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ハーシュを含めたロットロン男爵領は西に彼のドーソン男爵領が、東に襲撃を受けた大森林が存在する。オリマッテは襲撃を回避するためハーシュを出ると、一路北側に進路を向け移動し街道を直走る。計画通り次々と代え馬に乗り換え、小休止を挟みながら移動する事一日で全行程の半分を消化した。しかし、計画とは所詮計画である事を思い知らされる。
「出港出来ない?」
「はい。どうやら船が故障したらしく、修理に二日掛かるとの事です」
「二日か、つまり一日しか短縮できないという事だな……」
ブラストルアイクへ向かう為にはこの湖を連絡船で渡らなければならない。それ以外の方法は泳いで渡るしかないが、成功した人間は居ない。
「如何為さいますか?」
「待つしかあるまい。だが、一度船を見てみよう」
「船を、ですか?」
「ああ、こうして待っているだけではどうにも落ち着かないのだ。ロドム、付き合え。他の者は自由にして構わんぞ」
手配した宿屋はオリマッテが宿泊する為貸し切りと為っている。その為彼等は一人一部屋を与えられ、彼の言葉が余程嬉しかったのか満面の笑みを浮かべた。
その後、宿を出た二人はまっすぐ船の修理場へと赴いた。
「これか……」
「は、はい。昨夜大きな物音が聞こえまして、その時は何だか判らず……。ですが明るくなり調べてみますと」
「マストが根元から折れていた、ということか」
修理を受け持つ船大工は相手が男爵という事もあり非常に恐縮しながら対応する。その反応を見てオリマッテは気軽に話し掛ける。
「そう緊張するな。昔は私も商人だったのだ」
「えっ、いやですが……」
「ならこの場だけ気軽に話そうではないか。それに、その話し方では満足に答えられないのではないか?」
「は、はい……、ですがよろしいのでしょうか?」
「その本人が認めているのだ。気にする必要はない。さあ、気軽に話してくれ」
だがオリマッテの言葉だけで決断する事は身分による恐怖を脱し得ない。そこで彼はロドムへと視線を向ける。
「旦那様の言葉を信じて貰いたい。何、言葉を反故にするようなら私が旦那様を罰するまで」
「おい、それだと俺が恐ろしい貴族様ではないか」
「旦那様は実際にその貴族様です」
ロドムの介入で二人は彼の前で漫才を繰り広げる。もちろん笑いを誘うものではないが、対峙する彼には効果覿面と緊張が解れ笑い始めた。
「分りました。それでは……、気楽に話させてもらおうかい」
「おう、そうしてくれ。それで、このマストは修復できるのかね?」
「まあ資材があれば一両日中にも、だけどなぁ……」
彼はあの程度は自信を以て直す自信が有った。しかし彼の表情は暗い。オリマッテは元商人故に相手の顔色を窺い、即座に答えを導き出す。
「無いのだね?」
「そうなんだよ。あの船のマストは湖の強風を受け止める為特注品なんだよ。部品は幾つか有るんだけどな、それを繋ぐ部品が足りないんだよ」
「なるほどな。それで二日か……」
「ああ、全く忌々しい。そもそもその部品が紛失しなければ今頃修繕出来たのによ!」
「紛失? つまり修復用の資材は在ったという事か?」
「ああ、それさえあればなぁ……」
男は心底悔しそうな表情でオリマッテに話すが、当の本人はそれとは別に意識を向ける。船大工は修理について必至なため気付いていないが、明らかに怪しい雰囲気を漂わせているのをオリマッテは感じ取っている。それを示す様に彼は男へ礼を述べると足早に修理場を後にした。
「人為的な物だな」
「都合よくマストが折れ、部品が紛失。しかも特注品ですからね」
「ああ、昨夜は風が強かったと言っていたが、それを隠れ蓑に行動したのかもしれん」
「旦那様、もしや」
と、ロドムが言い掛けたところでオリマッテが手で話すのを止める様に制する。
「あくまでも可能性の話だ。二つの関連が明確に示せる証拠が出ぬ限り騒ぐ事は出来ない。まずはブラストルアイクに辿り着きこの事を直接報告する」
この地はブラスト辺境伯の直轄地であり、その家臣たるオリマッテが闇雲に騒ぎ立てる事は貴族社会上タブーとされている。自身が泥を被るのなら構わないが、この場合主人のブラスト辺境伯が監督の観点から泥を被せてしまう。
「しかし悔しいですな。折角ブーラまで順調でしたのに」
「仕方ないだろ、こればかりは。しかし……」
オリマッテは何かを考えると再び修理場へと戻る。この場合必ず必要な行動である為、ロドムは一切尋ねる事はしない。
「おや、男爵様?」
「ああ、先ほどは貴重な話感謝する。ところで一つ尋ねたいのだが」
「ああ、構わないぜ」
「この湖を渡る船は他にないのかね?」
「ほ、他にか……、有るにはあるが人数が三人までと非常に小さい船だぜ。それに危険だぜ」
オリマッテは大工の男からの言葉に手を叩いた。
「有るのならばそれで構わない! 今すぐ船を用意してくれ!!」
「はぁ? 本気で言ってんのか?」
「本気も本気だ! 私は急ぎ旦那様の下へと向かわねばならぬのだ!」
「だけどな、もし渡るなら男爵様と護衛さん一人になっちまうぜ?」
彼もこのブーラの港町で長いこと船大工の仕事に就いている為、ある程度貴族については知っている。ブラスト辺境伯の家臣であろうと男爵位ならば護衛が一人の筈がないからだ。
「構わない。往復して運んでくれればそれでな」
「そ、そうかい……、一応言っておくけどよ。通常の船じゃないから保障は出来ないぜ」
「解っている。それで、どの程度で準備出来る?」
「そうだな、十分もあれば大丈夫だ」
「そうか、では十分後に此処で構わないか?」
「いや、船着き場で待機してくれ。最初に向かうのはロットロン男爵か?」
「そうだ。私と隣のロドムで頼む」
「承知した! では腕利きの人間を向かわせるからな!」
話はあっと言う間に纏まり二人は駆け足で宿屋に戻り、待機中の兵士に知らせ荷物を纏めて船着き場へと移動する。
「男爵様、こちらです!!」
「おお、随分と早かった、な……」
「早い事は早いのですが、これは……」
二人にとって初めて見る形の舟だった。
「ささ、お乗りください。この舟は高速移動しますのでご注意ください」
「ああ、頼むぞ」
二人は一列の座席にロドムを先頭に真ん中をオリマッテ座り最後尾は操縦者が座る。
形はカヌーだった。それに無理矢理モーターの様な物を搭載し、原動力として高速移動を可能としている。
「はい、では準備は宜しいですね?」
「ああ」
「では出発します!」
彼はオリマッテに答えるとモーター部分に小さな小石をセットする。その瞬間凄まじい加速が舟に加わる。
「ぐっ!?」
「ぐぉ、こ、これは……」
「出来るだけ前傾姿勢でお願いしますよ!」
「先に言え」と二人は思ったが口には出せない。余りの速さに目も開けられず、言われるがまま前傾姿勢を維持するのが精一杯だった。本来なら五時間ほど掛けてゆっくりと進むのだが、この舟であればあっと言う間に対岸へ辿り着く。と、言っても一時間近く舟に乗り、体も慣れて来ると次第に周囲の景色を観る程度の余裕が生まれる。
「凄まじい速さだな」
「はい。この舟が大型化すればかなりの時間短縮が可能と為りますね」
二人は両岸を結ぶ連絡船の事を話し、それに操縦者の男も話に加わる。
「それは無理ですよ」
「む、無理なのか?」
「はい。この船には風石を搭載し、この速さを出しています。元々この舟は緊急連絡用の舟なんですよ」
「なるほど、だから私が乗船出来たのか」
「そうです」
この舟はブラスト辺境伯爵家所有である事を告げられた。だからオリマッテが乗ることが可能だったのだと知ると共に辺境伯の財力を改めて知る事と為る。
「しかし風石とは、旦那様も思い切った物に使用するな」
「ですが、これは非常に有効的です。万が一ゴーリンガ王国の侵攻を受けた際、この連絡艇を使えば相当な時間の短縮に為ります」
「ああ、だがそれを大きくすれば大軍を素早く移動できるな。金に糸目を付けなければ……」
風石のみならず、火石水石など不思議な力を生み出す石がこの世界には存在する。その為この世界ではこの石を利用した道具の発達が著しい。代表的な道具は火石を用いたコンロである。一般家庭には普及していないが王宮や余裕のある貴族家、裕福な平民や儲かっている料理店に導入されている。
他にも水石を用いた物として井戸の簡易版の役割を果たす道具が存在する。その石と道具にセットすれば簡単に水が出てくるのだ。それを応用し火石と合わせればお湯が出る為、公衆浴場に導入されている。
しかし、この石は採掘場所が限られていて、風石だけは輸入に頼る他なかった。自国生産出来ればオリマッテの望む大型船に導入する事も出来るだろうが、望むだけの速度を出す為には大量の風石が必要と為る。石は消耗品である為、無駄使いは出来ないのであった。
「旦那様、ラーブが見えて参りました!」
「何、もう見えるのか!!」
二人が話しているとあっと言う間に対岸のラーブの港街へ到達する。彼らが驚いていると舟は次第に減速に移り始める。この舟は残念な事に自然減速する以外に方法は無く、かなり離れた位置から風石を用いた道具から石を抜き出す。その後、ゆっくりとラーブの船着き場へと進み、最後は操縦者がオールで漕ぎ舟を付ける。
「到着しました!」
「うむ、感謝する。そう言えばあの船大工の名前も聞いていなかったな。済まないが君の名前と一緒に教えてくれないか?」
「親方の名前はボブランです。僕の名前はスーラって言います」
「ボブランとスーラだな。有難う、しっかりと覚えておこう」
「はい!」
「では残りの者たちも同様に運んでもらいたい。それと金についてはどうなっている?」
風石はたとえ小粒でも非常に高価なため、経営が順調なオリマッテでも些か不安に為る。
「ご安心ください。領主様の財産ですので」
「いや、それだと安心出来んのだが……。まあいい、最終的に旦那様に届くのであろう?」
「はい!」
風石の消耗と補充についての確認を終えたオリマッテは至急第二陣を送る様にスーラをブーラへと戻した。
「さて思わぬ幸運もここで後続を待たねばならぬな」
「はい。ですが、これからの道中は一安心ですね」
「ああ、だと良いが。ブラストルアイクに入るまで気を抜くなよ」
「勿論です」
言葉を交わし、二人は馬を待たせてある場所まで移動し後続部隊が来るのを待つ事と為る。
「出港出来ない?」
「はい。どうやら船が故障したらしく、修理に二日掛かるとの事です」
「二日か、つまり一日しか短縮できないという事だな……」
ブラストルアイクへ向かう為にはこの湖を連絡船で渡らなければならない。それ以外の方法は泳いで渡るしかないが、成功した人間は居ない。
「如何為さいますか?」
「待つしかあるまい。だが、一度船を見てみよう」
「船を、ですか?」
「ああ、こうして待っているだけではどうにも落ち着かないのだ。ロドム、付き合え。他の者は自由にして構わんぞ」
手配した宿屋はオリマッテが宿泊する為貸し切りと為っている。その為彼等は一人一部屋を与えられ、彼の言葉が余程嬉しかったのか満面の笑みを浮かべた。
その後、宿を出た二人はまっすぐ船の修理場へと赴いた。
「これか……」
「は、はい。昨夜大きな物音が聞こえまして、その時は何だか判らず……。ですが明るくなり調べてみますと」
「マストが根元から折れていた、ということか」
修理を受け持つ船大工は相手が男爵という事もあり非常に恐縮しながら対応する。その反応を見てオリマッテは気軽に話し掛ける。
「そう緊張するな。昔は私も商人だったのだ」
「えっ、いやですが……」
「ならこの場だけ気軽に話そうではないか。それに、その話し方では満足に答えられないのではないか?」
「は、はい……、ですがよろしいのでしょうか?」
「その本人が認めているのだ。気にする必要はない。さあ、気軽に話してくれ」
だがオリマッテの言葉だけで決断する事は身分による恐怖を脱し得ない。そこで彼はロドムへと視線を向ける。
「旦那様の言葉を信じて貰いたい。何、言葉を反故にするようなら私が旦那様を罰するまで」
「おい、それだと俺が恐ろしい貴族様ではないか」
「旦那様は実際にその貴族様です」
ロドムの介入で二人は彼の前で漫才を繰り広げる。もちろん笑いを誘うものではないが、対峙する彼には効果覿面と緊張が解れ笑い始めた。
「分りました。それでは……、気楽に話させてもらおうかい」
「おう、そうしてくれ。それで、このマストは修復できるのかね?」
「まあ資材があれば一両日中にも、だけどなぁ……」
彼はあの程度は自信を以て直す自信が有った。しかし彼の表情は暗い。オリマッテは元商人故に相手の顔色を窺い、即座に答えを導き出す。
「無いのだね?」
「そうなんだよ。あの船のマストは湖の強風を受け止める為特注品なんだよ。部品は幾つか有るんだけどな、それを繋ぐ部品が足りないんだよ」
「なるほどな。それで二日か……」
「ああ、全く忌々しい。そもそもその部品が紛失しなければ今頃修繕出来たのによ!」
「紛失? つまり修復用の資材は在ったという事か?」
「ああ、それさえあればなぁ……」
男は心底悔しそうな表情でオリマッテに話すが、当の本人はそれとは別に意識を向ける。船大工は修理について必至なため気付いていないが、明らかに怪しい雰囲気を漂わせているのをオリマッテは感じ取っている。それを示す様に彼は男へ礼を述べると足早に修理場を後にした。
「人為的な物だな」
「都合よくマストが折れ、部品が紛失。しかも特注品ですからね」
「ああ、昨夜は風が強かったと言っていたが、それを隠れ蓑に行動したのかもしれん」
「旦那様、もしや」
と、ロドムが言い掛けたところでオリマッテが手で話すのを止める様に制する。
「あくまでも可能性の話だ。二つの関連が明確に示せる証拠が出ぬ限り騒ぐ事は出来ない。まずはブラストルアイクに辿り着きこの事を直接報告する」
この地はブラスト辺境伯の直轄地であり、その家臣たるオリマッテが闇雲に騒ぎ立てる事は貴族社会上タブーとされている。自身が泥を被るのなら構わないが、この場合主人のブラスト辺境伯が監督の観点から泥を被せてしまう。
「しかし悔しいですな。折角ブーラまで順調でしたのに」
「仕方ないだろ、こればかりは。しかし……」
オリマッテは何かを考えると再び修理場へと戻る。この場合必ず必要な行動である為、ロドムは一切尋ねる事はしない。
「おや、男爵様?」
「ああ、先ほどは貴重な話感謝する。ところで一つ尋ねたいのだが」
「ああ、構わないぜ」
「この湖を渡る船は他にないのかね?」
「ほ、他にか……、有るにはあるが人数が三人までと非常に小さい船だぜ。それに危険だぜ」
オリマッテは大工の男からの言葉に手を叩いた。
「有るのならばそれで構わない! 今すぐ船を用意してくれ!!」
「はぁ? 本気で言ってんのか?」
「本気も本気だ! 私は急ぎ旦那様の下へと向かわねばならぬのだ!」
「だけどな、もし渡るなら男爵様と護衛さん一人になっちまうぜ?」
彼もこのブーラの港町で長いこと船大工の仕事に就いている為、ある程度貴族については知っている。ブラスト辺境伯の家臣であろうと男爵位ならば護衛が一人の筈がないからだ。
「構わない。往復して運んでくれればそれでな」
「そ、そうかい……、一応言っておくけどよ。通常の船じゃないから保障は出来ないぜ」
「解っている。それで、どの程度で準備出来る?」
「そうだな、十分もあれば大丈夫だ」
「そうか、では十分後に此処で構わないか?」
「いや、船着き場で待機してくれ。最初に向かうのはロットロン男爵か?」
「そうだ。私と隣のロドムで頼む」
「承知した! では腕利きの人間を向かわせるからな!」
話はあっと言う間に纏まり二人は駆け足で宿屋に戻り、待機中の兵士に知らせ荷物を纏めて船着き場へと移動する。
「男爵様、こちらです!!」
「おお、随分と早かった、な……」
「早い事は早いのですが、これは……」
二人にとって初めて見る形の舟だった。
「ささ、お乗りください。この舟は高速移動しますのでご注意ください」
「ああ、頼むぞ」
二人は一列の座席にロドムを先頭に真ん中をオリマッテ座り最後尾は操縦者が座る。
形はカヌーだった。それに無理矢理モーターの様な物を搭載し、原動力として高速移動を可能としている。
「はい、では準備は宜しいですね?」
「ああ」
「では出発します!」
彼はオリマッテに答えるとモーター部分に小さな小石をセットする。その瞬間凄まじい加速が舟に加わる。
「ぐっ!?」
「ぐぉ、こ、これは……」
「出来るだけ前傾姿勢でお願いしますよ!」
「先に言え」と二人は思ったが口には出せない。余りの速さに目も開けられず、言われるがまま前傾姿勢を維持するのが精一杯だった。本来なら五時間ほど掛けてゆっくりと進むのだが、この舟であればあっと言う間に対岸へ辿り着く。と、言っても一時間近く舟に乗り、体も慣れて来ると次第に周囲の景色を観る程度の余裕が生まれる。
「凄まじい速さだな」
「はい。この舟が大型化すればかなりの時間短縮が可能と為りますね」
二人は両岸を結ぶ連絡船の事を話し、それに操縦者の男も話に加わる。
「それは無理ですよ」
「む、無理なのか?」
「はい。この船には風石を搭載し、この速さを出しています。元々この舟は緊急連絡用の舟なんですよ」
「なるほど、だから私が乗船出来たのか」
「そうです」
この舟はブラスト辺境伯爵家所有である事を告げられた。だからオリマッテが乗ることが可能だったのだと知ると共に辺境伯の財力を改めて知る事と為る。
「しかし風石とは、旦那様も思い切った物に使用するな」
「ですが、これは非常に有効的です。万が一ゴーリンガ王国の侵攻を受けた際、この連絡艇を使えば相当な時間の短縮に為ります」
「ああ、だがそれを大きくすれば大軍を素早く移動できるな。金に糸目を付けなければ……」
風石のみならず、火石水石など不思議な力を生み出す石がこの世界には存在する。その為この世界ではこの石を利用した道具の発達が著しい。代表的な道具は火石を用いたコンロである。一般家庭には普及していないが王宮や余裕のある貴族家、裕福な平民や儲かっている料理店に導入されている。
他にも水石を用いた物として井戸の簡易版の役割を果たす道具が存在する。その石と道具にセットすれば簡単に水が出てくるのだ。それを応用し火石と合わせればお湯が出る為、公衆浴場に導入されている。
しかし、この石は採掘場所が限られていて、風石だけは輸入に頼る他なかった。自国生産出来ればオリマッテの望む大型船に導入する事も出来るだろうが、望むだけの速度を出す為には大量の風石が必要と為る。石は消耗品である為、無駄使いは出来ないのであった。
「旦那様、ラーブが見えて参りました!」
「何、もう見えるのか!!」
二人が話しているとあっと言う間に対岸のラーブの港街へ到達する。彼らが驚いていると舟は次第に減速に移り始める。この舟は残念な事に自然減速する以外に方法は無く、かなり離れた位置から風石を用いた道具から石を抜き出す。その後、ゆっくりとラーブの船着き場へと進み、最後は操縦者がオールで漕ぎ舟を付ける。
「到着しました!」
「うむ、感謝する。そう言えばあの船大工の名前も聞いていなかったな。済まないが君の名前と一緒に教えてくれないか?」
「親方の名前はボブランです。僕の名前はスーラって言います」
「ボブランとスーラだな。有難う、しっかりと覚えておこう」
「はい!」
「では残りの者たちも同様に運んでもらいたい。それと金についてはどうなっている?」
風石はたとえ小粒でも非常に高価なため、経営が順調なオリマッテでも些か不安に為る。
「ご安心ください。領主様の財産ですので」
「いや、それだと安心出来んのだが……。まあいい、最終的に旦那様に届くのであろう?」
「はい!」
風石の消耗と補充についての確認を終えたオリマッテは至急第二陣を送る様にスーラをブーラへと戻した。
「さて思わぬ幸運もここで後続を待たねばならぬな」
「はい。ですが、これからの道中は一安心ですね」
「ああ、だと良いが。ブラストルアイクに入るまで気を抜くなよ」
「勿論です」
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