保護猫おもちの縁結びやさん

子犬一 はぁて

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女アレルギーとは何か

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「ちぇ。つまんねえ奴」

 そこからは、綾人がお気に入りとしているらしいハイトーンツインテのコンカフェ嬢と、チェキを撮ったりなんかして過ごしてた。灯織は黙々とお姫からのメッセージを返し、スマホの写真フォルダに収めているおもちの写真を眺めていた。

 おもち。こんなに大きくなったんだ。

 毎日一緒に生活しているとはいえ、微々たる変化に気づかなかった。お団子のように丸いおてても、どんどん大きくなっていた。口周りの白ひげもぴょこぴょこ伸びている。最近は、猫じゃらしを買ったら大喜びで遊んでくれて運動量も増えてきた。すくすくと育つおもちを傍で見守ることができるのが本当に幸せだ。

「灯織。そろそろ帰るかー」

 2時間ほど滞在してから、綾人が時計を見て言う。灯織は黙って頷くと、綾人に会計を任せてエレベーターに飛び乗った。いち早くこの女のうじゃうじゃいる空間から逃げ出したかった。そんな挙動不審な灯織を見て、綾人は少し怪訝そうな顔をしたが、特に何も言ってこなかったから助かった。

 2人で電車に揺られている間も、無言だった。灯織は、今話しかけられたら堪えている涙が零れてしまいそうで、ずっと下を向いていた。

 自宅の最寄り駅に着き、改札を出たところで綾人が。

「灯織。どうした? 目ぇ真っ赤だぞ」

「カラコンにゴミ入って痛いのー」

 嘘だ。普通に、女アレルギーが出ているだけだ。花粉症と似ていて、鼻水びちゃーやら涙目になってしまうのだ。

「おう。ちょっと見せてみろ」

「ばか、いいってば」

 顎を持ち上げられ、灯織は久しぶりに近くで綾人の顔と対面する。

「んー。全然泣いてるじゃん」

「っ」

 かぁぁあと、身体中の熱が顔に集まる。男として恥ずい。

「とりあえず、帰ってコンタクト外してメガネになればいいんじゃね?」

「……うん」

 酒に酔ってるのか、そんなお気楽な解決策を提案すると綾人は黙々と歩き出した。灯織もその後ろを無言で着いていく。

「お前、あれか。酒とかがアレルギーなのか?」

「え?」

 急な綾人の声掛けに、ぴくんと頬が引き攣る。「なわけないじゃん」言おうとした、その時。

「なんつうか、今日のお前、お前らしくないよ。挙動不審すぎ」

 バレてたか。やっぱ。

 ふう、と大きく息を吐いてから灯織は仕方ないとばかりに白状することに決めた。

「あー。俺、女アレルギー持ってるから」

「女アレルギー?」

 おそらく綾人は初めて聞くに違いない。灯織は羞恥心を捨て去り、目を閉じて唱えた。

「そ。女アレルギー」

「子供んときから?」

「うん。中学生の頃から」

「どんな症状が出るんだ?」

 「んんー」と軽く唸ってから灯織は

「玉ねぎみじん切りした後みたいに、女と長時間話したり触れたりすると、頭痛、鼻水、涙出てくる」
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