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第十九章 ケルン掌握。

第385話 平和への一歩。②

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    昨日は何事もなく無事に明けた。
目を覚まして、〈クリーン〉をかけて、身だしなみを整えるとテント出る。
 
 久々に野宿したよ。絨毯があるとはいえ、身体中が痛かった。背伸びすると、体の間接がポキポキ鳴った。普段から硬いヘッドで寝てないから仕方がないが、取り敢えずテントや絨毯を纏めてからインベントリィに仕舞う。
食事までまだ間があるから、辺りを調べる事にする。


「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・盗賊のアジト〉。」

マップが更新される。しかし、地図には対象が映し出されなかった。

「へぇー。この周辺にはいないのか。治安が良いのかな。まぁ、助かるけど。」

今度は対象を変えて唱えた。

「〈サーチ・魔物〉。」

再び更新される。今度は割りと街道の近くまで餌を求めてなのか反応があった。

「こっちは近くまでいるね。場合によっては殲滅しないとな。まぁ、要注意だね。」

こうして、周囲を調べていると、レナードが呼びに来る。

「閣下、お早うございます。簡単ですが朝の食事です。あと暫く行くと砦があり関所となっています。如何します?」
「ああ。それは任せてくれ。我々は冒険者の一団と言うことでこれから契約先の商家に護衛に向かうと言って通るから。」
「成る程。承知しました。皆にも通達しておきます。」
「ん、よろしく。行こうか。」

焚き火の跡で、輪になって座り、スープと黒パンの質素な食事を済ませると、テント等を片付けをして、それを馬にくくりつけて出発する。

    出発して一時間もしない内に砦が見えてきた。通過口には兵士らしき者が四人立っており、四人共に槍と革鎧で武装していた。

「止まれ!お前達は何者だ。手形や許可証が有れば見せよ。」

隊長らしき人が、言ってくる。

「ご苦労様です。我々は『真理の剣』という傭兵団です。こちらがギルド証とセイト政府発行の通行許可証です。改めた下さい。」

そう言うと、インベントリィからギルド証と書状を取り出して渡す。

「なんだと!ランクAだと。セイト政府というと、最近帝国から独立した都市だったな。そこの発行なら信用できるか。用件はなんだ?」
「護衛契約している相手の所に向かっている所です。」
「若いのに、大した物だな。この先はチトー王国だ。街道沿いなら襲われる事は無いだろうが、くれぐれも騒動は起こさない様にな。行って良いぞ。」
「有り難うございました。」

ギルド証と書状を返して貰い、懐に入れる振りをしてインベントリィに仕舞う。馬に乗り後続に声をかける。

「よし。出発だ!」
「出発ーつ!」

レナードが復唱して、全体が動き出す。


    門では兵士達が、今通っていった一団について話をしていた。

「今の集団は冒険者との事だが、確かに凄腕が揃っていたな。」
「本当ですか隊長?」
「ああ、一人一人が隙がなかったな。あんな奴らを雇えるとは、よっぽどの大きな商家だろうよ。」
「あの代表者らしき子供はどうでしたか?俺が見るに大したことは無いようですが?」
「お前はまだ見る目が甘いな。それだけの猛者達が黙って従うのだぞ。しかもあの提示されたギルド証見たか?」
「ギルド証でしか?いえ、そこまでは詳しくは見てないですが。」
「馬鹿者!あれはAランクとあったわ。」
「Aランクですか?」
「そうだ。国に認められた証だ。あの子も只者ではないな。お前はもっと人を見る目を磨けよ。」
「はぁ。頑張ります・・・。」


そんな事を言われているとはつゆ知らずに、無事にチトー王国内に入り込んだ。

「閣下、この後は如何されますか?」
「そうだね。ハミルトン隊長!」
「ご用でしょうか閣下?」
「チトー王国に入ったけど、この後はどう動いたら良いかな?」
「あと三日でケルンに着く為には、今日中に南の町カロと王都のチトーを抜けて北の街のガサに今日中に着かないと厳しいですね。急ぎましょう。」
「分かった。全体、馬足を速めろ。」
「馬足速めーい。」

ハミルトンこ案内によって、全体のスピードが速められる。砦を通過して直ぐに前方に壁に囲まれた町が見えてきた。我々はその町を左手に見ながら通り過ぎ更に北へ向かう。

 砦での兵士の話の通り、街道の治安は良いようで盗賊は勿論魔物の姿一匹も見ないままに次の王都のチトーを過ぎる。流石に一旦休みとして馬を休ませると同時に休憩とした。

「しかし、この国はキチンとしているな。街道で盗賊は勿論、魔物さへ現れないとはな。その割には街道を行き交う人が居ないな。ハミルトン、何か知っているかい?」
「はぁ、恐らくですが帝国の影響で最近までケルンにもトングーにも商品を輸出出来ない所為かと思います。チトー王国としては、都市同盟の他の三国に商品を回さざるを得ないですから、この先に左に別れる道がありますから、商人は皆そちらに向かっているのでしょう。」
「成る程ね。そうするとトングーが独立した事を伝えた方が景気が良くなるかもしれないね。チトー王国に噂を流しておこうか。ハミルトン頼めるかい?」
「はっ、早速。マイヨいるか?」
「はっ、隊長ご用ですか?」
「お前は、この国で商人のふりをして一週間滞在しろ。そしてトングーが帝国から独立して再び輸出が以前のように自由に出来ると言う噂を国中に流せ。いいな?」
「承知しました。隊長は?」
「このままケルンに向かう。お前も噂を流し終えたら、合流せよ。良いな?」
「分かりました。早速向かいます。」
「あ、ちょっと待って。これを渡しておくよ。」

私は早速行こうとする彼を引き留めると、懐から金貨十枚を取り出して渡す。

「活動資金だ。急な任務だからね、渡しておくよ。有効に使うこと。」
「有り難うございます。」
「閣下有り難うございます。」

ハミルトンとマイヨ二人ともに礼を行って受け取る。そして道を南に戻っていった。

「これでトングーも栄えるね。回り回ってツールも扱う商品が増えてウチも儲かると。」
「流石閣下。お見それしました。」
「良い。それではそれでは出発しますか。騎乗!」
「休憩修了。騎乗せよ!」

    号令に従い、騎士団一行は馬上の人となり、再び北の街のガサに向かい始める。
夕方には街に着く為に足を速めて一路北を目指す。






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