21 / 81
寮で迎える初めての夜
しおりを挟む
「はぁ? こんなちんちくりんが俺の相部屋相手なのか……」
少々残念そうに呟いた男は、どかっと机の上に寄りかかった。寮服の上からでもわかる筋肉質な腕を組んで、じろじろとぼくを見ている。その視線が気持ち悪くて、ぼくは1段目のベッドに腰掛けていたのをやめようと腰を上げた。
「……君の名前は?」
無言の時間に耐えきれず小さな声で聞く。男はつまらなそうな顔をして口を開いた。
「ウルク」
「……よ、よろしくねウルク」
良好な人間関係が築けるとは思えないほど、冷たい視線を一身に浴びてぼくは部屋の外に駆け出したい気分だった。
ウルクは自身のつんつんとした黒髪を無造作にかきあげ、ぼくを見下ろした。
「おまえは2段目で寝起きしろ。それと、俺のやることに口出しするな。いいか? それがおまえがここで寝起きできる最低条件だ」
なんてやつだ……まるで暴君みたいな言い方じゃないか。ぼくは納得できなかったけれど、歯向かえばすぐに鉄拳が飛んできそうなので黙って頷き、手荷物をクローゼットに入れベッドの2段目に登った。そこで体育座りをしてすぐそこにあるウルクのつむじを見つめた。台風の目のように激しく渦巻いている。
ウルクからは名門貴族のような厳かな雰囲気は微塵も感じられず、どちらかというと行いがよろしくない人間の雰囲気が漂っている。
「オズワルド。俺の眠りの邪魔をしたらベランダから投げ落としてやるからな。静かにしていろよ」
そう言い終わると、パチンと電気を消して寝入ってしまった。
暗闇に残されたぼくは窓の方を見やる。薄明かりが落ちたそこには、傾いた月がぼくを見下ろしていた。慈悲深い青白い光で。
少々残念そうに呟いた男は、どかっと机の上に寄りかかった。寮服の上からでもわかる筋肉質な腕を組んで、じろじろとぼくを見ている。その視線が気持ち悪くて、ぼくは1段目のベッドに腰掛けていたのをやめようと腰を上げた。
「……君の名前は?」
無言の時間に耐えきれず小さな声で聞く。男はつまらなそうな顔をして口を開いた。
「ウルク」
「……よ、よろしくねウルク」
良好な人間関係が築けるとは思えないほど、冷たい視線を一身に浴びてぼくは部屋の外に駆け出したい気分だった。
ウルクは自身のつんつんとした黒髪を無造作にかきあげ、ぼくを見下ろした。
「おまえは2段目で寝起きしろ。それと、俺のやることに口出しするな。いいか? それがおまえがここで寝起きできる最低条件だ」
なんてやつだ……まるで暴君みたいな言い方じゃないか。ぼくは納得できなかったけれど、歯向かえばすぐに鉄拳が飛んできそうなので黙って頷き、手荷物をクローゼットに入れベッドの2段目に登った。そこで体育座りをしてすぐそこにあるウルクのつむじを見つめた。台風の目のように激しく渦巻いている。
ウルクからは名門貴族のような厳かな雰囲気は微塵も感じられず、どちらかというと行いがよろしくない人間の雰囲気が漂っている。
「オズワルド。俺の眠りの邪魔をしたらベランダから投げ落としてやるからな。静かにしていろよ」
そう言い終わると、パチンと電気を消して寝入ってしまった。
暗闇に残されたぼくは窓の方を見やる。薄明かりが落ちたそこには、傾いた月がぼくを見下ろしていた。慈悲深い青白い光で。
13
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
説明は初めの方に詰め込んでます。
えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?)
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
5/25
お久しぶりです。
書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる