婚約破棄から始まる4度の人生、今世は隣国の王太子妃!?

緋水晶

文字の大きさ
55 / 80

二人への意外な評価

しおりを挟む
「それで、あの二人はどうなんだ?」
「あの二人と言うとメアリーとミディですか?」
「他にいないだろう」
メアリーとミディが私の侍女になってから一週間。
それまでその話題に触れなかったルード様から初めて二人の様子を聞かれて少し驚いてしまった。
「てっきり興味がないものとばかり…」
思わずそう呟けば「まあ、それほど興味深いわけでもないが」と苦笑と共に前置きして、
「君の周りにいる人間のことを気にするのは当たり前だろう?まして因縁とまでは言わないが問題があった二人だ」
優し気な言葉とともにそっと頬に触れられる。
私へ対する思いやりと労りが温かな体温とともにじんわりと伝わってきた。
「ルード様…」
「今日は少し頬が冷たいな。最近忙しくしているとマイラから聞いた。……あまり無理はしてくれるなよ」
そのまま目の下の皮膚が薄い場所を親指の腹で撫でられる。
睡眠はきちんととっているので隈などはできていないはずだが、なんとなく触られた感触に張りがない気がして恥ずかしい。
頬が冷たいと言っていたし、血行が悪いのかもしれない。
「大丈夫ですよ」
恥ずかしさを誤魔化すようにゆっくりと手を外しながらルード様を見上げて笑いかける。
いらぬ心配をかけたいわけではないし、他を疎かにするつもりはない。
ただ私があの子たちとの新しい繋がりを求めただけなのだから、苦労したとしても自業自得だろう。
それに思ったほどの苦労はしていない。
「二人とも真面目に働いてくれていますよ。まだぎこちない所はありますが、失敗することもほとんどありませんし」
「まあそうだろうな」
「あら?」
私がそう言うとルード様は不服そうに鼻を鳴らす。
その言葉の内容を考えればあの二人を多少なりとも買っていたということだ。
「あの二人、まさか本当に優秀でしたの?」
あんな杜撰な計画を立てる子たちなのに?
声に出さない私の疑問にも答えるようにルード様は頷く。
「考えてもみろ。少なくともあのアゼリアが見捨てなかった二人だぞ」
そして告げられた言葉に私は納得しかできなかった。

後日なんとなくアゼリアにも聞いてみると意外な答えが返ってきた。
「杜撰杜撰と仰いますけど、他の令嬢に比べれば随分とマシな方なのですよ」
「え?そうなの?」
てっきり手厳しい回答がくることかと思っていたのに、まさかの言葉だった。
「はい。逆にお伺いしますが、アンネローゼ様はマルグリット様が愚かしいとお思いですか?」
「思わないわね」
アゼリアは一つ息を吐いて、持っていた本からちらりと顔を上げて私に問う。
勿論答えは否だ。
多少ぼんやりして大らかすぎるとはいえ、愚かかと問われれば否定しかできない。
これは別に友人の欲目ではないはずだ。
「そうですよね。それでも彼女はまんまと二人の罠に引っ掛かりかけました。つまりはそういうことですよ」
わかっていただけて何よりです。
そんな顔でアゼリアは言葉を切り、顔を本に戻した。
いやどういうことよ。
「え、説明の途中放棄はよくないわ?」
そういうことって、メアリーとミディはマリー様より頭が良いということ?
でもそれにしてはなんだか釈然としない。
「違いますよ」
アゼリアはため息と共に本を閉じる。
お目当ての情報はその本にはなかったようで、他の読み終わった本の方へぽいと投げた。
それをマイラが床に着地する前にシュッと取り、表紙を一瞥しただけで分類していく。
この侍女も相当である。
「無自覚なようですが、アンネローゼ様のその推理力や洞察力は貴族令嬢の中ではかなり抜きんでたものなのですよ?」
「才ある者に非才の気持ちはわからないとまでは申しませんが、もう少し一般的な令嬢の知能を理解していただければとは思います」
そう思っているとアゼリアとマイラからそんなことを言われてしまった。
その目は「全く仕方のない」と言いたげなもので。
……正直、貴女たちにそう言われるのはちょっと違うと思うわ。
私は溢れ出そうになったその言葉とため息を紅茶で喉の奥になんとか流し込んだが、上手く流れて行かず妙に胸に突っかかる思いがしばらく残った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

王妃を蔑ろにし、愛妾を寵愛していた王が冷遇していた王妃と入れ替わるお話。

ましゅぺちーの
恋愛
王妃を蔑ろにして、愛妾を寵愛していた王がある日突然その王妃と入れ替わってしまう。 王と王妃は体が元に戻るまで周囲に気づかれないようにそのまま過ごすことを決める。 しかし王は王妃の体に入ったことで今まで見えてこなかった愛妾の醜い部分が見え始めて・・・!? 全18話。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...