ビジネスの番なのに運命の番よりも愛してしまったからどうすればいい

子犬一 はぁて

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「お前のほうはどうなんだ。天海とは上手くいっているのか」

   下手な逃げの質問だと重々承知していながらの問だった。

「昨日、別れました」

 何? 耳を疑うような台詞に足が止まる。

「なぜだ岸本……天海は運命の番じゃなかったのか?」

「あの人は間違いなく俺の運命の番でしたよ」

 と、岸本は淡々と話す。もう既に整理がついていることらしい。しかし、納得がいかないのは小鳥遊の方だった。

「天海とならきっとお前の理想の人生が歩めたはずだ」

「もう、いいんです」

 それよりも、と岸本は口を開く。

「小鳥遊部長は綿貫さんと上手くいったんですか?」

「いや……興味がわかなかった」

 口籠もりながら答えると、岸本が少し笑うのが雰囲気でわかった。

「お互いダメでしたね」

「……ああ」

 もともと、運命の番というものを信じていなかった俺には、痛くも痒くもない話だった。

 前で動いていた影が止まる。小鳥遊もならうように足を止めた。沈黙が数秒。雪が降り始めた。街を染める白い雪が、小鳥遊と岸本の肩にとまる。視界が白い雪と岸本の顔でいっぱいになる。

「俺、小鳥遊部長のこと最初は嫌いだったんです」

 突然の告白を始めた岸本の背中を見つめる。相変わらず姿勢が綺麗だ。背筋をぴんと張って堂々としている。逞しい容姿はアルファにしか見えない。これも岸本がオメガであることを隠すために身につけた技術と努力のかたまりかもしれない。努力家な岸本は努力している姿を決して他人に見せたりしない。

「怖くて、気難しい人で、優しくなくて。俺だけ新人研修の内容も違いましたし、最初は戸惑いました」

 小鳥遊はじっと岸本の言葉に耳を傾けた。そう思っていたのか。全く気づかなかった。彼は堂々とアルファらしく振舞っているように見えたから。

「それから色々あって同居して……この前家を追い出されて……なんかもう全部夢みたいなんです。俺みたいなやつが他人と同居するとか、ありえないことなんです。小鳥遊部長とが初めてなんです。初めていっしょに人と暮らしました。それがもう、なんていうかほんとに幸せであったかくて、たいせつなんです」
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