緋色の魔王(α)と暴君王子(α)の寵愛は愛に飢えた僕(Ω)を離してくれない

子犬一 はぁて

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名も無き者たちの嘆き(3)

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「ケッ」

 と、ふてぶてしい態度を取りながらメビウスは僕に向かってムヒヒと笑いかけてくる。

「まぁた魔王様のお遊戯が始まったんですねえ。ライア」

「っメビウス! 黙れ」

 「まぁた魔王様のお遊戯が始まった」とは、どういう意味だろう。僕の前にも、似たようにジスがオメガを召喚していたのだろうか?

 朝、あんなに熱を分かちあったというのに、メビウスの不穏な言葉に胸がざわめきだす。ライアはとてつもない形相でメビウスに近づいていく。

「おい。ネズミ。また口を開けば舌を切るぞ」

 果物ナイフだろうか。腰に巻き付けたベルトからナイフを取り出して、ライアはメビウスを脅しにかかる。さすがのメビウスも刃物が出たので途端に静かになった。よく見れば、ぷるぷると細かく震えている様子だ。よっぽど、ライアの脅しが効いたらしい。

「さぁ。阿月様、そろそろ晩餐会の時間ですよ。広間に戻りましょう」

 僕のことを庇うようにしてライアが歩を進める。大聖堂を出る直前までメビウスの様子を見ていたが、あまりの恐怖に硬直してすぐに動けなさそうだった。

 少し不憫だな……。勝手に大聖堂に入って盗み聞きしてたのは事実だし……。ライア怒ってるかな。

 昨日座った席に再度座らされる。その直後に僕はライアに謝る。

「ライア。ごめんなさい。勝手に大聖堂に入ったりなんかして……」

「いいえ。まさか、メビウスが大聖堂にいるとは思わずに、わたしも自由に阿月様を城に放してしまいました。申し訳ありません」

 ライアが深々と頭を下げるから、僕も同じくらい頭を下げた。

「謝るのは僕のほうです。それにしても、あの灰色のもふもふは一体なんなのかな?」

「あれは、獣人という生き物です。動物の身体を持ちながらも、人間と同じ容量の脳みそを持っているため、人語がわかるのです」

「この世界では普通のことなの?」

 好奇心に溢れてしまい、つい聞いてしまった。

「そうですね。この世界、冥界と天上の国では獣人は普通に生きていますね。こんなふうに」

 ピカッと稲妻が走るような光とともに、ライアが消えた。その代わりに、銀色のたてがみを持つ大きな狼が僕の前に足をそろえて座っていた。

「ライア? 狼が!」

 助けを求めて声を上げると、キュッキュッキュと高い声を出して狼が鳴いた。

「自分ですよ。阿月様」

「ライア? 狼の獣人なの?」

「ええ。自分は狼の獣人です。メビウスと違って、自分は人間に擬態することも得意です。こんなふうに」

 また、一瞬の光に包まれて狼が消えた。代わりに人間の姿をした、いつものライアが現れた。

「ふふ。とても驚いた顔をされていますね」

「だって、そりゃ驚くよ……なんなら、ライアが狼のときにモフりたいくらいだよ」

「それはいつかやりましょう。さあ、気づいたらこんな時間です。ジス様がお帰りになる前に、デザートのプディングの焼き加減を見に行かなくては。阿月様は、こちらの広間で晩餐会までお待ちください」
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