スウェロニア家の番犬の騎士見習い〔弟〕は騎士団長〔兄〕の「待て、おすわり」がきけない

子犬一 はぁて

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自分を信じる

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「オズはイルファの厳しい練習にも耐えてここまで来たんだ。きっと1番の舞を見せてくれると信じているよ」

 レフさんはぼくの頭を軽く撫でて微笑んだ。レフさんに励まされると、本当に大丈夫なような気がして胸が落ち着く。チョコレートの余韻を味わっていると、剣舞大会の運営委員に名前を呼ばれた。「幕袖で待機しろ」との指示だった。

 いよいよ本番か……。

 ぼくはゆっくりと立ち上がり、応援に駆けつけてくれた2人に深々とお礼をした。

「1ヶ月間お世話になりました。この舞はぼくだけでは到底完成できませんでした。精一杯舞うので見ていてください」

 イルファ先輩に笑顔で送り出された。レフさんは不意にぼくのことを抱きしめた。ふわり、とダリアの匂いが鼻を掠める。

 こんなに近いのは初めてだ。

 壊さないように、と優しく抱きしめられて胸がぽかぽかと温まる。大事にされていると感じた。

「オズ。いってらっしゃい」

 名残惜しそうに体を離したレフさんが静かに微笑んだ。ぼくの呼吸はそのときすでに落ち着いていた。

 もう一度、ぺこっとお辞儀をして幕袖に向かう。ぼくの初戦の相手はカロスの寮生だった。既に反対側の幕袖で呼吸を整えているのが見えた。ぼくはそっと目を閉じた。幕の外の観衆の声がわっと消えて、ついで自分の呼吸の音だけが大きく聞こえた。
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