売り専の俺、眠れない写真家に“抱き枕”として買われました

子犬一 はぁて

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33 2回目の指名

 真柴が次に指名してきたのはあの日から2週間後のことだった。ホテルの部屋の前に立ちごくんと唾を飲み込む。こんなに緊張する接客は桜にとって初めてだった。得体の知れない客である真柴にはどこか憂いの表情が見て取れた。それに引き寄せられるかのように桜は真柴を意識してしまう。待機中の時間でさえ、他のお客様の接客をしている時でさえ、なぜか脳内には真柴の顔がチラつく。

「待たせて悪いな」

 数度のノックを終えると真柴が静かにホテルのドアを開いて姿を見せた。やはり目線が自然と上に行く。今日は既にシャワーを浴びた後なのか白いバスローブ姿での登場だった。

「失礼します……」

 桜は部屋の中にするりと入り込むとベッドに仕事用のトートバッグを寄せた。

「2回目のご指名ありがとうございます。本日は6時間コースになりますので、7万円の料金になります。本日オプションはどうしますか?」

 真柴が革の財布から札を取り出し桜の両手に静かに置いた。その余裕のある仕草が大人の色気のように感じられて少し目線に困る。

「オプションは付けなくていい。それよりも──」

 とん、と背中を軽くたたかれる。

「俺は見ての通り先にシャワーを済ませてある。桜も早くシャワーを浴びてこい」

 無機質な瞳がどこか親しみの色を帯びていることに桜が気づいた。初回とは異なる印象を受けた桜はシャワーを浴びながらこう思った。

(この人こんな表情かおもするんだ……。俺に心を開いてくれてるのか?)

 シャワーを浴びてさっぱりした桜はバスローブの紐を緩めに締めてからベッドの上に腰かけた。真柴は桜の隣に腰掛けてからじっと観察するように見つめてくる。指先から全身を針で刺されるような視線にさすがの桜も閉口した。すると真柴がぽつりと言葉を洩らす。

「店のホームページの写真より痩せたか?」

「え?」

 不意に寄せられる顔に桜の心臓が一瞬止まった。息を飲むのも忘れてその言葉が頭にぐるぐると円を描き始める。

(たしかにあの宣材写真はナンバーワンになる前に撮ったから、仕事に忙殺されている今は少し痩せたかもしれない。細かいところまでよく気づく人だな)

「ちゃんと飯は食ってるのか? 手首なんて、ほら。今にも折れてしまいそうだ」

「……っ!」

 桜の白い手首を真柴がやさしく手に取る。触れる指先からじわじわと真柴の熱が伝わってきて桜は思わず下を向いた。真柴は平熱が高いのか指先はまるでカイロのように温くて落ち着く。

「ちゃんと食べてます。ただ、最近は忙しくて飲むゼリーとかで済ませがちです」

 桜は真柴に心配をかけるまいとして笑顔を浮かべて安心させようとする。すると真柴は。

「俺の前では無理して笑わなくていい」

 そう言って桜の腰を引き寄せる。目と鼻の先に真柴の凛々しい顔が近づき桜の胸の動悸が止まらない。
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