神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十三章 何でも準備中が一番楽しいのさ。

第242話 こんなに忙しい貴族は私だけ?③

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    果物屋に続いて向かったのは八百屋だ。収穫の秋と言うことで、豆類や根菜、葉物野菜キノコ類と種類も数も多い。

    精霊が多く集まっている八百屋を探すと、少し市場の外れにあるお婆さんがやっている露店商があった。

    「いらっしゃい。なんか買っていっておくれ。」
「こんにちは。今は何が美味しいのかな?」
「そうだね。今は根菜ならオオネかな。葉物野菜ならロールやホワイティかな。レタスはもうすぐ時期が終わるしね。豆なら青豆と黄豆だね。」
「シーラ、何が良いと思う?」
「そうですね、ロールは使い勝手が良いですし、ホワイティはシチューや煮物に入れると美味しいですし、オオネは何にでも使えますから、全種類買っても良いと思いますよ。」
「うん、分かったよ。お婆さん、ここにある野菜全部買うよ。」
「ええ??ホントかい。お金は大丈夫なのかい?」
「大丈夫あるよ。おや、店の脇に置かれているのは、芋かな?」

    私が店頭ではなく、店の脇に固まって置かれている茶色い皮の丸っこい塊はどう見ても、ジャガイモである。

「ああ、バロン芋かい?坊っちゃんには奨めないよ。たまに腹痛や腹下しをするからね。貧乏人の食い物さ。」
「お婆さん、それはね。多分日が経つと、芋から芽が出てきてね。芽の部分や芽の出た辺りに毒素が出るんだよ。だから、芽の出ている所をくりぬいて、使えば腹痛にはならないよ。」
「ええ?!それ本当かい?本当なら皆助かるよ。本当はこれからの時期は、バロン芋が一番の旬なんだよ。」
「じゃあ、このバロン芋も全部下さい。」
「ありがとよ、坊っちゃん。端数はおまけするよ。全部で銀貨四十枚だ。」

インベントリィから出した銀貨を渡す。

「こんなに一度に売れたのは、初めてだよ。孫にお土産でもかっていくかね。」

代金を手に、嬉しそうに微笑んでいる。
片っ端からインベントリィに入れて行くのを見て、それまでの笑顔が口を開けたままの驚きの顔になっていたが、構わす買った野菜を仕舞っていった。

    「お婆さん、助かったよ。有難う。」
「こちらこそ、ありがとうよ。さあ、今日はもう店仕舞いだね。」

    大量の野菜を買った次は、肉屋に向かう。
肉屋が並んでいる近くに来ると、途端にアルメイダが興奮してきた。

    「ショウ兄ちゃん、お肉を買うのかにゃ?」
「ああそうだよ。果物、野菜と来たら、次は肉でしょ?」
「兄ちゃん一杯買って欲しいのにゃ。」
「アルは肉好きだなぁ、相変わらず。美味しいのが売っているといいね?」
「さあ、早く行くにゃ。」

アルに腕を捕まれ引っ張られていく。

    当たり前と言うか、精霊は肉屋の側には少なかった。どうしても、獣や魔物の肉を扱う訳なので、血生臭い為か自然と他の業種より瘴気が多いみたいだ。冒険者ギルドのあの倉庫と同じ理屈だな。
何軒か並んでいる肉屋の中で、何故か瘴気が無い店があった。
気になったので、その店に入る。

    「あい、いらっしゃい。何が欲しいのかな?」

    綺麗な白衣を着ていて、店も綺麗に掃除されていて、気持ちの良い店だ。
店主のガッチリした体格の中年男性が愛想よく聞いてくる。

    「おじさん、お奨めは何かな?」
「お奨めかい?今日だと、ワイルドボアのロースと肩肉。あと、山鳥の新しいのが入ったし、魔物ではオークナイトの肉が入ったよ。」
「へぇ、良い肉が揃っているね?」
「当たり前よ。どうせ食うなら旨い肉が良いだろうが?」
「あはは、確かにその通りだ。じゃあ、ワイルドボアのロースと肩肉をそれぞれ百キロずつと、山鳥を肉に処理して貰ったのを有るだけ全部、オークナイトの肉も五十キロ頼むよ。」
「おいおい、金はあるのかい?そんなに買って。」
「大丈夫だよ。全部でいくらなんだい?」
「そうだな、・・・・鳥の処理代はオマケしてやるとして、金貨五枚だ。」
「ハムは扱っているかな?」
「もちろんあるぜ、一本銀貨七枚だ。買っていくかい?」
「じゃあ、十本頼むよ。」
「なら、合計で金貨五枚と銀貨七十枚だ。」
私がインベントリィからお金を出して渡す。
肉屋の主人はニッコリと笑い受けとる。

    「鳥の処理に少し時間がかかるから、一時間程後に鳥肉を受け取りに来てくれるかい?先にワイルドボアとオークナイトの肉は渡しておくから。用意するから少し待っていてくれ。」

そういって、店の奥に入っていく。

「兄ちゃん、兄ちゃん。お肉を一杯買ってくれたのかにゃ?」
「ああ、心配するな。一杯買ったからね。今日の夜はステーキにしてもらおう。」
「やったにゃ~!」

嬉しさの余りか、いつものように両手を上にあげて変な躍りをしている。喜びの踊りなのだろう。

「なあ、アル。その躍りはなんなのかな?」
「にゃ?これかにゃ?」
「うん。」
「これは、お母さんから教わった『歓喜』の踊りにゃ。嬉しいことがあったら、踊りなさいって教わったにゃ。」
「そうか、嬉しいか?」
「嬉しいにゃ!兄ちゃん有難う。」

私に抱きついて、頭をグリグリ押し付けてきた。
私はアルの頭を撫でてやると、顔をあげてニパッと笑う。
そんな事をしていると、奥から主人が肩に肉を担いで持ってきた。

「おう、まずはワイルドボアとオークナイトの肉だ。納めてくれ。」

店のカウンターに下ろすとドサッと音がした。

「じゃあ、ハムの用意と鳥の処理をしているから、一時間後また来てくれ。」

そういって、また店の奥に入っていく。
主人が見えなくなった所で、肉をインベントリィに仕舞う。

「皆、鶏肉の用意が出来るまで、屋台で時間を潰すよ。この街の屋台は旨いからね。楽しみにいてくれ。」

そう言って皆を連れて、店を出る。

    いつもの屋台が集まっている場所に向かう。そうすると、いつもの肉串の良い香りがしてきた。
アルメイダの尻尾が立ち上がりピンと伸びる。顔は屋台を探しているのか、忙しなく動いて鼻をひくつかせている。

「皆、こっちだ。」 

皆を連れて肉串の屋台に向かう。

    「おっちゃん!肉串おくれ。」
「おお、冒険者の坊主か。久しぶりだな。またリヒトに戻ったのか?」
「ああ、食料の買い出しでね。それでまた五十本焼いてくれるかな?皿はここにあるから。」
「おう、用意がいいな。分かったよ、五十本だな。代金は銀貨十二枚と銅貨五十枚だ。」

おっちゃんに銀貨十三「」枚わたすと、お釣りを貰った。

「じゃあ、早速焼くから、出来たら呼ぶからよ。近くで待っていてくれ。」
「分かったよ。皆、出来るまで時間がかかるから、他の屋台を見ていこうか?」
「分かったにゃ。」

    こうして、肉串が焼き上がるまで、他の屋台を見て回ることになった。


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