現世ではヒモだった男が異世界で英雄へと成り上がる

今野常春

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第二章 国家解体

第22話 抵抗組織との接触

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 テダは年長者と言う事もあって一人部屋に通された。
     テダは男を室内へ引き込むと同時に、懐に隠し持っていた拳銃を突き付けた。
「で、貴様は何者だ?」
「いきなり銃を突きつけるとは無粋ですぞ」
「正体不明な者に優しくする必要はない。さあ名乗れ」
 互いに小声で話し合うが、テダの殺気は膨れ上がる。男も流石に不味いと思ったのか息を吐き出した。
「ふー、仕方がないな。今から名乗る。だから殺気を収め、無粋な物を下げてくれ」
「離れてはやる。だが、下ろしはしない」
 テダは目の前の男を信用出来るまでこの構えは解かない心積もりだ。彼にとって此処までが譲歩できる範囲だった。それを知った男は諦めて名を名乗る。
「私は王国軍第三軍に所属するデリン・ブリュ少尉です」
「王国軍だと?」
「はい。貴方はティーダ少佐でお間違いありませんか?」
 テダは考える。確かに第三軍は存在する。南部を主に守る軍集団であり、包囲網を強いた時、数個師団を差し向けている。
「何故貴官が此処に居るのだ?」
「簡単です。我々は地下組織を構築しております」
「なに?」
 テダ目は驚きに満たされた。

 第三軍は一〇個師団で編成されている。その内七個師団を帝国軍の包囲網に抽出されていた。故に司令部を置くこのカール防衛が精一杯となっていたところ、王国が降伏。その後、帝国軍が進駐軍としてカールにやってくる。全師団は武装解除が命じられ、抵抗することなく部隊は解散が命じられた。武器がなければ将兵は帝国に太刀打ちできない。
 当然司令部要因は全員逮捕拘禁された。
 だが、内心から屈しない者たちは武器を隠し、地下へと隠れたのだ。テダはその話をブリュ少尉から聞かされた。

「なるほど、その様な状況になっていたのか」
「はい。我々は武器こそありますが、ここを治める帝国軍には太刀打ちできません。数が足りないのです……」
 帝国軍一個師団が駐留するカールは小数が立ち向かったところで焼け石に水だ。
「だろうな」
「ですが、私たちは諦めません」
 ブリュの目は真剣だった。テダも目の前の男が嘘を述べているとは思っていない。
「それで、俺に、いや俺たちにどうしろと言いたいのだ?」
「協力を……」
 その後、ブリュは幾分落ち込んだ様子で彼の部屋を後にした。テダとの間で何が話されたのかは分からないものの、期待したほどの内容でないことは察する。
     テダの言い分としては滞在時間が限られていることだ。明日には王都に向けて出なければならない。

   ブリュが帰った後、程なくして全員を集めた。
「まさか、抵抗組織が作られていたなんて……」
「帝国との歴史を考えれば無理もないかもしれない」
「だな。だけど、協力しないっていうのは?」
「簡単だ。我々の目的は王都に帰還することだ。先ずはそれを果たさなければならない」
 テダの目的ははっきりしていた。何を置いても王都に帰ることはレイムとの約束でもある。
「ですが、目を付けられましたね」
「ああ、状況はよろしくない」
「明日までここで大人しくしていていいものなのか……」
 俺の前で皆はどうするかを話し合っている。だが俺にはどうしても気になることがあった。
「あのー」
「どうした?」
「何故その少尉はテダに気付いたのでしょう? この部屋も何故分かったのですか?」
 俺の言葉に皆は考え込む。
「監視されていた?」
「いつからだ?」
 喧々諤々と答えの見つからない議論が続く。
 結局答えは見出せなかった。唯一あるとすれば協力せず、明日はトラックに乗車して王都に向かうことだった。
 結果としてこの後ブリュ少尉からの接触はなかった。

「接触したか」
「ええ、無事あのホテルに誘導させたのち部屋を尋ねましたが……」
 ブリュの表情は暗かった。
「まあ仕方がないだろう」
「よろしいのですか?」
 ブリュとしては是が非でも欲しい戦力と見なしていたため、諦めが良すぎると感じていた。
「構わないよ。彼らはここの住民ではない。おそらく王都に帰りたいのだ」
「ですが……」
「彼らの部隊は王都が故郷なのだよ」
 ブリュは渋々ながら納得して部屋を引き上げた。
「今は接触したことで良しとする。この事がいつの日か芽吹く。それまでは我らで頑張ろう」
 この男こそ地下組織を短時間で作り上げたリーダーのゲーグである。彼は元々カールの住民でとある会社を営んでいた。ところが帝国軍の進駐で状況は一変したのだった。

 翌日、俺たちは帝国軍が運転するトラックに乗り込み一路王都へと向かう。
 その際、昨日テダを尋ねたブリュ少尉を彼は見つけたそうだが、近付いてくることもなく見送ったそうだ。
 そうだとは俺たちが王都に着いた後、テダから聞かされたことだった。





 王国が降伏する旨を発してから一週間が過ぎた。
 俺たちは王都に潜伏し、一国民として生活しようとしている。面白いのは俺たちの顔がばれていないことだ。気になった俺はマーンに聞いたところ、俺たちの部隊が特殊であった為、他部隊との交流が少なかったことが功を奏した。
「戻ったぞ」
 街へ出歩いていたテダが戻ってきた。
「おかえりなさい」
「ああ」
 口数少なくテダは奥へと進み手洗いを終わらせると腰を下ろした。
「どこも暗い……」
 詳しく聞けば出歩く者は少なく、見かけるのは闊歩して歩く帝国兵だった。加えて物資が不足気味で、食料を販売するお店はどこも品薄となっているらしい。かつての栄華を知るテダにとって王都の様変わりは落胆の二文字だった。
「それと朗報だ。ホーブル閣下の縁者と連絡が取れた」
「ホーブル閣下……」
 俺の脳裏に深くこびり付く戦場で初めて俺と出会ったあの笑みを思い浮かべた。

「そうだ。閣下は帝国が攻め入る前にヘレルに向かっていたらしい」
「ヘレルに…… つまり俺たちの後を追っていたと」
 マーンの言葉にテダは首を横に振った。
「違う。どうやらヘレルの魔導石産出が減少していたらしいのだ。そこで閣下が出向いていたのだそうだ」
 テダの話に耳を傾ける俺たちだが、リクはどこか引っかかったらしい。
「わざわざホーブル閣下ほどのお方が出向くことなの?」
「分からん。だが……」
 その点はテダも気になったのだろう。どこか歯切れの悪い言い方だ。
「だっておかしいじゃない。ホーブル閣下は国王陛下の実兄なのよ」
 ホーブルは国王マクレイの実兄だった。
 珍しいことにホーブルは王権を弟に託し、自らは軍の重鎮として権限を振るうことを求めたのだ。
 その実兄が降伏後、どこからともなく俺たちに近付いてきた。
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