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本編④ 回帰前、悪女が去った後
35 回帰前の裁判の裏
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11月の終わり頃、アリーシャは王宮騎士によって捕縛され牢獄へと幽閉された。
罪状はローズマリーを毒殺した罪である。
ローズマリーの飲んでいたお茶の中に毒が含まれていた。それが体内に蓄積していき、11月末に彼女が倒れ判明した。お茶を贈ったのはアリーシャであった。
元から彼女の評判は悪く、泥姫と呼ばれ蔑まれていた。
王太子に愛されているローズマリーに嫉妬していたのは有名である。
誰もがアリーシャを犯人と決めつけていた。
証拠を探そうとすると彼女の部屋から同じ毒が見つかり、そしてさらに重い罪が発見された。
クローゼットの中に呪詛の道具が入っており、王族を呪詛したと容疑をかけられた。
弁護人は誰も引き受けようとしなかった。クロックベル侯爵家は一切関与せず、裁判所に訪れることもなかった。
人々は噂した。
ついにクロックベル侯爵家はアリーシャを完全に見捨てたのだ。
元々その兆しは認められた。他の花姫が実家の支援を受け公的な活動を行っていたが、アリーシャにはそれがなく活動も失敗に終わっていた。
裁判が始まる前にアルバートは何をしていたかというと、彼はシオンを連れて捜査を行った騎士と魔法使いに面会を申し込んでいた。
「子爵様、困ります。何度言われても面会はできません」
「ほんの10分で構わない」
証拠の品を見せてもらうのも難しく、アルバートはアリーシャの有罪を証明した者たちへの面会を必死に頼み込んでいた。見張りの騎士たちは頑としてアルバートを中に入れるのを拒んだ。
押問答になりそうなとき騎士がアルバートを強く押し、彼を地面に転がせた。
「申し訳ありません。子爵様、面会は認められないということです」
早々に帰るようにと言われ、それでもたてつくというのであれば剣を抜かなければならない。
騎士の言葉にアルバートは拳を握りしめた。
「すまない。アル。君だけだったらもしかしたら面会ができたかもしれないのに」
傍らにいたシオンはアルバートに頭を下げた。シオンは処刑人であった。例の騎士も、魔法使いも処刑人に対して強い偏見を持っていて、彼が同伴していることに強く不快感を示していたという。
同時に証言を行った王宮の使用人たちと会話ができないように王宮への立ち入りを禁じていた。
「お前の右眼なら、証言した使用人たちの真偽を測れると思った」
さすがに魔法使いに対しては無理でも、使用人たちの証言を覆すことができたのではないか。その為にシオンの能力を活用したかった。
ここまで拒絶されれば王宮に立ち入るのは難しい。
そうなれば裁判当日に何としてでも使用人たちとの接触を図ろう。
そう計画を立てて、一時は侯爵家に帰宅することとした。
帰宅後、アルバートの耳に届けられたのは信じられないことであった。それを父である侯爵が言うとは思えなかった。
「父上、どうして」
「今言った通りだ。アリーシャを勘当する。アリーシャは我が一族とは関係なく、裁判に行くことは許さず」
当然アリーシャの為に弁護士を雇う気もないという。ただでさえアリーシャの為に弁護を引き受ける者はいない。一族から弁護士を雇うこともしない、一族の誰も裁判所に入ることもしない。
「彼女を見捨てるのですか?」
「彼女は我が家名を汚した。クロックベルの名を名乗ることも許されない」
確かにそうだろう。王族を呪詛した罪は一族の恥となる。
「私は言いましたよね。彼女を花姫に送るのは反対だと。あの子は平民の娘で貴族の世界をろくに知りません。教わることはなく、妃という餌をぶら下げて勝手に王宮に送っておきながら父上は何をしていたのですか?」
侯爵がしたことといえばただ資金を出しただけである。彼女がどのように動けばいいのか相談に乗るのもしなかった。
アルバートは彼女が花姫となったと同時に事業が立て込んでいて王都を離れ彼女に関与できなかった。
王都を発つ前に父に忠告したはずだが、ここまで父に響いていなかったとは思わなかった。
ようやく事業が落ち着いて秋になって王都に戻った時、アルバートはあきれ果てた。侯爵は資金を送り、教員や侍女については王宮任せにしていた。他の花姫は実家がかなり意見しているというのに、アリーシャはほぼ放置されていた。
侍女がアリーシャの様子を定期的に侯爵に報告していたが、内容はでたらめそのもので酷い有様であった。
アルバートは感情のままアリーシャを名指しで手紙を送った。
彼女が元平民だったから王宮でうまくいっていないのは仕方ないと思っている。ならば、何故相談してこなかったのだ。
そんな内容の手紙を送ったが、無視されてしまう。
向こうとしては何をいまさら説教じみたことを言っているのだと不愉快に感じただろう。
この反応で父が今までどれだけ自分で送り出した花姫に対して杜撰な対応をしていたかと知り頭を抱えた。
アリーシャの評判は遠方にいたアルバートの耳に届くにはあまりに遅すぎて、全てが遅れてしまった。
そうこうしているうちにアリーシャは花姫毒殺の容疑、王族呪詛の容疑をかけられ今に至る。
本当に彼女が起こしたことであれば罪状は已む得ないが、どうにも引っかかりを覚えてしまう。
「私は裁判に行きます」
父がアリーシャを見捨てたといっても、利用されるだけ利用された少女が冤罪だったとき後で悔やんでも悔やみきれない。
せめて証言に不審点がないかと意見を出し、彼女の弁護に立とう。
部屋を出ようとすると侯爵家の騎士がアルバートを取り押さえた。
「アルバート、お前はストレスがたまりすぎて気が動転しているのだろう。実際働きすぎだし。うつ病じゃないかと医師が心配していたぞ」
突然の診断にアルバートは首を傾げた。
「入院受け入れしてくれる病院が見つかった。しばらくそこで療養を取りなさい」
勝手なことを決められアルバートは声を荒げた。
「俺は異常なところなど一切ない。放せ!」
そう暴れようとするが、複数の騎士に抑えられて思うようにいかない。気が咎めるが攻撃魔法を使って拘束を振りほどこうとすると首筋にちくりと刺激が走り、何だと考えている間に意識が遠のきそのまま崩れ落ちた。
気づけば貴族が入院する病院で点滴に繋がれて寝かされていた。日付を確認すると、裁判は終わってしまい病院に届けられた新聞には大きく見出しが載せられていた。
悪女アリーシャ、有罪判決。斬首刑に処せられる。日付、場所は後日発表されるとのこと。
頭が沸騰しそうになる。さらに文章を読み進めると、めまいを覚えそうになる。
今までの彼女の悪行が書き連なれている。中には真偽不明、確証のない酷い内容もあった。侍女を殴り殺したとか、カメリア宮殿の内装を半壊させたとか。
そして、彼女の周囲の環境について書かれていた。
クロックベル侯爵家は裁判所に現れず、アリーシャを侯爵家の籍から外していたことが判明。取材をしようとしたが今後一切彼女と関わりはないと拒否される。
あまりに酷い文面に笑いがこみあげてくる。腹が立ち、新聞をくしゃくしゃにして点滴を無造作に抜去して病室から抜け出そうとすると看護師と医者がアルバートを取り押さえて外に出るのを許さなかった。
罪状はローズマリーを毒殺した罪である。
ローズマリーの飲んでいたお茶の中に毒が含まれていた。それが体内に蓄積していき、11月末に彼女が倒れ判明した。お茶を贈ったのはアリーシャであった。
元から彼女の評判は悪く、泥姫と呼ばれ蔑まれていた。
王太子に愛されているローズマリーに嫉妬していたのは有名である。
誰もがアリーシャを犯人と決めつけていた。
証拠を探そうとすると彼女の部屋から同じ毒が見つかり、そしてさらに重い罪が発見された。
クローゼットの中に呪詛の道具が入っており、王族を呪詛したと容疑をかけられた。
弁護人は誰も引き受けようとしなかった。クロックベル侯爵家は一切関与せず、裁判所に訪れることもなかった。
人々は噂した。
ついにクロックベル侯爵家はアリーシャを完全に見捨てたのだ。
元々その兆しは認められた。他の花姫が実家の支援を受け公的な活動を行っていたが、アリーシャにはそれがなく活動も失敗に終わっていた。
裁判が始まる前にアルバートは何をしていたかというと、彼はシオンを連れて捜査を行った騎士と魔法使いに面会を申し込んでいた。
「子爵様、困ります。何度言われても面会はできません」
「ほんの10分で構わない」
証拠の品を見せてもらうのも難しく、アルバートはアリーシャの有罪を証明した者たちへの面会を必死に頼み込んでいた。見張りの騎士たちは頑としてアルバートを中に入れるのを拒んだ。
押問答になりそうなとき騎士がアルバートを強く押し、彼を地面に転がせた。
「申し訳ありません。子爵様、面会は認められないということです」
早々に帰るようにと言われ、それでもたてつくというのであれば剣を抜かなければならない。
騎士の言葉にアルバートは拳を握りしめた。
「すまない。アル。君だけだったらもしかしたら面会ができたかもしれないのに」
傍らにいたシオンはアルバートに頭を下げた。シオンは処刑人であった。例の騎士も、魔法使いも処刑人に対して強い偏見を持っていて、彼が同伴していることに強く不快感を示していたという。
同時に証言を行った王宮の使用人たちと会話ができないように王宮への立ち入りを禁じていた。
「お前の右眼なら、証言した使用人たちの真偽を測れると思った」
さすがに魔法使いに対しては無理でも、使用人たちの証言を覆すことができたのではないか。その為にシオンの能力を活用したかった。
ここまで拒絶されれば王宮に立ち入るのは難しい。
そうなれば裁判当日に何としてでも使用人たちとの接触を図ろう。
そう計画を立てて、一時は侯爵家に帰宅することとした。
帰宅後、アルバートの耳に届けられたのは信じられないことであった。それを父である侯爵が言うとは思えなかった。
「父上、どうして」
「今言った通りだ。アリーシャを勘当する。アリーシャは我が一族とは関係なく、裁判に行くことは許さず」
当然アリーシャの為に弁護士を雇う気もないという。ただでさえアリーシャの為に弁護を引き受ける者はいない。一族から弁護士を雇うこともしない、一族の誰も裁判所に入ることもしない。
「彼女を見捨てるのですか?」
「彼女は我が家名を汚した。クロックベルの名を名乗ることも許されない」
確かにそうだろう。王族を呪詛した罪は一族の恥となる。
「私は言いましたよね。彼女を花姫に送るのは反対だと。あの子は平民の娘で貴族の世界をろくに知りません。教わることはなく、妃という餌をぶら下げて勝手に王宮に送っておきながら父上は何をしていたのですか?」
侯爵がしたことといえばただ資金を出しただけである。彼女がどのように動けばいいのか相談に乗るのもしなかった。
アルバートは彼女が花姫となったと同時に事業が立て込んでいて王都を離れ彼女に関与できなかった。
王都を発つ前に父に忠告したはずだが、ここまで父に響いていなかったとは思わなかった。
ようやく事業が落ち着いて秋になって王都に戻った時、アルバートはあきれ果てた。侯爵は資金を送り、教員や侍女については王宮任せにしていた。他の花姫は実家がかなり意見しているというのに、アリーシャはほぼ放置されていた。
侍女がアリーシャの様子を定期的に侯爵に報告していたが、内容はでたらめそのもので酷い有様であった。
アルバートは感情のままアリーシャを名指しで手紙を送った。
彼女が元平民だったから王宮でうまくいっていないのは仕方ないと思っている。ならば、何故相談してこなかったのだ。
そんな内容の手紙を送ったが、無視されてしまう。
向こうとしては何をいまさら説教じみたことを言っているのだと不愉快に感じただろう。
この反応で父が今までどれだけ自分で送り出した花姫に対して杜撰な対応をしていたかと知り頭を抱えた。
アリーシャの評判は遠方にいたアルバートの耳に届くにはあまりに遅すぎて、全てが遅れてしまった。
そうこうしているうちにアリーシャは花姫毒殺の容疑、王族呪詛の容疑をかけられ今に至る。
本当に彼女が起こしたことであれば罪状は已む得ないが、どうにも引っかかりを覚えてしまう。
「私は裁判に行きます」
父がアリーシャを見捨てたといっても、利用されるだけ利用された少女が冤罪だったとき後で悔やんでも悔やみきれない。
せめて証言に不審点がないかと意見を出し、彼女の弁護に立とう。
部屋を出ようとすると侯爵家の騎士がアルバートを取り押さえた。
「アルバート、お前はストレスがたまりすぎて気が動転しているのだろう。実際働きすぎだし。うつ病じゃないかと医師が心配していたぞ」
突然の診断にアルバートは首を傾げた。
「入院受け入れしてくれる病院が見つかった。しばらくそこで療養を取りなさい」
勝手なことを決められアルバートは声を荒げた。
「俺は異常なところなど一切ない。放せ!」
そう暴れようとするが、複数の騎士に抑えられて思うようにいかない。気が咎めるが攻撃魔法を使って拘束を振りほどこうとすると首筋にちくりと刺激が走り、何だと考えている間に意識が遠のきそのまま崩れ落ちた。
気づけば貴族が入院する病院で点滴に繋がれて寝かされていた。日付を確認すると、裁判は終わってしまい病院に届けられた新聞には大きく見出しが載せられていた。
悪女アリーシャ、有罪判決。斬首刑に処せられる。日付、場所は後日発表されるとのこと。
頭が沸騰しそうになる。さらに文章を読み進めると、めまいを覚えそうになる。
今までの彼女の悪行が書き連なれている。中には真偽不明、確証のない酷い内容もあった。侍女を殴り殺したとか、カメリア宮殿の内装を半壊させたとか。
そして、彼女の周囲の環境について書かれていた。
クロックベル侯爵家は裁判所に現れず、アリーシャを侯爵家の籍から外していたことが判明。取材をしようとしたが今後一切彼女と関わりはないと拒否される。
あまりに酷い文面に笑いがこみあげてくる。腹が立ち、新聞をくしゃくしゃにして点滴を無造作に抜去して病室から抜け出そうとすると看護師と医者がアルバートを取り押さえて外に出るのを許さなかった。
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