ビジネス番契約ですが欠陥αに不器用に溺愛されて偽りΩは幸せです

子犬一 はぁて

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 しかし綿貫はどうだろう。もしかしたら天海の勘違いという可能性もある。それに俺はまだ綿貫にそういった特別な感情を抱かない。

「どうでしょうね。俺は何も感じませんでしたが」

 この期に及んでなにを言っているんだろう、俺は。岸本と離れたくないとでも? そんな馬鹿な。自己中心的な人間なのだろうか、自分は。

「そうですか……運命の番は僕の憧れですからその可能性が1パーセントでもあるなら嬉しかったんですが」

 綿貫が前髪に手をやりながら苦笑している。微かに泣きそうに歪む顔が、声が、守を想起させる。
 
 ああ、守と同じ笑い方をしている。

 小鳥遊はじっとお互いを見つめ合う天海と岸本の様子を見た。お互い何かしら感じているのか無言でも柔らかい空気がそこにはある。そこに入り込む余地はなかった。2人は、もう2人しか見えない世界へと入っていった。

 意外にもあっけなく終わるんだな。

 小鳥遊の頭に浮かんだのはその一言だけだった。契約なんて面倒くさいものから離れられるならいいに越したことはないのだが。これからは1人でベッドに横になれるし、好きなものを好きなときに食えるようになる。好き嫌いを我慢する必要もない。栄養を気にする必要はないし、念願の食洗機だって買える。俺のやりたいようにやれる。しかし、なぜだろう。指先から砂粒が溢れていくような虚しさを感じる。守を手放したときと同じような気分になり、小鳥遊は静かに目を伏せた。失うときの悲しみほど呆気ないものはないと小鳥遊は感じる。

 よかったじゃないか。岸本にとっても俺にとっても。

 天海と岸本は無言で互いを見つめ合っている。そこには言葉など必要がないらしい。目と目でお互いの気持ちがわかるような、そんな空気が流れている。小鳥遊と岸本とではたどり着けなかった境地に2人はいるのだ。邪魔をすることはできなかった。

 小鳥遊もとびきり熱い眼差しを感じた。綿貫からの視線。憂うような、気を引きたいんだろうなとわかる女のような目をしている。簡単に目と目を合わせられるはずなのに、小鳥遊はそうはしなかった。綿貫からの好意を受け取りたくなかったのだ。
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