ビジネスの番なのに運命の番よりも愛してしまったからどうすればいい

子犬一 はぁて

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 ヒステリックに叫ぶ守を宥めながら小鳥遊は目を閉じる。

 まさか自分に種がないなんて……。

 不完全なアルファという言葉が頭に浮かんだ。正直、子どもがどうだとかの話の前に自分の体質を受け入れられなかった。しかし守は自分の唯一の夢がついえたのを悟ったのか睨むようにこちらを見つめてくる。

「駿輔のこと信じてたのに。僕と一緒に生きていこうって言ったのに! ほんとうは僕のことなんてどうでもいいんだね」

 泣きじゃくる守の声がきりきりと頭を締めつける。だから小鳥遊は勢い余って怒鳴ってしまった。

「辛いのはおまえだけじゃない。頼むから声を抑えてくれ」

 こめかみを押さえてそう言うと守はキッと睨んできた。無言で荷物をかき集めるとキャリーバッグに詰め込んだ。小鳥遊はその様子を黙って見つめていた。

「駿輔。僕は赤ちゃんのいない人生は生きたくないんだ」

 じゃあねと静かに言い去ると守は玄関を勢いよく閉めて出て行った。このとき小鳥遊は3日もすれば頭も冷えて戻ってくるだろうと軽く考えていた。しかし1週間が過ぎて1ヶ月が過ぎても守は戻ってこなかった。手元にいた小鳥が旅立っていったかのような一抹の寂しさを覚えた。

 だから見放されることには慣れている。不完全な俺を、欠陥品の俺を欲してくれる物好きなんてこの世にはいないとそう思っていた。

 だから夕日が当たるコンクリートの上で岸本がぽつりと呟いた言葉に耳を疑った。思わず岸本のほうを振り返ってしまうほどに。
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