神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

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第十四章 イーストン解放編

第270話 イーストンの状況、そして始める一歩。

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    オサフネは、一瞬話し難そうにしながらも、ポツポツとミカワの事を話始める。

    「ミカワは元々マツダイラ家が領主を務めていた街なのですが、街がヒラドに近いこともあり、代々親将軍派の諸侯の家でした。実際世嗣ぎの守役に選ばれるなど、他のイーストン西部の五つの諸侯の中では筆頭と長年の間、見られていた家でした。
    それも八年前の帝国の侵略で一変したのです。当時、外敵の侵略と言うことで、イーストン西部の六つの街全てが将軍家を中心に纏まり戦いました。その声かけをしたのがマツダイラ家なのです。序盤はその為かイーストンが優勢でした。そのまま帝国を押し返すことができていたなら、イーストンは占領されることは無かったと思いますが、対帝国戦で優勢だった事で、先代の将軍が傲ったのです。帝国に対して優勢なのは全て自分の将軍としての功績であると勘違いし、自分の力量のお陰であると傲り高ぶつたのです。恐らくは当時既に名前だけであった将軍職をこれを機会に諸侯に対して覇権を確立させようとしたのでしょう。そして、マツダイラ家もその動きに同調したのです。
    勝った戦後であればまだしも、帝国との戦の最中にそんなことを他の諸侯に対して行えば、六都市連合が分裂するのは当たり前のことです。
その後はアッと言う間でした。将軍家とマツダイラ家と他の四家の諸侯との不仲を帝国に知られ、帝国からの謀略で敵対心を煽られるあおられるとそれぞれ孤立した各軍勢を各個撃破されてしまい、イーストン西部は帝国の物になったのです。その後直ぐに一度将軍家の生き残りの長子が、反抗を試みるも、誰も手助けする者はなく見捨てられ、反乱は帝国軍に潰されてしまい、将軍家の末っ子の若を残して他は全て死罪となったのです。
    以来、八年間イーストンの西部の民には、アオイ家に対して、今の状況は全てアオイ家のせいだと恨む者が大勢いるのです。なので、若が静かに生きていくなら問題ないとは思いますが、ミカワでアオイ家やマツダイラ家の名前を使って兵を募ろうとしたら、恐らく恨みを抱く領民に帝国に売られ捕まり、今度は死罪となるかその場で民に恨みで殺されるかする可能性が高いと思われます。」
「そうか。まあ、生きるも死ぬも本人次第だな。その危険性はマツダイラの爺様にキツく言ってあるからな。その上でどうするかなんて、後は本人の責任さ。他人から助けて貰うのは当然なんて、もしも思っているなら、現実の厳しさを思い知るだろうさ。ま、我々にはもう関係ない事だ。それよりも、オサフネお前の家族を助け出さないとな。ヒラドに住んでいるのか?」

    未だに旧主への想いが残っているのだろう。心配だと言っている二人の気持ちを切り替えるために、話題をオサフネの家族救出に反らす。

    「オサフネ、君の家族は今、どの様な状態なんだ?」
「はい、拙者が地下活動をしているらしいと、帝国側に知られているらしく、いつ連絡があるかと一日中密偵に監視されている状態です。なので、現在は接触は避けています。下手に近づくと、逆に家族を巻き込みかねないのです。」
「成る程ね。オサフネの家族と言うと、何人いるのかな?」
「はい、父母弟夫婦と子供そして拙者の妻と子です。」
「全部で何人だい?」
「変わりが無い限りでは、七人になるかと。」
「七人なら一度に移動できるな。わかった。この後ちょっと調べてから、夜にでも早速実行するぞ。」
「有難うございます。」

    「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・カンザブロウ・オサフネの一家〉。おっ、出た。」
マップ上に黄色く点灯する光点が、七つ現れる。

「〈サーチ・オサフネ家を監視する帝国の密偵〉。」
すると、オサフネ一家の家の表と裏に二人ずつ赤い光点が現れる。どうやら人の出入りを見ているようだ。
赤い光点の一つを指差し、呪文を唱える。
「〈鑑定・赤い光点〉。」
(鑑定結果・名前はテルムネ・ハットリ元イーストンの諜報部隊『お庭番』の一員。戦後奴隷狩りに会い奴隷兵士となる。状態・奴隷(隷属先ゴール)。)

    ほう、どこか聞いたような名前の諜報員達だ。
他の三名も奴隷諜報員だった。カツゾウ・モチヅキ、ゲンイチ・スギヤマ、サイゾウ・ヤマモト。四人ともイーストンの民で将軍家に仕えていたが、八年前の戦の後に奴隷狩りで捕まり、奴隷兵士とされたようだ。
隷属先に書かれている名前に見覚えがあるな。
また、あの帝国の情報部のヤツか。
    やはり、前線に帝国兵を移動させて、属領内は奴隷兵士で固めてきているようだね。次の兵糧の輸送前に駐留軍を潰して領事を捕まえて独立宣言だな。
そうなると、やはり明日はスメラギ家に談判しに行かないとな。日程に間に合わなくなる。早目に手を打つか。

    「オサフネ、まだ昼間だが、動くことにした。」
「え、どう言うことですか?」
「監視している者は四名いるが、四名とも奴隷兵士なので、、隷属魔法から解放してやれば、こちらの味方になる。後は堂々と会いに行って事情を説明すれば良い。分かったな?」
「え、今一つよく分からないのですが、直ぐに行動する訳ですね?」
「ああ、そうする。時間が勿体ないからな。」
そう伝えると、呪文を唱える。
「〈マルチロック〉〈スタン〉。」
四つの赤い光点が動きを止める。
「〈マルチロック〉〈テレフォン〉。」
(あーあー、私の声が聞こえているかな?)
(誰だ?)
(何者?)
(敵か?
(う、動かん。)
(取り敢えず私の話を聞け。私は仮面剣士。イーストン西部の解放者だ。君達に掛けられている隷属魔法から解放してあげよう。その後は私達に協力して貰えるだろうか?返事を貰いたい。)
(本当に奴隷から解放してくれるのか?)
(ああ、間違いない。ただ、我々の活動に協力してほしいだけだ。どうだ。)
(奴隷から解放してくれるなら、手を貸そう。)
(俺も貸すぞ。)
(私もだ。)
(本当に解放してくれるなら貸すぞ。)
(期間は、イーストンが帝国から独立宣言するまでだ。その間の食事等の経費はうちが持つ。手を貸してくれるか?)

『承知!』
全員一致で了解がとれる。

    「〈マルチロック〉〈ディスペル〉、〈マルチロック〉〈キュア〉。」
(・""あああ!奴隷紋が消えている。解放されたのか?)
(お、本当に消えているぞ。)
(本当だ。)
(体の痺れも消えているぞ。)

    「もう、大丈夫のようだな。これからそちらに行く。今後の事について、少し話そう。では、後程。」

一旦〈テレフォン〉を切ると、オサフネに告げる。

    「監視者を解放したから、お前の家族に会いに行くぞ。」
「な、なんと真ですか?」
「ああ、時間も勿体ないから急ぐぞ。」

    こうして、護身用の短剣と仮面を身につけて、オサフネは家族の元に、私は解放した監視者達に会うために、パーシモン商会の別館から出掛けることにした。





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