31 / 95
本編 第一部
30 馬車の中での告白
そういえば、ばたばたしてすぐに思い出せなかった。
今の令嬢――エレノア・シャルコットは小説後半の悪役だ。正確な後半の悪役はリチャード王太子で、婚約者のエレノアがベザリーを苦しめるのだ。
小説『小公女ベザリー』の後半内容はこうだ。
サンベル地方の社交界で地位を築いてきたベザリーは王都へ活躍の場を移す。
ベザリーをお茶会に招待した王太子妃・エレノアは彼女の無知さを嘲笑してつまはじきにする。
実はエレノアはクリスに片思いしていたためベザリーに嫉妬を覚えていたのだ。
その頃に国王が病に倒れて、ベザリーが治癒魔術師として招聘されるがリチャード王太子は彼女を信用できず何かとつっかってくる。
クリスはベザリーの名誉を傷つけられたとリチャード王太子と決闘する。
決闘が終わると同時に国王が急変して命を落とす。
リチャード王太子はベザリーを怪しいと考え投獄するが、怒ったクリスが多くの騎士、兵士を倒してベザリーを救い出す。
真相を追究するために教会の協力を得たクリス・ベザリー夫妻は、国王を弑逆したのはリチャード王太子であることを明らかにした。
リチャード王太子は叛逆の罪で幽閉の身となり、廃太子となった。リチャード元王太子の弟カドゥ王子が新たな王となり後見をクリスが任される。
リチャード王太子が獄中死するとエレノアは投身自殺をして退場となった。
こうしてクリス・ベザリー夫妻の幸せを邪魔する者はいなくなり、二人は末永く幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。――
何で思い出せなかったのかしら。
とにかく自分の死を避ける為に奮闘しなければと思い、自分の死以降の物語のことはぼんやりとしか覚えていなかった。
エレノア・シャルコット。
彼女はベザリーをいじめた悪役には見えなかった。
クリスの妻になったヴィヴィアに対して友好的で、クリスに対して親しげであったが嫌な感じはしなかった。
悪態をついていたがちゃんとお互いの距離を保っているようにみえて不快さは感じなかった。
「ヴィヴィア、疲れているのであれば眠っていいのですよ」
まだ馬車の中にいるのを思い出した。
自分の向かい側の席に腰かけているクリスにヴィヴィアは応えた。
「あ、いえ……シャルコット令嬢は閣下と随分親しげだったなと思いまして」
「嫉妬ですか?」
思いもしない言葉にヴィヴィアは首を横に振った。
それをみてクリスはちょっと寂しい気分になった。
「仲がいいというか、年に数回会う間柄です。私たちが気兼ねなく話せる相手が同じ公爵家の人間だったため」
「そうですか」
「今日は疲れたでしょう。帰ったらすぐに休みましょう」
それを聞きヴィヴィアはすぐにお風呂に入ってベッドに横になりたいという欲が強くなった。
今日は朝からパーティーの準備でくたくただった。
国王との謁見、久々のダンスをして、シシリアのちょっかいで精神的にも疲労感が強い。
でも、クリスとのダンスは楽しかった。
窓の方を見ると自分の姿が見える。
親からも、兄妹からも蔑まれていた外見をこんなに綺麗にしてもらえた。
「閣下、今日はありがとうございました」
ヴィヴィアはクリスに改めてお礼を言った。
「私は……」
「たくさん気遣ってくださいました。私がこのように綺麗なドレスを着られたのはあなたのおかげです」
はじめは強引な、重たい贈り物だと思った。
それでもヴィヴィアを美しい女性にしてくれた。
自信をつけさせてもらった。
クリスがいたから自分はあの場でも背筋を伸ばしてうつむかずに済んだ。
去年までの惨めな自分がこんなに変わるなど思ってもいなかった。
「この御恩はいつかお返しします」
ヒロインがゴーヴァン公爵家に訪れるその日まで公爵夫人としての役割をできる限り全うしたい。
以前の自分であれば無理だと逃げていた。
でも、今であれば社交界に出ても何とかやっていける気がする。
そしてヒロインが自分の前に現れればすぐに彼女に公爵の地位を差し出そう。
クリスが本当の恋をする少女に。
「御恩というのであれば」
クリスはしてもらいたいことがあるようだ。
何か新しい仕事だろうか。
社交界のこと、慈善活動のこと、絵本の出版事業、薬理学の勉強と色々することが増えていくが彼が望むことはできる限りしたい。
両親、家族ですらずたずたにしたヴィヴィアの自尊心を立て直してくれたのだから。
「私のことを閣下と呼ばず、名前で呼んでください」
「え」
「私はヴィヴィアの夫です。ヴィヴィアには名前で呼ばれたい。クリスと、一人の男として見て欲しい」
急に言われる内容にヴィヴィアは顔を赤くした。
またこの男はヴィヴィアを狂わせていく。
「ですが、閣下は……」
「契約結婚など無理やりあなたを嫁にするための手段でした」
契約の話が出てきてヴィヴィアはどきっとした。
「無理やり、とか。まるで私と結婚したかったような」
「そうです。早くあなたを娶らなければ、あなたはガストロ男爵に奪われるところでした」
ガストロ男爵。
ルフェル子爵家の遠縁の成金貴族であり、悪名高い男である。
彼は何度も結婚を繰り返していた。しかも、歴代の妻は突然社交界に顔を出さなくなったと思えば急に亡くなったと連絡があるのだ。
噂では女癖が悪く、女性に対して酷い暴行を加えるのが趣味の加虐嗜好者であった。
実家に挨拶に来ていた彼がヴィヴィアに向けたまなざしのいやらしさ、おそろしさといったら。
思い出しただけでぞっとする。
父に婚約相手を見つけて来いと言われ、無理だと思いながらも社交界に参加し続けていたのは少しでもあの男のことを思い出さないようにしたかったから。
「ガストロ男爵がルフェル子爵家に多額の支援金を出すと聞いて、それならばと私がそれ以上の契約金を出しました。ルフェル子爵家が事業に失敗して借金を抱え込んでいたことはわかっていましたし、色々つけてルフェル子爵をうなずかせるのは容易でした」
「そのために契約金の10万ベリを出したのですか」
「正確には16万ベリです。それと鉱山の権利書もつけておきました」
「っひ、何でそこまで」
契約金が増えていたことにヴィヴィアは驚いた。
「だって、あそこで黙らせて契約させないと後から色々と言ってきそうだったので。あ、契約を破れば10万ベリは絶対に返すようにという条件を出してサインさせました。鉱山の利権も喪失すると」
その契約内容は結婚後にヴィヴィアに関わらないこと。
そのおかげでヴィヴィアは実家から隔離されて、ようやく自分が搾取されていたこと、洗脳されていたことを認識できるようになった。
「わかりません。どうしてそんなに私の為に頑張ってくださったのですか」
「あなたのことが好きだからです」
さらっと出た言葉。
もしかすると、と思った言葉にヴィヴィアは心臓の高鳴りを覚えた。
真向かいに座っていたはずのクリスは腰をあげてヴィヴィアの方へ近づく。
ヴィヴィアの顔の横に手を添えてヴィヴィアがよそを向かないようにさせた。
「でも、あなたは……別の女性と恋に落ちる」
ヒロインと恋をして、真実の愛を手に入れる。
「私があなた以外の女と? それはありえません。仮にあったとすれば」
クリスは眉根を寄せてひどく冷淡な声を発した。
「嫌な悪夢だ」
その心から湧き出た声に思わずゾクリとした。
ヴィヴィアが怯えていることに気づいてクリスはすぐに表情を取り戻した。
「ヴィヴィア、私はあなたのことが好きです。愛しています」
今までヴィヴィアが聞くのを逃れていた言葉がすらすらと出てくる。
その言葉ひとつひとつがずしりと重たく感じられる。
「あなたは私を良くは思ってないでしょうね。最悪な結婚でしたし」
「私は、その……」
ヴィヴィアはどうしようかと内心考えた。
でも、ここまで来たら逃げ場はないのだろう。
許されることであれば言いたい。
「私も、あなたのことが好きです。私を救ってくれた大事な人……クリス様」
「様は不要です」
「ク、クリス」
ヴィヴィアは緊張しながら顔を真っ赤にして彼の名を呼んだ。
小説のシナリオ通りに行けば自分は退場しなければならない。
それでも、自分の感情を隠すことはできない。
クリスが自分を好きだと言ってくれているのにそれに応えないのは後悔するように思えた。
お互い顔を見合わせる。
クリスはヴィヴィアの頬に触れて、キスをした。頬に触れた唇の感触がこそばゆくてヴィヴィアはふふっと笑う。
それを聞いてクリスは微笑み、ヴィヴィアの唇を指で撫でた。
彼の顔が近づいてきて、ヴィヴィアはそっと自分の瞼を閉じた。
その後の感触、クリスのぬくもりを忘れたくない。
(第一部 終)
今の令嬢――エレノア・シャルコットは小説後半の悪役だ。正確な後半の悪役はリチャード王太子で、婚約者のエレノアがベザリーを苦しめるのだ。
小説『小公女ベザリー』の後半内容はこうだ。
サンベル地方の社交界で地位を築いてきたベザリーは王都へ活躍の場を移す。
ベザリーをお茶会に招待した王太子妃・エレノアは彼女の無知さを嘲笑してつまはじきにする。
実はエレノアはクリスに片思いしていたためベザリーに嫉妬を覚えていたのだ。
その頃に国王が病に倒れて、ベザリーが治癒魔術師として招聘されるがリチャード王太子は彼女を信用できず何かとつっかってくる。
クリスはベザリーの名誉を傷つけられたとリチャード王太子と決闘する。
決闘が終わると同時に国王が急変して命を落とす。
リチャード王太子はベザリーを怪しいと考え投獄するが、怒ったクリスが多くの騎士、兵士を倒してベザリーを救い出す。
真相を追究するために教会の協力を得たクリス・ベザリー夫妻は、国王を弑逆したのはリチャード王太子であることを明らかにした。
リチャード王太子は叛逆の罪で幽閉の身となり、廃太子となった。リチャード元王太子の弟カドゥ王子が新たな王となり後見をクリスが任される。
リチャード王太子が獄中死するとエレノアは投身自殺をして退場となった。
こうしてクリス・ベザリー夫妻の幸せを邪魔する者はいなくなり、二人は末永く幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。――
何で思い出せなかったのかしら。
とにかく自分の死を避ける為に奮闘しなければと思い、自分の死以降の物語のことはぼんやりとしか覚えていなかった。
エレノア・シャルコット。
彼女はベザリーをいじめた悪役には見えなかった。
クリスの妻になったヴィヴィアに対して友好的で、クリスに対して親しげであったが嫌な感じはしなかった。
悪態をついていたがちゃんとお互いの距離を保っているようにみえて不快さは感じなかった。
「ヴィヴィア、疲れているのであれば眠っていいのですよ」
まだ馬車の中にいるのを思い出した。
自分の向かい側の席に腰かけているクリスにヴィヴィアは応えた。
「あ、いえ……シャルコット令嬢は閣下と随分親しげだったなと思いまして」
「嫉妬ですか?」
思いもしない言葉にヴィヴィアは首を横に振った。
それをみてクリスはちょっと寂しい気分になった。
「仲がいいというか、年に数回会う間柄です。私たちが気兼ねなく話せる相手が同じ公爵家の人間だったため」
「そうですか」
「今日は疲れたでしょう。帰ったらすぐに休みましょう」
それを聞きヴィヴィアはすぐにお風呂に入ってベッドに横になりたいという欲が強くなった。
今日は朝からパーティーの準備でくたくただった。
国王との謁見、久々のダンスをして、シシリアのちょっかいで精神的にも疲労感が強い。
でも、クリスとのダンスは楽しかった。
窓の方を見ると自分の姿が見える。
親からも、兄妹からも蔑まれていた外見をこんなに綺麗にしてもらえた。
「閣下、今日はありがとうございました」
ヴィヴィアはクリスに改めてお礼を言った。
「私は……」
「たくさん気遣ってくださいました。私がこのように綺麗なドレスを着られたのはあなたのおかげです」
はじめは強引な、重たい贈り物だと思った。
それでもヴィヴィアを美しい女性にしてくれた。
自信をつけさせてもらった。
クリスがいたから自分はあの場でも背筋を伸ばしてうつむかずに済んだ。
去年までの惨めな自分がこんなに変わるなど思ってもいなかった。
「この御恩はいつかお返しします」
ヒロインがゴーヴァン公爵家に訪れるその日まで公爵夫人としての役割をできる限り全うしたい。
以前の自分であれば無理だと逃げていた。
でも、今であれば社交界に出ても何とかやっていける気がする。
そしてヒロインが自分の前に現れればすぐに彼女に公爵の地位を差し出そう。
クリスが本当の恋をする少女に。
「御恩というのであれば」
クリスはしてもらいたいことがあるようだ。
何か新しい仕事だろうか。
社交界のこと、慈善活動のこと、絵本の出版事業、薬理学の勉強と色々することが増えていくが彼が望むことはできる限りしたい。
両親、家族ですらずたずたにしたヴィヴィアの自尊心を立て直してくれたのだから。
「私のことを閣下と呼ばず、名前で呼んでください」
「え」
「私はヴィヴィアの夫です。ヴィヴィアには名前で呼ばれたい。クリスと、一人の男として見て欲しい」
急に言われる内容にヴィヴィアは顔を赤くした。
またこの男はヴィヴィアを狂わせていく。
「ですが、閣下は……」
「契約結婚など無理やりあなたを嫁にするための手段でした」
契約の話が出てきてヴィヴィアはどきっとした。
「無理やり、とか。まるで私と結婚したかったような」
「そうです。早くあなたを娶らなければ、あなたはガストロ男爵に奪われるところでした」
ガストロ男爵。
ルフェル子爵家の遠縁の成金貴族であり、悪名高い男である。
彼は何度も結婚を繰り返していた。しかも、歴代の妻は突然社交界に顔を出さなくなったと思えば急に亡くなったと連絡があるのだ。
噂では女癖が悪く、女性に対して酷い暴行を加えるのが趣味の加虐嗜好者であった。
実家に挨拶に来ていた彼がヴィヴィアに向けたまなざしのいやらしさ、おそろしさといったら。
思い出しただけでぞっとする。
父に婚約相手を見つけて来いと言われ、無理だと思いながらも社交界に参加し続けていたのは少しでもあの男のことを思い出さないようにしたかったから。
「ガストロ男爵がルフェル子爵家に多額の支援金を出すと聞いて、それならばと私がそれ以上の契約金を出しました。ルフェル子爵家が事業に失敗して借金を抱え込んでいたことはわかっていましたし、色々つけてルフェル子爵をうなずかせるのは容易でした」
「そのために契約金の10万ベリを出したのですか」
「正確には16万ベリです。それと鉱山の権利書もつけておきました」
「っひ、何でそこまで」
契約金が増えていたことにヴィヴィアは驚いた。
「だって、あそこで黙らせて契約させないと後から色々と言ってきそうだったので。あ、契約を破れば10万ベリは絶対に返すようにという条件を出してサインさせました。鉱山の利権も喪失すると」
その契約内容は結婚後にヴィヴィアに関わらないこと。
そのおかげでヴィヴィアは実家から隔離されて、ようやく自分が搾取されていたこと、洗脳されていたことを認識できるようになった。
「わかりません。どうしてそんなに私の為に頑張ってくださったのですか」
「あなたのことが好きだからです」
さらっと出た言葉。
もしかすると、と思った言葉にヴィヴィアは心臓の高鳴りを覚えた。
真向かいに座っていたはずのクリスは腰をあげてヴィヴィアの方へ近づく。
ヴィヴィアの顔の横に手を添えてヴィヴィアがよそを向かないようにさせた。
「でも、あなたは……別の女性と恋に落ちる」
ヒロインと恋をして、真実の愛を手に入れる。
「私があなた以外の女と? それはありえません。仮にあったとすれば」
クリスは眉根を寄せてひどく冷淡な声を発した。
「嫌な悪夢だ」
その心から湧き出た声に思わずゾクリとした。
ヴィヴィアが怯えていることに気づいてクリスはすぐに表情を取り戻した。
「ヴィヴィア、私はあなたのことが好きです。愛しています」
今までヴィヴィアが聞くのを逃れていた言葉がすらすらと出てくる。
その言葉ひとつひとつがずしりと重たく感じられる。
「あなたは私を良くは思ってないでしょうね。最悪な結婚でしたし」
「私は、その……」
ヴィヴィアはどうしようかと内心考えた。
でも、ここまで来たら逃げ場はないのだろう。
許されることであれば言いたい。
「私も、あなたのことが好きです。私を救ってくれた大事な人……クリス様」
「様は不要です」
「ク、クリス」
ヴィヴィアは緊張しながら顔を真っ赤にして彼の名を呼んだ。
小説のシナリオ通りに行けば自分は退場しなければならない。
それでも、自分の感情を隠すことはできない。
クリスが自分を好きだと言ってくれているのにそれに応えないのは後悔するように思えた。
お互い顔を見合わせる。
クリスはヴィヴィアの頬に触れて、キスをした。頬に触れた唇の感触がこそばゆくてヴィヴィアはふふっと笑う。
それを聞いてクリスは微笑み、ヴィヴィアの唇を指で撫でた。
彼の顔が近づいてきて、ヴィヴィアはそっと自分の瞼を閉じた。
その後の感触、クリスのぬくもりを忘れたくない。
(第一部 終)
あなたにおすすめの小説
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
『処刑された悪女は、今度こそ誰も愛さない』
なつめ
恋愛
断頭台の上で、自分の終わりを見た。
公爵令嬢セラフィーナ・エーデルベルク。傲慢で冷酷、嫉妬深い悪女として断罪され、婚約者である王太子に見放され、社交界の嘲笑の中で処刑された女。
けれど次に目を開けた時、彼女はまだ十七歳の春に戻っていた。
処刑まで残された時間は、三年。
もう誰も愛さない。
誰にも期待しない。
誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、静かに生きる。
そう決めて、彼女は人との距離を置きはじめる。
婚約者にも、原作の“主人公”にも、騎士にも、侍女にも、未来で自分を断罪するはずの人々すべてに。
けれど、少しだけ優しくした。
少しだけ、相手の話を聞いた。
少しだけ、誤解を解く努力をした。
たったそれだけのことで、なぜか彼らのほうが先に彼女へ心を寄せ始める。
「……あなたは、こんな人だったのですか」
「もう少し、私を頼ってください」
「君が誰も愛さないつもりでも、俺は君を放っておけない」
「ずっと、怖かっただけなんでしょう」
悪女として死んだはずの令嬢が、二度目の人生で手に入れるのは名誉か、友情か、それとも恋か。
これは、誤解に殺された少女が、静かに息を吹き返していく物語。
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……