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第二章 国家解体
第26話 鉱夫とは
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「まあ信じられないだろうね。私がこのような場所で一人、君たちを出迎えるなんて」
そう言うとマッシュは席を立ちあがると着いて来るように述べる。
「来なさい。ヘレルを案内しよう。君たちはここで長い年月を過ごすのだから」
マッシュはカウンターを上げると俺たちを招き入れる。そのまま部屋の奥へと移動すると、銀行の金庫にあるような大きな扉が見えてくる。
「此処は王国の命だからね。何人たりともこの場所を通らなければ魔導石には到達できない」
マッシュは胸元から鍵を取り出すとゆっくり丁寧に差し込む。
「これは私にしか開けられないのさ。中からは開けられない。私の許可なくばこの場所を出る事すらできない」
「まるで監獄ですわね」
「口差がない者はそう言うね。でもこれは王国にとってなくてはならない。故に安全を守っていると解釈して欲しいのだけどね……」
少し残念そうに話すマッシュだけど、俺も監獄にしか思えない。
重苦しい金属音と共に扉が開く。
するとその先には世話しなく動き回る人々、書類同士がすれる音、電卓を叩く音、ペンが擦れる音が忙しなく響いていた。
「ようこそ、ここがヘレルの庁舎だ」
マッシュは笑みを浮かべて俺たちに話し掛けた。
「あっ、統括! 漸く連れてきてくれたんですか! また油を売って新人を脅していたのではありませんか!」
「そんなことしないよ~」
「そうだよ。統括はドエムなんだから新人が統括の事を貶しているという妄想に恍惚としていたのさ」
「間違っていないね……」
あはは、と笑うマッシュだが俺は若干距離を取った。
「はいはい、統括はカウンターに戻っていいですよ」
「えっ、もっとみんなと一緒に居たいんだけど……」
「統括がいると仕事になりませんからね。ほら、ただでさえ人手不足とストライキで生産が減っているのですから、これ以上邪魔はしないで下さいね」
知事クラスの人間に対し、職員の態度や扱いがぞんざいであったことに驚きを禁じ得ない。
「じゃ、じゃあまたね皆! そうだ、新人のカルン夫妻だ! 皆宜しくしてやってくれー」
職員二人によって元の場所へと戻され堅く扉を閉められてしまった。
「はい、それじゃあ改めて。鉱山ヘレルへ、ようこそ。私は君が所属する事になる現場責任者のドーランという者です」
「初めまして私はユウスケ・カルン。そして妻のエレノア・カルンです」
「うん。すでに書類で確認しています。その通りですね。では早速この場所について説明しましょう」
話は長くなるからと俺たちは部屋へと通された。
「さて、ここが鉱山であることは承知だと思います。鉱夫として働くユウスケ・カルンさんに尋ねます。此処では何をするかご存知ですか?」
簡単だろ。掘って魔導石を取り出す。
「と、考えていますね。ところが残念! はずれでーす‼」
おっさんが腕をクロスさせてバツ印を作るイタさに俺は引いた。
「おっほん。では真面目な話をしますね。此処では手作業で掘ることは致しません」
「はい?」
「簡単に言いますと魔導機具で掘り進めていただきます」
んっ、魔導機器? って、ここで使っていいのかよ。
「それをここで使えるのですか?」
「勿論です。むしろ今まで魔導機器での掘削を行ってようやく生産が維持されていたのです」
俺はそれを使って掘り進めていくのか。確かに予想よりも楽なのかな……
「楽ではありませんよ。なんと言っても生身の人間が魔導機器を扱うのですからね」
その言葉に俺とリッカは顔を見合わせた。
「そうそう。ユウスケさんは魔法使用者ですよね。なら、ほかの鉱夫とは違う働きが出来ると思っていますよ」
「知っていたのですね」
「勿論です。なんと言ってもホーブル卿からのご推薦ですからね。あなた方のことはしかるべき時が来るまでこちらで働いて頂く。ホーブル卿からはその様に伺っております」
そうだった。たしかホーブル閣下はこの都市に居るんだった。それに鉱夫は人気な職なのだ簡単になれるものではないと言われたな。
「怖い顔をしないで下さい。リッカさん。私は敵ではございません。この事を知るのは私と統括の二人だけ。後の人間はあなた方のことを本当の夫婦だと信じています。真実を知る者は少なく、どうぞ鉱夫として、支える妻としての生活をお過ごしください」
「それを信じろとでも?」
リッカの口調は厳しかった。王都でも経験したが、ここでは誰が味方なのか、味方とするべきは誰なのか。その判断を誤った者が没落していく世界を。だからこそ、彼女は目の前の男が信じ切れずにいた。
「信じて頂く術はございません。しかし、この場は私にとっても故郷なのです。あなた方を受け入れるリスクを負っていることを理解していただきたい」
その時話したドーランの目は厳しい世界を渡り歩いた者だった。
「分かりました。ひとまず信じましょう。私とユウスケの事よろしくお願いします」
「納得していただけましたか、こちらこそよろしくお願いいたします。では早速お部屋へとご案内いたしましょう!」
それにしても部下には任せないのかな?
そう思って道中尋ねたところ、任せて採掘時間を喪失させるよりは自らが動いた方が効率良いと語られた。
「そんなに生産に響いているのですか?」
「ええ、何しろ魔導鎧。あれに大量の魔導石が使われましたからね」
嫌味で言っているわけではないことは分かる。それでも敗戦した今となってはここまで影響させた罪悪感は否めない。
「あの鎧にはどれだけ使われていたのですか?」
「私も詳しくは知りませんが、鎧一つで、魔導列車一機分魔導石だそうです」
全部で百二十機分の魔導石か…… もう訳が分からない。
「なので、と言う訳ではございませんが。ユウスケさんには頑張って採掘に励んでください。もちろんお給金に関しては確り支払います。なお、ここではインセンティブが発生するので頑張ってくださいね!」
「はい」
今はとにかく目の前にある事を片付けるだけだ。
そう言うとマッシュは席を立ちあがると着いて来るように述べる。
「来なさい。ヘレルを案内しよう。君たちはここで長い年月を過ごすのだから」
マッシュはカウンターを上げると俺たちを招き入れる。そのまま部屋の奥へと移動すると、銀行の金庫にあるような大きな扉が見えてくる。
「此処は王国の命だからね。何人たりともこの場所を通らなければ魔導石には到達できない」
マッシュは胸元から鍵を取り出すとゆっくり丁寧に差し込む。
「これは私にしか開けられないのさ。中からは開けられない。私の許可なくばこの場所を出る事すらできない」
「まるで監獄ですわね」
「口差がない者はそう言うね。でもこれは王国にとってなくてはならない。故に安全を守っていると解釈して欲しいのだけどね……」
少し残念そうに話すマッシュだけど、俺も監獄にしか思えない。
重苦しい金属音と共に扉が開く。
するとその先には世話しなく動き回る人々、書類同士がすれる音、電卓を叩く音、ペンが擦れる音が忙しなく響いていた。
「ようこそ、ここがヘレルの庁舎だ」
マッシュは笑みを浮かべて俺たちに話し掛けた。
「あっ、統括! 漸く連れてきてくれたんですか! また油を売って新人を脅していたのではありませんか!」
「そんなことしないよ~」
「そうだよ。統括はドエムなんだから新人が統括の事を貶しているという妄想に恍惚としていたのさ」
「間違っていないね……」
あはは、と笑うマッシュだが俺は若干距離を取った。
「はいはい、統括はカウンターに戻っていいですよ」
「えっ、もっとみんなと一緒に居たいんだけど……」
「統括がいると仕事になりませんからね。ほら、ただでさえ人手不足とストライキで生産が減っているのですから、これ以上邪魔はしないで下さいね」
知事クラスの人間に対し、職員の態度や扱いがぞんざいであったことに驚きを禁じ得ない。
「じゃ、じゃあまたね皆! そうだ、新人のカルン夫妻だ! 皆宜しくしてやってくれー」
職員二人によって元の場所へと戻され堅く扉を閉められてしまった。
「はい、それじゃあ改めて。鉱山ヘレルへ、ようこそ。私は君が所属する事になる現場責任者のドーランという者です」
「初めまして私はユウスケ・カルン。そして妻のエレノア・カルンです」
「うん。すでに書類で確認しています。その通りですね。では早速この場所について説明しましょう」
話は長くなるからと俺たちは部屋へと通された。
「さて、ここが鉱山であることは承知だと思います。鉱夫として働くユウスケ・カルンさんに尋ねます。此処では何をするかご存知ですか?」
簡単だろ。掘って魔導石を取り出す。
「と、考えていますね。ところが残念! はずれでーす‼」
おっさんが腕をクロスさせてバツ印を作るイタさに俺は引いた。
「おっほん。では真面目な話をしますね。此処では手作業で掘ることは致しません」
「はい?」
「簡単に言いますと魔導機具で掘り進めていただきます」
んっ、魔導機器? って、ここで使っていいのかよ。
「それをここで使えるのですか?」
「勿論です。むしろ今まで魔導機器での掘削を行ってようやく生産が維持されていたのです」
俺はそれを使って掘り進めていくのか。確かに予想よりも楽なのかな……
「楽ではありませんよ。なんと言っても生身の人間が魔導機器を扱うのですからね」
その言葉に俺とリッカは顔を見合わせた。
「そうそう。ユウスケさんは魔法使用者ですよね。なら、ほかの鉱夫とは違う働きが出来ると思っていますよ」
「知っていたのですね」
「勿論です。なんと言ってもホーブル卿からのご推薦ですからね。あなた方のことはしかるべき時が来るまでこちらで働いて頂く。ホーブル卿からはその様に伺っております」
そうだった。たしかホーブル閣下はこの都市に居るんだった。それに鉱夫は人気な職なのだ簡単になれるものではないと言われたな。
「怖い顔をしないで下さい。リッカさん。私は敵ではございません。この事を知るのは私と統括の二人だけ。後の人間はあなた方のことを本当の夫婦だと信じています。真実を知る者は少なく、どうぞ鉱夫として、支える妻としての生活をお過ごしください」
「それを信じろとでも?」
リッカの口調は厳しかった。王都でも経験したが、ここでは誰が味方なのか、味方とするべきは誰なのか。その判断を誤った者が没落していく世界を。だからこそ、彼女は目の前の男が信じ切れずにいた。
「信じて頂く術はございません。しかし、この場は私にとっても故郷なのです。あなた方を受け入れるリスクを負っていることを理解していただきたい」
その時話したドーランの目は厳しい世界を渡り歩いた者だった。
「分かりました。ひとまず信じましょう。私とユウスケの事よろしくお願いします」
「納得していただけましたか、こちらこそよろしくお願いいたします。では早速お部屋へとご案内いたしましょう!」
それにしても部下には任せないのかな?
そう思って道中尋ねたところ、任せて採掘時間を喪失させるよりは自らが動いた方が効率良いと語られた。
「そんなに生産に響いているのですか?」
「ええ、何しろ魔導鎧。あれに大量の魔導石が使われましたからね」
嫌味で言っているわけではないことは分かる。それでも敗戦した今となってはここまで影響させた罪悪感は否めない。
「あの鎧にはどれだけ使われていたのですか?」
「私も詳しくは知りませんが、鎧一つで、魔導列車一機分魔導石だそうです」
全部で百二十機分の魔導石か…… もう訳が分からない。
「なので、と言う訳ではございませんが。ユウスケさんには頑張って採掘に励んでください。もちろんお給金に関しては確り支払います。なお、ここではインセンティブが発生するので頑張ってくださいね!」
「はい」
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