神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ

文字の大きさ
487 / 572
第十九章 ケルン掌握。

第384話 平和への一歩。①

しおりを挟む
    日が明けて、朝飯を食べてから冒険者スタイルに着替えると忘れ物が無いことを確認してから諜報のハミルトン隊長をはじめケルン出身の四人を執務室に呼び出す。

「ハミルトン隊長、朝早くから済まないね。」
「いえ、構いません。所で我々は何をするのでしょうか?」
「ああ、その事なんだか、私はこの後トングーに一旦移動する。そこから北上してチトー王国内を通り、ケルンに入る。君達には先にケルンに先行してもらい、そこでの道案内と現地の情報収集を頼みたいのさ。なにせ初めて行く場所だからね。周辺の様子も全く知らないからね。その辺詳しく教えて欲しいのさ。頼めるかな。」
「それで、もしケルンで例の地下組織が接触してきたら、如何されますか?」
「ハッキリと言っておく。今回の作戦は、国としとの仕事だからね、私情は挟まない。クロームガルド公爵の邪魔となれば、潰すし、邪魔しないならばそのまま放っておくだけだ。まあ、潰すと言っても、リーダーの元侯爵だったかな?彼に責任を取って貰うだけだがな。その時は自分が手を下すよ。」
「責任?」
「ああ。祖国を崩壊に導いた責任さ。俺に言わせれば、有罪だな。ソイツが知らん顔で国の再興を言うなんて、俺なら許さないな。責任を取って貰う。」
「殺すのですか?」
「ふっ、そいつは天罰で雷にでも打たれるかもしれないね。たとえ屋内にいてもね。フフフ。」

私の様子に、顔色を悪くして聞き入っている。四人だった。真面目な顔をして、ハミルトンが懇願してきた。

「閣下。お願いが有ります。どうか他の者には手を出さないで下さい。お願いします。」

頭を下げながら、私に言ってくる。

「・・・元侯爵以外は手を出さないさ。それは約束するよ。」
「よろしくお願いします。別れたとはいえ、元同朋ですので。」
「分かっているさ。じゃあ、旅の用意をしてまた、ここに集まってくれ。」
「承知しました。行くぞ皆。」

こうして、旅の用意をしてから、再び執務室に集まる。

「これからトングーに向けて〈テレポート〉を行う。初めての体験かも知れないが、驚かないように。では、行くよ。〈マルチロック〉・・・〈テレポート〉。」

事前に覚悟を決めていたが、それでも驚きのあまり呻き声をあげてしまう同行者達だった。

「はい、到着っと!」
「うお!本当に転移したようだ。」
「本当にここはトングーなのか?」
「騒ぐな!閣下申し訳ありません。」
「まぁ、初めてだから仕方ないよ。今後は注意してくれよ。」

 

 周りを確認すると、そこは以前に見覚えのある、港の近くの路地だった。目の前には冒険者ギルドの建物があり、前に来た時に比べて、多くの冒険者が出入りしていた。
人種も様々で外から見ても活気があるのが分かる。
とても二月前からは想像出来ない賑やかさだ。

「じゃあ、ここで分かれて皆は先行してくれるか?」
「はっ!ケルンでお待ちしています。それでは行くぞ!」
『はっ!』

 ハミルトンともう一人だけ残すと、他の者達は先に進んで行った。三人を見送ってから、レナード達が来ているのか確認しに、港の様子を見に行った。

 船が来たか調べるために、船着き場に向かう。そこには着いたばかりなのか、何艘も商船が船着場にいて、丁度レナード達も船か下船するところだった。

「おーい、レナード!ご苦労様。」
「うん?あ、閣下お着きでしたか。」
「なに私も今着いたところさ。長旅ご苦労様。皆元気かな?船酔いとか出なかったかい?」
「船酔いですか?始めの頃はいましたが、流石にみんな慣れたようで、いまは全員大丈夫です。」
「そうか。馬を下ろしたら早速北上するぞ。大丈夫か?」
「大丈夫です。行けます。」
「では降りた者から馬の準備をしろ。閣下達の分も有りますので、使って下さい。」
「ありがとうレナード。」

 下ろし始めた馬から一頭を受け取り、首筋を撫でてから、鞍を着けて準備をする。少し疲れているようなので、魔法で体力を回復する。

「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・ツールから来た人と馬〉表示青。」

目の前に映るマップには合わせて二百十の青い光点が映る。

「〈マルチロック〉表示青。〈リジェネレーション〉。」

自分を含めて味方全員に魔法が発動した。

あっちこっちで驚きの声が上がる。馬も驚いたのか、少し暴れるが直ぐに大人しくなった。

「閣下今何を?」

レナードが慌てて問いかけたので答える。

「馬達も含めて皆を元気にしたのさ。これで疲れも無く出発できる。」
「成る程。しかし、やる前に一言言って欲しかったですな。」
「すまない、レナード。」

こんな事をしている内に、全員の準備も整った。

「閣下、全員準備整いました。」
「よし、出発するか。」
「しゅっぱーつ!」

 町にある三つの門の内、北門を総勢百人を超える騎馬が隊列を組んで通る。門を通るとき仮面を忘れずに身につけておく。

「待て、お前達は何者だ?」

守衛に止められ、誰何される。

(ちゃんと仕事はしているね。)

「これを。」

 私は事前に貰っていた大統領から貰った書状を取り出すと守衛に渡した。
何事かと、受け取った書状を開けて読むと、その守衛は顔色を変えて慌てて敬礼してから書状を返してきた。 

「申し訳ありません。『仮面の閣下』とお仲間でしたか。どうぞお通り下さい。」
「有難う。ご苦労様。行くよ皆。」
「はっ!」

 こうして無事に門を抜けて、チトー王国へ向かう街道を馬に乗りながら進む。

道案内にハミルトンともう一人いるケルン出身の者が先頭にたって進んだ。

「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・我々に敵対するモノ〉表示赤。」

    山勝ちの地形の中を一本道が北に谷間を縫うようにして延びている。
山の奥等の人が入らなそうな奥地にモンスターの反応がある。しかし、道沿いにはモンスター反応は見えなかった。
雰囲気は日本の木曽の谷間を思い出させる景観だった。

 初日、ここまでは何事もなく予定通り進んだ。夜になる前にキャンプの準備をして火を焚き、夜番を決めると、焚き火の回りに集まり、各々 手分けして簡単な即席スープと黒パンをだして食べた。
周囲から話し声が聞こえる。

「あー、そろさろ旨い食事がしたいなぁー。」
「そうだな。ここ一週間は船旅のせいで、まともな食事をしてないよな。こうして考えるとウチの騎士団って旨い食事を出してくれるよな。知り合いに聞いたけど、王国軍の食事でも、ウチの騎士団程の食事は出ないらしぞ。」
「へーえ、それを考えるとウチの閣下に感謝だな。」
「いや、全くだな。」

何気なく聞こえたが、明日の食事から何とかしてやろうと思い付いた。
早々と食事を済ませると、テントに入り、魔法を唱える。

「〈リターン〉。」

屋敷の執務室に転移すると、明かりをつける。それから呼び鈴を鳴らす。
暫くしてからサウルが慌てて入ってきた。

「旦那様お帰りでしたか?」
「急で済まんな。実はこれから三日間、夕方の食事を毎日百五人分頼みたい。屋外で手軽に暖かく食べられる物を頼みたくてな、急いで帰って来た。人数が多いが頼めるかな?」
「分かりました。料理長に早速申し付けます。」
「では、明日の夕方に取りに来るから、用意をして置いてくれ。頼んだよ。」
「畏まりました。」
「では、私は戻るから後はよろしく。〈テレポート〉。」

 テントの中に戻ると、〈シェルター〉の魔法を念の為にかけておく事にする。
焚き火の近くにいき、魔法を唱える。

「〈シェルター〉。」

 少し多めに魔力を込めて半径百メートル、キャンプ地全体をカバー出来るだけの広さを覆い尽くすようにかける。

 何をしているのかと不振に思っている者もいたが、さっさとテントに戻り、絨毯の上でマントにくるまってさっさと寝いった。
明日は早起きだしね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...