神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

文字の大きさ
65 / 572
第 五章 王都と陰謀と武闘大会

第 58話 王都と貴族の争い。

しおりを挟む
    出来れば、貴族間の政争には、係わりたくないのだがな。まっ、取り敢えず侯爵様の所にいきますか。


    「閣下、襲撃してきた賊共は全て倒すか、拘束しました。そこで、オオガミ君が恐らく敵のリーダーの所持品からこのような手紙を見つけました。こちらです。」

    ラルフさんが侯爵にリーダーが所持していた、手紙を渡す。受け取った手紙の中を侯爵が読むが、読み終わると侯爵が笑いだした。

『リヒト侯爵一家が王都に向かって来ている。直轄領との境にある森林地帯で奇襲して侯爵と息子二人を殺れやれ。金はいつもの男に持たせてギルドに送る。今回こそはしくじるなよ。』

    「・・・・ハハハ。『今回こそは』ですか。こんな言葉を使うと言うことは、前に最低一回は命を狙ったということだよねぇ。この前の魔物の襲来も、同じ犯人かもね。オオガミ君から聞いた以前リヒトへの魔物襲撃を操っていたらしき黒いローブの仮面の人間のことも考えると根は同一犯かもね。
    いずれにしても、この手紙は私が預かろう。オオガミ君、今回も助かりましたよ。ありがとう。」
「まあ、護衛の依頼を受けていますから。仕事の内ですよ。」
「ふふ、今さらだけど君は本当に敬語が苦手だねぇ。他の貴族に対しては不味いけど、私と話すときは、口調は普通でいいよ。」
「ありがたい。助かる。で侯爵、捕まえた奴等はどうする?馬車の左右の森に隠れていた、弓兵を十人縛ってあるが。」
「勿論、王都に連れていくよ。王都で衛兵に突き出して事情聴取してもらう。リーダーは証人だから取り調べる為にも、王城の地下牢に入れて殺されない様に厳重に見張ってもらう。陛下や宰相にも今回のことは伝えるようにしないと。」
「判った。じゃあ、俺は持ち場にもどるよ。」
「ああ、本当に助かったよ。依頼料に色を付けさせて貰うよ。」

    侯爵に挨拶して持ち場に戻った。侯爵はラルフさんと何か相談していたが、それから三十分程して出発となった。
襲撃者達は列の一番後ろに全員手を後ろ手に縛られ、腰にロープで全員つながったまま、馬車に引っ張られて歩いている。前後左右を騎士に囲まれて逃げられない様に見張られている。

    途中の町で捕まえた賊の手下達を引き渡してから一泊して、いよいよ王都ウェザリエに到着する。さすがお貴族様、顔パスで王都に入れたよ。
門の衛兵に事情を話して、そのまま王城の方向に馬車は向かった。

    初めて見る王都なので、屋台や市場や商店とか色々気になるが、まずは場所の把握だ。

「〈マップ表示・オン〉。これで王都で迷子にはならなくてすむな。」

一人呟いていると、セバスさんが、何かございましたか?と聞いてくるので、笑顔で独り言だといって、軽く詫びておいた。

(いかんな。クセでつい独り言を言ってしまうから、気を付けておかないと。ボッチの悪いクセだな。)

    馬車は王城への道を真っ直ぐ向かっている様なので、セバスさんにこれからどこに行くのか尋ねた。

「セバスさん。このまま行くと王城になるんだけど、どこに向かっているのです?」
「ええ、王都での侯爵家の別邸は王城の横に有りますから、この方向で間違いないですよ。」

なんと、王城の横かい。王制国家では、王城からの距離が権力の大小に比例するから、侯爵様って王国屈指の権力者なのかい?それこそ今更だが、あまり関わらないようにしないとな。

(半分以上遅いかもだが。)

    とか考え事や自分に突っ込みをしている内に王城の城門前に着くと、ラルフさんが呼びに来て、一緒に来るように言う。馬車から降り痛む腰を伸ばしながらラルフさんに着いていく。侯爵一家の馬車とラルフさんの乗る馬だけ王城の中に入って行く。俺はラルフさんの後ろに乗せてもらった。城門も顔パスとは流石に上級貴族だなと、思い知る。

    城の前庭の馬車だまりに一旦止めて、侯爵お一人だけが降りる、ラルフさんも俺も同じくその場に降り立った。そうして、俺たちを残して、走り去る侯爵家の馬車と馬。ご家族は先に別邸に向かうようだ。

「着いてきたまえ。」

    侯爵に促されて、慌てて後を着いていく。ここでも顔パスなのは不思議になってくる。
    広すぎる城内を迷わずに、ある奥まった場所の応接間に連れられて行く。

    部屋の前に立つ騎士から武器を預けるように言われて、バスタードソードを預ける。
ま、インベントリィに剣やナイフなんかが入っているから、構わないがそれはナイショだ。

    侯爵はソファーに座っている。俺も勧められたが、流石に断ったよ。我々が部屋に入ってすぐに、メイドさんがお茶をいれてくれた。俺は壁に掛かっている絵画に目をむける。黒髪黒目の若い男が剣を掲げる姿だった。なんとなく気になったので、小さく鑑定を唱えた。

(鑑定結果・絵画・画題 = 勝利を誓う初代国王だよ・作者 = ナルサスで今から二百八十二年前、王国成立期に製作された物で価値は白金貨十枚はいくね。)

    ほう、初代国王か。見た目は日本人っぽいな。俺の他に転生や転移で来た日本人がいたのかな?以前話した時に初めて転生させた人間だと俺のことを言っていたが、機会があれば神様に他にいなかったか、きいてみるか。

    絵から眼を離し部屋の中に目を向けると、侯爵が俺のことをちょっと驚いた顔で見ていた。

「どうしました?何か俺にありましたか?」
「い、いや、何でもないよ。それと城内で無闇に魔法を使わないようにね。咎められるからね。」

顔を横に振りながら、注意する口調で魔法をここでは使うなと言われた。

「そうでしたか、知らなかったとはいえすみません。気を付けます。」
「うん、そうしてくれ。」

侯爵と話している内に別の扉から人が三人入ってきた。侯爵が立ち上がり迎える。自分もかしこまった。

    「済まないな。遅くなってしまった。さあ、皆座ってくれ。」

    皆、許しを得たのでそれぞれ席に着いた。
    あ~あ、やっぱり会っちゃったよ。多分この人王様で間違いないで。だって、頭に略式の王冠してるからね。
    残り二人は片方は白髪の老人だが眼光が半端ないわ。国王の隣に座るから宰相かな?あと一人は、体格がゴツイ四十代のおっさんだから近衛騎士団長か軍の将軍かな。王様の後ろに立って控えている。

「お久しぶりです、陛下。」
「この場は公式の場ではない。陛下ではなく、昔のように兄さんとよんでくれないかな、アルよ。」
「では、兄さん。急ぎの話しがあって、登城しました。」

    (えー!侯爵様って王弟なの?聞いてねーよ!!)

















    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...