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第二章 国家解体
第21話 都市カール
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「漸く着いた……」
俺たちはあの村を出た後、二日かけてカールに辿り着いた。道中、大した問題も起こらず安堵していたが、カールに入ろうとしたときに問題が起こる。
「随分と並んでいるわね」
「うん」
この移動中俺はエレノア・リクと居ることが多くなった。彼女も俺の側にいることが増えた。とはマルことアルバン・マーンが指摘したことだった。
それに対しテダは咎めることはなく、逸脱しなければ当人同士の自由だと言い放つ。俺たちは意識することはないが、気にすることもなくなった。
「で、何なんだ。この列は……」
マーンは溜息交じりに目の前の大行列を指さした。
「帝国軍が入城する者を取り締まっているのさ」
「そうなの?」
「ああ、カールを含めて城壁に囲われた都市はどこも同じだよ」
俺たちの前に居た人が訳を説明してくれた。彼らは物資輸送で生計をたてているとのことだった。だから似たような状況にも動じなかった。
「でもなんで取り締まりを?」
「さてね。私らには分からないさ…… 何にしても早く元に戻って欲しいよ」
「次!」
帝国兵は厳重な検問を強いていた。入城を望む人々は多少の不満を述べながらも抵抗せず、粛々と指示に従っている。
ついに俺たちの番となった。
「目的は?」
「王都に帰りたいのです」
「王都に? 君たちは何をしていたのかね?」
「はい。仕事で辺境の地へ出向きました。しかし、帝国軍が攻めてきまして逃げ隠れていたのです」
まるで調書を取られているような状況に落ち着かない。しかし、テダからすらすら出てくる嘘に俺は感心した。よくそこまでのことを思い付くな……
幸運なことに一人一人を取り調べるわけではなかった。
「それならば今日はカールで休むことを認めよう」
「ありがとうございます」
「その後の交通手段はあるのか?」
「鉄道で向かいたいのですが……」
主要都市には鉄道が通じている。テダはそのことを熟知している為、目の前の兵士に答えたが、帰ってきたのは不可だった。
「残念だが、鉄道は動いていない」
「動いていないのですか?」
その理由は簡単だった。魔導石が不足していたのだ。王国の魔導列車は魔導石を動力源としている。それも消耗が激しい。故に多少の蓄えが各都市にあったのだが、それもこの戦争中に消耗していた。
「ああ、魔導石なる物を産出する都市でストライキが起こってな」
なるほど、根本はそれだったか……
よって、各都市を移動する場合、自力で歩くか帝国軍が動かすトラックに乗車するかという選択肢が与えられた。
テダはその判断を保留にしても構わないかと問い掛けると、兵士はすんなり了承した。
帝国軍は今まで敵であった為、拒否反応を示すも者が少なからずいるのだそうだ。
俺たちは入城を果たすとホテルを探し求めた。
「兵士にはまだ部屋は空いていると言われたが、あるかどうか……」
テダは不安げに呟いたが、この都市の過密さを見ればそう抱くのも無理はなかった。
「テダおじさん。金は大丈夫なのか?」
「ああ、金には余裕がある。安心しろ、マーン」
魔法中隊を離れる際、俺たちはレイム少将から当面の資金として金を渡されていた。
「あっ、みなさんお部屋をお探しで?」
目ざとい男がテダに近付きながら話し掛けてきた。
「ああ、一泊するホテルを探している」
「あちゃー、今どこも満室なんですよ! 如何です、私のホテルは?」
「どこも満室なのだろ。何故、君のところは部屋が空いているのかな?」
俺はこれもセールストークなのだろうと思った。
結果、早く休もうという空気になり、彼の進めるホテルに決める。
「お客様は8名様でよろしいですか?」
「ああ、間違いない」
「お一人様あたり一泊500レンとなりますが」
「随分と高いのだな」
「現在どこのホテルも一杯でして、こちらも稼げるときに」
なるほど、特需が発生しているのか……
「仕方がない。ではそれで泊まらせてくれ」
「はい。ありがとうございます! では前金で宜しくお願いします!」
テダは4万レンを支払うと各々部屋に通された。
「あー、久しぶりのベッド……」
俺は目の前に見えたベッドに飛び込んだ。
道中苦労したからかベッドのありがたみを思い出した。
「その前に風呂に入りなさいよ」
「うーん……」
俺はニヤニヤされながらリクと同室となった。首謀者はマーンであることに間違いない。
それでもリクは何も言わなかった。
「眠たいのは分かるけど、風呂はこの時間しか使えないのよ」
その瞬間、俺は体を起こす。
そうだった。此処は王都ではなく、魔法の恩恵を得られないのだ。
「じゃあ先に入るよ!」
「ええ、さっさと入りなさい」
俺はアメニティとして用意されている着替えを持って風呂に入るとシャワーを浴びる。
「あー生き返る‼」
「静かにしなさいー」
「あーごめんー」
リクの口調は優しいものだった。こんな雰囲気本当に久しぶりだった。数日前までのことが嘘かのような気分だ。
そんな和やかな空気に浸っているころ。
「で、ここに来た理由は?」
「そう身構えなさんな、中央参謀部特別中隊の少佐殿……」
一人の男がテダの部屋を訪ねていた。
俺たちはあの村を出た後、二日かけてカールに辿り着いた。道中、大した問題も起こらず安堵していたが、カールに入ろうとしたときに問題が起こる。
「随分と並んでいるわね」
「うん」
この移動中俺はエレノア・リクと居ることが多くなった。彼女も俺の側にいることが増えた。とはマルことアルバン・マーンが指摘したことだった。
それに対しテダは咎めることはなく、逸脱しなければ当人同士の自由だと言い放つ。俺たちは意識することはないが、気にすることもなくなった。
「で、何なんだ。この列は……」
マーンは溜息交じりに目の前の大行列を指さした。
「帝国軍が入城する者を取り締まっているのさ」
「そうなの?」
「ああ、カールを含めて城壁に囲われた都市はどこも同じだよ」
俺たちの前に居た人が訳を説明してくれた。彼らは物資輸送で生計をたてているとのことだった。だから似たような状況にも動じなかった。
「でもなんで取り締まりを?」
「さてね。私らには分からないさ…… 何にしても早く元に戻って欲しいよ」
「次!」
帝国兵は厳重な検問を強いていた。入城を望む人々は多少の不満を述べながらも抵抗せず、粛々と指示に従っている。
ついに俺たちの番となった。
「目的は?」
「王都に帰りたいのです」
「王都に? 君たちは何をしていたのかね?」
「はい。仕事で辺境の地へ出向きました。しかし、帝国軍が攻めてきまして逃げ隠れていたのです」
まるで調書を取られているような状況に落ち着かない。しかし、テダからすらすら出てくる嘘に俺は感心した。よくそこまでのことを思い付くな……
幸運なことに一人一人を取り調べるわけではなかった。
「それならば今日はカールで休むことを認めよう」
「ありがとうございます」
「その後の交通手段はあるのか?」
「鉄道で向かいたいのですが……」
主要都市には鉄道が通じている。テダはそのことを熟知している為、目の前の兵士に答えたが、帰ってきたのは不可だった。
「残念だが、鉄道は動いていない」
「動いていないのですか?」
その理由は簡単だった。魔導石が不足していたのだ。王国の魔導列車は魔導石を動力源としている。それも消耗が激しい。故に多少の蓄えが各都市にあったのだが、それもこの戦争中に消耗していた。
「ああ、魔導石なる物を産出する都市でストライキが起こってな」
なるほど、根本はそれだったか……
よって、各都市を移動する場合、自力で歩くか帝国軍が動かすトラックに乗車するかという選択肢が与えられた。
テダはその判断を保留にしても構わないかと問い掛けると、兵士はすんなり了承した。
帝国軍は今まで敵であった為、拒否反応を示すも者が少なからずいるのだそうだ。
俺たちは入城を果たすとホテルを探し求めた。
「兵士にはまだ部屋は空いていると言われたが、あるかどうか……」
テダは不安げに呟いたが、この都市の過密さを見ればそう抱くのも無理はなかった。
「テダおじさん。金は大丈夫なのか?」
「ああ、金には余裕がある。安心しろ、マーン」
魔法中隊を離れる際、俺たちはレイム少将から当面の資金として金を渡されていた。
「あっ、みなさんお部屋をお探しで?」
目ざとい男がテダに近付きながら話し掛けてきた。
「ああ、一泊するホテルを探している」
「あちゃー、今どこも満室なんですよ! 如何です、私のホテルは?」
「どこも満室なのだろ。何故、君のところは部屋が空いているのかな?」
俺はこれもセールストークなのだろうと思った。
結果、早く休もうという空気になり、彼の進めるホテルに決める。
「お客様は8名様でよろしいですか?」
「ああ、間違いない」
「お一人様あたり一泊500レンとなりますが」
「随分と高いのだな」
「現在どこのホテルも一杯でして、こちらも稼げるときに」
なるほど、特需が発生しているのか……
「仕方がない。ではそれで泊まらせてくれ」
「はい。ありがとうございます! では前金で宜しくお願いします!」
テダは4万レンを支払うと各々部屋に通された。
「あー、久しぶりのベッド……」
俺は目の前に見えたベッドに飛び込んだ。
道中苦労したからかベッドのありがたみを思い出した。
「その前に風呂に入りなさいよ」
「うーん……」
俺はニヤニヤされながらリクと同室となった。首謀者はマーンであることに間違いない。
それでもリクは何も言わなかった。
「眠たいのは分かるけど、風呂はこの時間しか使えないのよ」
その瞬間、俺は体を起こす。
そうだった。此処は王都ではなく、魔法の恩恵を得られないのだ。
「じゃあ先に入るよ!」
「ええ、さっさと入りなさい」
俺はアメニティとして用意されている着替えを持って風呂に入るとシャワーを浴びる。
「あー生き返る‼」
「静かにしなさいー」
「あーごめんー」
リクの口調は優しいものだった。こんな雰囲気本当に久しぶりだった。数日前までのことが嘘かのような気分だ。
そんな和やかな空気に浸っているころ。
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「そう身構えなさんな、中央参謀部特別中隊の少佐殿……」
一人の男がテダの部屋を訪ねていた。
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