受けられていたマルグリット様、それらの人間しか知らないことなのですよ」
侯爵は同情するかのような目で私を見ながらわざわざ場所を変えた経緯も含め、宥めるように優しく語り掛けてくれる。
恐らく侯爵もアゼリアと話して同じような脱力感に襲われたことがあるのだろう。
私はこの人を思い込みだけで子煩悩で性悪な腹黒と思っていたがとんでもない、先ほどからの態度といい、私はきっとこの人とは仲良くなれる。
そして多分、そんな人が育てた真っ直ぐな目を持つメアリーとも。
彼女はもっとちゃんと教育すれば、きっとそんなに悪くない令嬢になるのではないだろうか。
その機会が与えられるかはわからないが、できれば与えてほしいと思う。
「今回私は殿下にも侯爵様にも事の詳細を伝えてはおりません。ただミディが誰かから変な話を吹き込まれ、それをメアリー様に話し、2人が馬鹿な夢想に花を咲かせているのをメルが大げさに煽ててしまって…、これはもう今までのように私が止めるよりも一度痛い目を見てもらった方が今後のためだろうと思いまして、大事にはしないからとお2人に約束をしてこの件をアンネローゼ様に預けてみました」
アゼリアは容赦のないことを微笑みながら告げる。
私が思い描いていた侯爵像にはむしろアゼリアの方が近い。
けれど幸運にもそんな人物が渦中の真っただ中にいてくれたことで、この問題は今後の私と殿下にとって大きな転換点となった。
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