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第十九章 ケルン掌握。
第386話 平和への一歩。③
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「あれがガサか。思っていたよりは大きくないね。あ~流石に長い騎乗でお尻が痛いな。しかし、ここに百人も泊まれる宿があるかな?」
「閣下、いっそ我等は街の外で野宿しますから、閣下だけでも街の宿に泊まられては如何です。」
「おいおい、これでもわたしは冒険者の端くれだぞ。私だけが宿に泊まるなんて出来ないさ。あと夕食は私に任せて貰えるかな?」
「は?何のことですか?」
「詳しくは後のお楽しみだ。明日はケルンに入るからね。少し栄養を着けておかないとね。キャンプ場所と私の馬はレナードに任せるよ。」
「はぁ、分かりました。」
「では、行ってくる。〈リターン〉。」
魔法が発動して、何時ものツールの執務室に戻っていた。
早速呼び鈴を鳴らすと、さほど待たずにサウルが現れる。
「サウル、昨日言った様に、夕食を取りに来た。用意は出来ているかい?」
「勿論でございます。食材と食器類は兵舎で使っている物をご用意しました。こちらへどうぞ。」
厨房に案内されてサウルについていくと、料理長達が手を止めて頭を下げて迎えてくれた。
「ご苦労様。気にせずに仕事をしてくれ。どれが我々の食事かな?」
「はい、こちらの物となります。」
そこには大きな寸胴鍋と料理が入った持ち運びの出来る四角い形をした鍋が置いてあった。その脇には、料理を盛る皿にスープを入れる木製の椀と金属のフォークが人数分揃えてあった。
「良し。では、済まぬが明日も頼むよ。これで彼奴等にも、久々に温かい飯を食わせてやれる。皆ご苦労様。」
礼をしながら、用意された物を片っ端からインベントリィに仕舞っていく。
そして、収納が済むと、厨房から出て、サウルに挨拶してからみんなと別れた場所へと〈テレポート〉した。
「よし、到着と。彼奴等は先に進んでいるのかな?〈マップ表示・オン〉〈サーチ・ツール騎士団〉。」
マップで現在の居場所を探すと、少し北に向かった場所で野宿の用意をしていた。
「お、少し離れているな。急がないとね。」
足元に『気』を纏い、一行のいる場所に向かって走り出した。
本人は気にしていないが、もしこれを見ていた人がいるのなら、オオガミの姿は外からは消えて見えたはずだ。
馬よりも速いスピードで僅か一分足らずの内に、キャンプしている場所に着いた。
「ふぅ。間に合ったようだな。レナードは居るかな?」
レナード探すと、私のテントの用意をしていた所で、終わったのか、慌ててこちらに向かって走ってくる。
「閣下、お戻りになったのですか。」
「何か私のテントまで用意をして貰って済まないね。」
「いえ、従者として当然です。それで、閣下は何をしに?」
「ふふふ喜べ。今日明日の夕食はウチの厨房で作った物だ。これで騎士達の不満も収まるだろう。飯は士気に関わるからね。」
「有り難うございます。皆も喜びます。早速、伝えて来ましょう。」
暫くすると、ウォー!という歓声が上がるのが聞こえた。
(やっぱり、飯は士気に関わるよな。これで百人の士気が上がるなら安い物だよな。)
焚き火をたく場所に行って積んである焚き付けに生活魔法のファイアを唱えると薪に火を着けた。
テントや馬の世話が済んだ者が早速寄ってくる。
私はテーブルを取り出して、その上に食器類とスープの鍋と料理が入った四角い鍋をインベントリィから取り出す。
時間経過が止まっているために、スープや料理は出来立ての熱々だった。
何時もより、やたらと素早い準備で既に列を作っている。
粗方の者がならんだので、食事を配り始めた。
騎士団の各団員がスープの椀と料理の皿を手にして、順番に並んで料理やスープ、黒パンを受け取っていく。
今回はクリームシチュウにステーキとボリュームの内容だ。ここの所十日近く粗食だったのか、皆の目の色が違っている。こんな時は黙って手早く給仕するにかぎる。ひたすらに配った後に自分の分を盛り付ける。
一人分余っているが、黙っていた。取り合いになるのは目に見えるからね。
「頂きます。」
ステーキをパンに挟んでから、齧りつこうとすると、あちらこちらから、騎士達の歓声というか雑談が聞こえてくる。
「ウチの閣下は、飯については拘るねぇ。他は厳しいけど、飯は上等な物を出してくれるからね。普通遠征中に料理は出ないからな。」
「いや、全くだよね。」
「これで、あと酒でも付いたら最高なんだけどなぁ。」
「ほら、軍務中だぞ。贅沢は言うな。飯だけでも干し肉と黒パンだけでない分有り難いぞ。」
「まぁ、そうなんだけどさ。」
また一方では。
「くーっ、旨いなぁー。久々のまともな飯だ。」
「まぁ、ウチの騎士団は飯には力入れているからな。」
「船旅の間は、干し肉と黒パンだけだったからな。精々果物が一つ付いている位だったから、まともな食事は久しぶりだな。」
「他の所では、アレが普通だからな。贅沢を言ったらダメだ。」
「そうなんだよなぁー。この騎士団に入ってから、口が贅沢になったようだぜ。」
「ほらっ、さっさと食べてしまおうぜ。」
「そうだな。」
聞き耳を立てているわけではないが、耳に入ってきた。初めての遠征で、軍用の保存食に飽き飽きしていた様だね。
喜んで貰えて用意したかいがあったよ。
食後に、鍋や食器類を纏めてインベントリィに片付けると、レナードに声をかけて屋敷に〈リターン〉して戻る。厨房に洗い物として返し、料理長に礼を言ってから、再び〈テレポート〉でキャンプしている場所に転移した。
設営して貰ったテントに潜り込むと、寝るまで暇になった。
「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・私達に敵対するもの〉。」
マップは更新されたが、何の反応もないようだ。
「おや、意外と近い場所にケルンとの国境検問があるようですね。これは砦かな?まあ、何れにしても、公爵から渡された通行許可証で通れるだろう。ここには何人駐屯しているのかな?〈鑑定・黄色光点〉と。」
(鑑定結果・対象はチトー王国ケルン王国国境のケルン王国側検問所です。常時五十人衛兵が駐屯してます。最近は風紀が改善されており、トラブルにはなりにくいけど、皇帝派兵士が居るようなら注意が必要よ。)
「なに?面倒臭いな。行く前にもう一度調べておきますか。居るようなら、魔法で消し去るだけだな。後は知らん顔で通そう。」
黒い考えをしてから、その日はマントにくるまって絨毯の上にに寝転がった。
「閣下、いっそ我等は街の外で野宿しますから、閣下だけでも街の宿に泊まられては如何です。」
「おいおい、これでもわたしは冒険者の端くれだぞ。私だけが宿に泊まるなんて出来ないさ。あと夕食は私に任せて貰えるかな?」
「は?何のことですか?」
「詳しくは後のお楽しみだ。明日はケルンに入るからね。少し栄養を着けておかないとね。キャンプ場所と私の馬はレナードに任せるよ。」
「はぁ、分かりました。」
「では、行ってくる。〈リターン〉。」
魔法が発動して、何時ものツールの執務室に戻っていた。
早速呼び鈴を鳴らすと、さほど待たずにサウルが現れる。
「サウル、昨日言った様に、夕食を取りに来た。用意は出来ているかい?」
「勿論でございます。食材と食器類は兵舎で使っている物をご用意しました。こちらへどうぞ。」
厨房に案内されてサウルについていくと、料理長達が手を止めて頭を下げて迎えてくれた。
「ご苦労様。気にせずに仕事をしてくれ。どれが我々の食事かな?」
「はい、こちらの物となります。」
そこには大きな寸胴鍋と料理が入った持ち運びの出来る四角い形をした鍋が置いてあった。その脇には、料理を盛る皿にスープを入れる木製の椀と金属のフォークが人数分揃えてあった。
「良し。では、済まぬが明日も頼むよ。これで彼奴等にも、久々に温かい飯を食わせてやれる。皆ご苦労様。」
礼をしながら、用意された物を片っ端からインベントリィに仕舞っていく。
そして、収納が済むと、厨房から出て、サウルに挨拶してからみんなと別れた場所へと〈テレポート〉した。
「よし、到着と。彼奴等は先に進んでいるのかな?〈マップ表示・オン〉〈サーチ・ツール騎士団〉。」
マップで現在の居場所を探すと、少し北に向かった場所で野宿の用意をしていた。
「お、少し離れているな。急がないとね。」
足元に『気』を纏い、一行のいる場所に向かって走り出した。
本人は気にしていないが、もしこれを見ていた人がいるのなら、オオガミの姿は外からは消えて見えたはずだ。
馬よりも速いスピードで僅か一分足らずの内に、キャンプしている場所に着いた。
「ふぅ。間に合ったようだな。レナードは居るかな?」
レナード探すと、私のテントの用意をしていた所で、終わったのか、慌ててこちらに向かって走ってくる。
「閣下、お戻りになったのですか。」
「何か私のテントまで用意をして貰って済まないね。」
「いえ、従者として当然です。それで、閣下は何をしに?」
「ふふふ喜べ。今日明日の夕食はウチの厨房で作った物だ。これで騎士達の不満も収まるだろう。飯は士気に関わるからね。」
「有り難うございます。皆も喜びます。早速、伝えて来ましょう。」
暫くすると、ウォー!という歓声が上がるのが聞こえた。
(やっぱり、飯は士気に関わるよな。これで百人の士気が上がるなら安い物だよな。)
焚き火をたく場所に行って積んである焚き付けに生活魔法のファイアを唱えると薪に火を着けた。
テントや馬の世話が済んだ者が早速寄ってくる。
私はテーブルを取り出して、その上に食器類とスープの鍋と料理が入った四角い鍋をインベントリィから取り出す。
時間経過が止まっているために、スープや料理は出来立ての熱々だった。
何時もより、やたらと素早い準備で既に列を作っている。
粗方の者がならんだので、食事を配り始めた。
騎士団の各団員がスープの椀と料理の皿を手にして、順番に並んで料理やスープ、黒パンを受け取っていく。
今回はクリームシチュウにステーキとボリュームの内容だ。ここの所十日近く粗食だったのか、皆の目の色が違っている。こんな時は黙って手早く給仕するにかぎる。ひたすらに配った後に自分の分を盛り付ける。
一人分余っているが、黙っていた。取り合いになるのは目に見えるからね。
「頂きます。」
ステーキをパンに挟んでから、齧りつこうとすると、あちらこちらから、騎士達の歓声というか雑談が聞こえてくる。
「ウチの閣下は、飯については拘るねぇ。他は厳しいけど、飯は上等な物を出してくれるからね。普通遠征中に料理は出ないからな。」
「いや、全くだよね。」
「これで、あと酒でも付いたら最高なんだけどなぁ。」
「ほら、軍務中だぞ。贅沢は言うな。飯だけでも干し肉と黒パンだけでない分有り難いぞ。」
「まぁ、そうなんだけどさ。」
また一方では。
「くーっ、旨いなぁー。久々のまともな飯だ。」
「まぁ、ウチの騎士団は飯には力入れているからな。」
「船旅の間は、干し肉と黒パンだけだったからな。精々果物が一つ付いている位だったから、まともな食事は久しぶりだな。」
「他の所では、アレが普通だからな。贅沢を言ったらダメだ。」
「そうなんだよなぁー。この騎士団に入ってから、口が贅沢になったようだぜ。」
「ほらっ、さっさと食べてしまおうぜ。」
「そうだな。」
聞き耳を立てているわけではないが、耳に入ってきた。初めての遠征で、軍用の保存食に飽き飽きしていた様だね。
喜んで貰えて用意したかいがあったよ。
食後に、鍋や食器類を纏めてインベントリィに片付けると、レナードに声をかけて屋敷に〈リターン〉して戻る。厨房に洗い物として返し、料理長に礼を言ってから、再び〈テレポート〉でキャンプしている場所に転移した。
設営して貰ったテントに潜り込むと、寝るまで暇になった。
「〈マップ表示・オン〉〈サーチ・私達に敵対するもの〉。」
マップは更新されたが、何の反応もないようだ。
「おや、意外と近い場所にケルンとの国境検問があるようですね。これは砦かな?まあ、何れにしても、公爵から渡された通行許可証で通れるだろう。ここには何人駐屯しているのかな?〈鑑定・黄色光点〉と。」
(鑑定結果・対象はチトー王国ケルン王国国境のケルン王国側検問所です。常時五十人衛兵が駐屯してます。最近は風紀が改善されており、トラブルにはなりにくいけど、皇帝派兵士が居るようなら注意が必要よ。)
「なに?面倒臭いな。行く前にもう一度調べておきますか。居るようなら、魔法で消し去るだけだな。後は知らん顔で通そう。」
黒い考えをしてから、その日はマントにくるまって絨毯の上にに寝転がった。
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