22 / 31
女アレルギーとは何か
しおりを挟む
「ちぇ。つまんねえ奴」
そこからは、綾人がお気に入りとしているらしいハイトーンツインテのコンカフェ嬢と、チェキを撮ったりなんかして過ごしてた。灯織は黙々とお姫からのメッセージを返し、スマホの写真フォルダに収めているおもちの写真を眺めていた。
おもち。こんなに大きくなったんだ。
毎日一緒に生活しているとはいえ、微々たる変化に気づかなかった。お団子のように丸いおてても、どんどん大きくなっていた。口周りの白ひげもぴょこぴょこ伸びている。最近は、猫じゃらしを買ったら大喜びで遊んでくれて運動量も増えてきた。すくすくと育つおもちを傍で見守ることができるのが本当に幸せだ。
「灯織。そろそろ帰るかー」
2時間ほど滞在してから、綾人が時計を見て言う。灯織は黙って頷くと、綾人に会計を任せてエレベーターに飛び乗った。いち早くこの女のうじゃうじゃいる空間から逃げ出したかった。そんな挙動不審な灯織を見て、綾人は少し怪訝そうな顔をしたが、特に何も言ってこなかったから助かった。
2人で電車に揺られている間も、無言だった。灯織は、今話しかけられたら堪えている涙が零れてしまいそうで、ずっと下を向いていた。
自宅の最寄り駅に着き、改札を出たところで綾人が。
「灯織。どうした? 目ぇ真っ赤だぞ」
「カラコンにゴミ入って痛いのー」
嘘だ。普通に、女アレルギーが出ているだけだ。花粉症と似ていて、鼻水びちゃーやら涙目になってしまうのだ。
「おう。ちょっと見せてみろ」
「ばか、いいってば」
顎を持ち上げられ、灯織は久しぶりに近くで綾人の顔と対面する。
「んー。全然泣いてるじゃん」
「っ」
かぁぁあと、身体中の熱が顔に集まる。男として恥ずい。
「とりあえず、帰ってコンタクト外してメガネになればいいんじゃね?」
「……うん」
酒に酔ってるのか、そんなお気楽な解決策を提案すると綾人は黙々と歩き出した。灯織もその後ろを無言で着いていく。
「お前、あれか。酒とかがアレルギーなのか?」
「え?」
急な綾人の声掛けに、ぴくんと頬が引き攣る。「なわけないじゃん」言おうとした、その時。
「なんつうか、今日のお前、お前らしくないよ。挙動不審すぎ」
バレてたか。やっぱ。
ふう、と大きく息を吐いてから灯織は仕方ないとばかりに白状することに決めた。
「あー。俺、女アレルギー持ってるから」
「女アレルギー?」
おそらく綾人は初めて聞くに違いない。灯織は羞恥心を捨て去り、目を閉じて唱えた。
「そ。女アレルギー」
「子供んときから?」
「うん。中学生の頃から」
「どんな症状が出るんだ?」
「んんー」と軽く唸ってから灯織は
「玉ねぎみじん切りした後みたいに、女と長時間話したり触れたりすると、頭痛、鼻水、涙出てくる」
そこからは、綾人がお気に入りとしているらしいハイトーンツインテのコンカフェ嬢と、チェキを撮ったりなんかして過ごしてた。灯織は黙々とお姫からのメッセージを返し、スマホの写真フォルダに収めているおもちの写真を眺めていた。
おもち。こんなに大きくなったんだ。
毎日一緒に生活しているとはいえ、微々たる変化に気づかなかった。お団子のように丸いおてても、どんどん大きくなっていた。口周りの白ひげもぴょこぴょこ伸びている。最近は、猫じゃらしを買ったら大喜びで遊んでくれて運動量も増えてきた。すくすくと育つおもちを傍で見守ることができるのが本当に幸せだ。
「灯織。そろそろ帰るかー」
2時間ほど滞在してから、綾人が時計を見て言う。灯織は黙って頷くと、綾人に会計を任せてエレベーターに飛び乗った。いち早くこの女のうじゃうじゃいる空間から逃げ出したかった。そんな挙動不審な灯織を見て、綾人は少し怪訝そうな顔をしたが、特に何も言ってこなかったから助かった。
2人で電車に揺られている間も、無言だった。灯織は、今話しかけられたら堪えている涙が零れてしまいそうで、ずっと下を向いていた。
自宅の最寄り駅に着き、改札を出たところで綾人が。
「灯織。どうした? 目ぇ真っ赤だぞ」
「カラコンにゴミ入って痛いのー」
嘘だ。普通に、女アレルギーが出ているだけだ。花粉症と似ていて、鼻水びちゃーやら涙目になってしまうのだ。
「おう。ちょっと見せてみろ」
「ばか、いいってば」
顎を持ち上げられ、灯織は久しぶりに近くで綾人の顔と対面する。
「んー。全然泣いてるじゃん」
「っ」
かぁぁあと、身体中の熱が顔に集まる。男として恥ずい。
「とりあえず、帰ってコンタクト外してメガネになればいいんじゃね?」
「……うん」
酒に酔ってるのか、そんなお気楽な解決策を提案すると綾人は黙々と歩き出した。灯織もその後ろを無言で着いていく。
「お前、あれか。酒とかがアレルギーなのか?」
「え?」
急な綾人の声掛けに、ぴくんと頬が引き攣る。「なわけないじゃん」言おうとした、その時。
「なんつうか、今日のお前、お前らしくないよ。挙動不審すぎ」
バレてたか。やっぱ。
ふう、と大きく息を吐いてから灯織は仕方ないとばかりに白状することに決めた。
「あー。俺、女アレルギー持ってるから」
「女アレルギー?」
おそらく綾人は初めて聞くに違いない。灯織は羞恥心を捨て去り、目を閉じて唱えた。
「そ。女アレルギー」
「子供んときから?」
「うん。中学生の頃から」
「どんな症状が出るんだ?」
「んんー」と軽く唸ってから灯織は
「玉ねぎみじん切りした後みたいに、女と長時間話したり触れたりすると、頭痛、鼻水、涙出てくる」
11
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる