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二章 天遊林の日常
3.紫薇という侍女
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閨を囲む紗の帳の向こうから、朱華を呼ぶ声がする。
「――様、陶妃様。お目覚めのお時間ですわ」
「ん……ありがとう。今、起きるわ……」
今朝は炎俊は隣にはいない。皇宮の表でやることがあったのだとかで、そちらに泊っているのだ。だから奴に気兼ねすることなく、思い切り手足を伸ばすこともできる。猫に似ているかもしれない動きで伸びをしてから、朱華は紗を開いた。
「おはようございます、陶妃様。今日もお美しくていらっしゃいますこと」
そこにいたのは、清水を貼った盥を捧げ持って微笑む侍女だ。朱華を称える言葉を述べる癖に、この娘自身も整った顔立ちをしている。
紫薇という名のこの侍女こそ、最初の朝に峯とやり合っていた舌のある使用人──つまりは、口が利けても主の秘密を漏らすことはないと、信用されている者だ。
「いちいちお世辞なんて言わなくて良いのよ。これから、綺麗にしてくれるのでしょう?」
この娘も炎俊に秘密を握られているのか、それとも何か信用を勝ち取ることができる秘訣のようなものがあるのか、朱華はまだ聞くことができないでいる。
「はい、それはもう。今日は『外』の方々にも見ていただくのですもの、腕が鳴りますわ」
少し構えた、試すような物言いをしてみても、紫薇のにこやかな笑顔は変わらない。まるで、朱華に仕えるのが喜ばしくて堪らないとでもいうかのよう。朱華が陶家の雪莉姫なんかではなく、身代わりの偽者に過ぎないともう知らされているはずなのに。天遊林にいる者の考えることも振る舞いも、やはり訳が分からなくて今ひとつ信じられないのだ。
* * *
紫薇の給仕で朝食を終えた朱華は、やはり紫薇の手によって身支度を整えられている。陶家はいまだに星黎宮から締め出されたきりだけど、衣装と装飾品は惜しみなく届けられている。とはいえ今日は他の宮の妃たちと会う訳ではない。外――つまりは、天遊林を出て、皇宮の表の部分に呼び出されるのだ。
「天遊林の外に出られるのね。知らなかったわ……皇子の妃だと緩いのかしら?」
天遊林は後宮の一角にある。一度足を踏み入れた以上はよほどのことがない限り出られないのかと思っていたのだけれど。
「長春君様にお着換えをお届けしますの。その輿の中に潜んでいただくことになりますわね。……だから、簡単には崩れないようにお髪を整えないと」
朱華がふと呟いた疑問に、紫薇は色とりどりの簪を見比べながら答えた。長春君とは、近しい使用人が親しみを込めて皇族を呼ぶ時の尊称、らしい。長春花──四季を通して咲く薔薇に喩えて、永の繁栄と長寿の願いを込めての呼び方だとか。
(あいつは、殺しても死ななさそうな気がするけどね)
何を考えているか分からない「夫」の、見た目だけは麗しい微笑みを思い出すと、つい心中で悪態を吐いてしまう。でも、間違った考えなのは分かっている。低言い争いの中で立ち居振る舞いを誤れば、皇子だからといって身の安全が保証されるとは限らないのだ。
だから、朱華は皇宮についての知識を得ようと侍女に問いを重ねる。
「その輿は視られはしないの? 皇子の遣いだと素通りできるのかしら……?」
陶家で厳しく躾られたと言っても、上辺だけのことだったのを痛感し始めているところだった。長春君の呼び方を今まで知らなかったように、朱華は皇宮では世間知らずも良いところだ。炎俊よりは話しやすい紫薇とふたりきりのうちに、情報を集めておきたかった。
(この娘を信用するかどうかは、また別だけどね)
「そうですわね、皇宮の門という門に遠見の者が控えているという話ですけれど――」
朱華が品定めの目で見ていることに気付いているのかいないのか、紫薇はおっとりとした表情を浮かべたまま忙しく口と手を動かしている。種々の宝石で作られた簪を朱華の頭に当てては首を傾げているのは、輿に潜む際に傷ついてしまうのを懸念しているのかもしれない。最終的に選ばれたのは、絹で作った花を連ねた飾りだった。金糸銀糸を織り込んだ生地の輝きや精巧な造りの花びらは、宝石に比べても決してみすぼらしいものではない。ようやく満足したのか、紫薇はやっと朱華の問いに答えてくれる。
「多分、視えたとしても気付かない振り、なのでしょうね。お妃やお気に入りの女君を間近に置きたがるのは、いつの御代もよくあることだと聞きますから」
天遊林だけでなく、政務の場所でも女を欲しがる皇子もいるということらしい。紫薇は具体的なことは言わなかったけれど、困ったような微笑で見事に意図を伝えてくれた。
「でも、炎俊――我が君は違うでしょう。『そういう』目的で私を呼ぶのではないわよね。何の用なのかしら」
「それは、長春君に直接お聞きしてくださいませ。私の考えなど浅慮に過ぎませんもの」
朱華の髪型を整え終えた紫薇は、次は化粧に取りかかろうとしている。だから、朱華とは正面から目を合わせる格好になった。この娘も遠見なり時見なりの力を持っているのか、それすらも朱華は知らないのだけど――妃に選ばれた自身の力を、主として遇される立場を信じて、目と言葉に力を込める。
「貴女の考えが聞きたいの。教えてちょうだい」
依頼の形を取ってはいても、実質的には命令だった。それに、実験でもある。雑談に応じてくれるだけではなく、この娘は主の妃に従う意思があるのかどうかを試すのだ。
突きつけた問いをはぐらかすようなら、紫薇も峯と同類、朱華をまともに扱う気はないということだ。仕える相手が陶家か炎俊かの違いだけで、いずれにしても頼りにすることなどできはしない。
(頼りたいとは、思っているのよ……?)
炎俊も、他の宮の妃たちも。真意を疑って常に目を凝らすのは疲れるものだから。紫薇に朱華を偽る意図がないと、信じることができればどれほど助かるだろう。
朱華の真剣さが通じたのかどうか。紫薇は手を止めると、女主人――今は、形だけの――の目を真っ直ぐに覗き込んできた。黒々とした目は、やはり穏やかに微笑んでいる。
「私は、ずっと貴女様のような御方が来てくださるのをお待ちておりました」
「へ?」
「長春君様にはお心を打ち明けられる方が誰もいらっしゃらなかったものですから。心を許せるかもしれない御方が来てくださって、本当に、良かった……」
「答えになっていないし、私はあいつに心を許してなんかないわ。あっちだって、そうよ」
碌な説明もなしに碧羅宮の茶会に放り込まれた件を、朱華はまだ許していない。陶家とのやり取りも遮断されたままだし、これではまるで籠の鳥だ。
「無理もないことです」
紫薇は痛ましそうな表情で眉を寄せて頷いて見せた。殊勝な態度は演技かもしれないけれど、少なくとも強く出づらくなるのは確かだった。
固く結んだ朱華の唇に、筆で紅が乗せられていく。反論できない隙に、とでもいうのか、紫薇はまた笑顔を纏いなおしていた。
「ですから、早く仲良くなっていただくのがよろしいかと思います。長春君様も、きっとそのように思われているのでしょう。だから、表でのお顔も見せてくださるのだと思いますわ」
あの女と仲良く、なんてあり得ないと思う。でも、紫薇の笑顔も言葉も優しいから、つい、記憶の底から炎俊の声を掘り起こしてしまう。
『頼りにさせておくれ』
朱華を疑い侮る言葉だと思っていた。まだ頼りにするには足りないのだと暗に言われているのだと思っていた。でも、今さっき朱華が紫薇に対して思ったように、信じたいという思いも入っていたりするのだろうか。それにしては傲慢な物言いだとは思うけど。
(でも、皇族なんて口の利き方を知らないものでしょうしね)
「……我が君様は私と仲良くしたいと思ってくださっているの? 本当に?」
「ええ、きっと」
唇から筆が離れたのを見計らって、そっと口を開く。不信をはっきりと声にまぶしていたのに、紫薇は自信たっぷりの表情で頷いた。炎俊がどうというよりも、その迷いない笑顔のために――少しは「夫」を信じてみようか、という気になれるかもしれなかった。
「――様、陶妃様。お目覚めのお時間ですわ」
「ん……ありがとう。今、起きるわ……」
今朝は炎俊は隣にはいない。皇宮の表でやることがあったのだとかで、そちらに泊っているのだ。だから奴に気兼ねすることなく、思い切り手足を伸ばすこともできる。猫に似ているかもしれない動きで伸びをしてから、朱華は紗を開いた。
「おはようございます、陶妃様。今日もお美しくていらっしゃいますこと」
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「いちいちお世辞なんて言わなくて良いのよ。これから、綺麗にしてくれるのでしょう?」
この娘も炎俊に秘密を握られているのか、それとも何か信用を勝ち取ることができる秘訣のようなものがあるのか、朱華はまだ聞くことができないでいる。
「はい、それはもう。今日は『外』の方々にも見ていただくのですもの、腕が鳴りますわ」
少し構えた、試すような物言いをしてみても、紫薇のにこやかな笑顔は変わらない。まるで、朱華に仕えるのが喜ばしくて堪らないとでもいうかのよう。朱華が陶家の雪莉姫なんかではなく、身代わりの偽者に過ぎないともう知らされているはずなのに。天遊林にいる者の考えることも振る舞いも、やはり訳が分からなくて今ひとつ信じられないのだ。
* * *
紫薇の給仕で朝食を終えた朱華は、やはり紫薇の手によって身支度を整えられている。陶家はいまだに星黎宮から締め出されたきりだけど、衣装と装飾品は惜しみなく届けられている。とはいえ今日は他の宮の妃たちと会う訳ではない。外――つまりは、天遊林を出て、皇宮の表の部分に呼び出されるのだ。
「天遊林の外に出られるのね。知らなかったわ……皇子の妃だと緩いのかしら?」
天遊林は後宮の一角にある。一度足を踏み入れた以上はよほどのことがない限り出られないのかと思っていたのだけれど。
「長春君様にお着換えをお届けしますの。その輿の中に潜んでいただくことになりますわね。……だから、簡単には崩れないようにお髪を整えないと」
朱華がふと呟いた疑問に、紫薇は色とりどりの簪を見比べながら答えた。長春君とは、近しい使用人が親しみを込めて皇族を呼ぶ時の尊称、らしい。長春花──四季を通して咲く薔薇に喩えて、永の繁栄と長寿の願いを込めての呼び方だとか。
(あいつは、殺しても死ななさそうな気がするけどね)
何を考えているか分からない「夫」の、見た目だけは麗しい微笑みを思い出すと、つい心中で悪態を吐いてしまう。でも、間違った考えなのは分かっている。低言い争いの中で立ち居振る舞いを誤れば、皇子だからといって身の安全が保証されるとは限らないのだ。
だから、朱華は皇宮についての知識を得ようと侍女に問いを重ねる。
「その輿は視られはしないの? 皇子の遣いだと素通りできるのかしら……?」
陶家で厳しく躾られたと言っても、上辺だけのことだったのを痛感し始めているところだった。長春君の呼び方を今まで知らなかったように、朱華は皇宮では世間知らずも良いところだ。炎俊よりは話しやすい紫薇とふたりきりのうちに、情報を集めておきたかった。
(この娘を信用するかどうかは、また別だけどね)
「そうですわね、皇宮の門という門に遠見の者が控えているという話ですけれど――」
朱華が品定めの目で見ていることに気付いているのかいないのか、紫薇はおっとりとした表情を浮かべたまま忙しく口と手を動かしている。種々の宝石で作られた簪を朱華の頭に当てては首を傾げているのは、輿に潜む際に傷ついてしまうのを懸念しているのかもしれない。最終的に選ばれたのは、絹で作った花を連ねた飾りだった。金糸銀糸を織り込んだ生地の輝きや精巧な造りの花びらは、宝石に比べても決してみすぼらしいものではない。ようやく満足したのか、紫薇はやっと朱華の問いに答えてくれる。
「多分、視えたとしても気付かない振り、なのでしょうね。お妃やお気に入りの女君を間近に置きたがるのは、いつの御代もよくあることだと聞きますから」
天遊林だけでなく、政務の場所でも女を欲しがる皇子もいるということらしい。紫薇は具体的なことは言わなかったけれど、困ったような微笑で見事に意図を伝えてくれた。
「でも、炎俊――我が君は違うでしょう。『そういう』目的で私を呼ぶのではないわよね。何の用なのかしら」
「それは、長春君に直接お聞きしてくださいませ。私の考えなど浅慮に過ぎませんもの」
朱華の髪型を整え終えた紫薇は、次は化粧に取りかかろうとしている。だから、朱華とは正面から目を合わせる格好になった。この娘も遠見なり時見なりの力を持っているのか、それすらも朱華は知らないのだけど――妃に選ばれた自身の力を、主として遇される立場を信じて、目と言葉に力を込める。
「貴女の考えが聞きたいの。教えてちょうだい」
依頼の形を取ってはいても、実質的には命令だった。それに、実験でもある。雑談に応じてくれるだけではなく、この娘は主の妃に従う意思があるのかどうかを試すのだ。
突きつけた問いをはぐらかすようなら、紫薇も峯と同類、朱華をまともに扱う気はないということだ。仕える相手が陶家か炎俊かの違いだけで、いずれにしても頼りにすることなどできはしない。
(頼りたいとは、思っているのよ……?)
炎俊も、他の宮の妃たちも。真意を疑って常に目を凝らすのは疲れるものだから。紫薇に朱華を偽る意図がないと、信じることができればどれほど助かるだろう。
朱華の真剣さが通じたのかどうか。紫薇は手を止めると、女主人――今は、形だけの――の目を真っ直ぐに覗き込んできた。黒々とした目は、やはり穏やかに微笑んでいる。
「私は、ずっと貴女様のような御方が来てくださるのをお待ちておりました」
「へ?」
「長春君様にはお心を打ち明けられる方が誰もいらっしゃらなかったものですから。心を許せるかもしれない御方が来てくださって、本当に、良かった……」
「答えになっていないし、私はあいつに心を許してなんかないわ。あっちだって、そうよ」
碌な説明もなしに碧羅宮の茶会に放り込まれた件を、朱華はまだ許していない。陶家とのやり取りも遮断されたままだし、これではまるで籠の鳥だ。
「無理もないことです」
紫薇は痛ましそうな表情で眉を寄せて頷いて見せた。殊勝な態度は演技かもしれないけれど、少なくとも強く出づらくなるのは確かだった。
固く結んだ朱華の唇に、筆で紅が乗せられていく。反論できない隙に、とでもいうのか、紫薇はまた笑顔を纏いなおしていた。
「ですから、早く仲良くなっていただくのがよろしいかと思います。長春君様も、きっとそのように思われているのでしょう。だから、表でのお顔も見せてくださるのだと思いますわ」
あの女と仲良く、なんてあり得ないと思う。でも、紫薇の笑顔も言葉も優しいから、つい、記憶の底から炎俊の声を掘り起こしてしまう。
『頼りにさせておくれ』
朱華を疑い侮る言葉だと思っていた。まだ頼りにするには足りないのだと暗に言われているのだと思っていた。でも、今さっき朱華が紫薇に対して思ったように、信じたいという思いも入っていたりするのだろうか。それにしては傲慢な物言いだとは思うけど。
(でも、皇族なんて口の利き方を知らないものでしょうしね)
「……我が君様は私と仲良くしたいと思ってくださっているの? 本当に?」
「ええ、きっと」
唇から筆が離れたのを見計らって、そっと口を開く。不信をはっきりと声にまぶしていたのに、紫薇は自信たっぷりの表情で頷いた。炎俊がどうというよりも、その迷いない笑顔のために――少しは「夫」を信じてみようか、という気になれるかもしれなかった。
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