父を助けに18年

クルミ

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第8話

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「つまりは18年前に行くっていうこと!」

総治さんは言った。

「もしかして、タイムスリップするの?」

私は聞いた。

「そうだよ。18年前へ行って当時の悠人君に会って、何とかして病院で検査を受けさせるんだ。検査を受けて腫瘍が見つかれば治療することになるから。」

「タイムスリップって漫画や映画ではあるけど、実際にはできないんじゃないの?」

ママは言った。

子供の私でもそう思う。

「確かに今のところ少なくとも実例は公表されていない。
でも、僕は長年、独自にタイムスリップを研究してきたんだけど、何とか理論上はできる方法を見つけたんだ。あくまでも理論上なんだけど、ほぼ間違いなくできると思う。」

「実験はしたのか?」

将也さんが聞いた。

「それが、タイムスリップするのに必要なエネルギー源がごく微量しかなくて、まだ実験が出来ていないんだ。」

「そのエネルギー源って何なんだ?」

「佃海岸の砂浜で取れる青い砂鉄なんだけど、これがなかなか見つからなくて、この10年くらいで採取した分でも、10g程度しかない。計算上は18年前に行って現代へ帰ってくるための1往復分だよ。ちなみに僕はこの青い砂鉄を『ブルーメタル』って呼んでいる。このブルーメタルには人のイメージを増幅する力があるんだ。それを利用してエネルギーにするんだ。」

佃海岸にそんな砂鉄があったんだ。

「うーん。難しいことは分からないけど、1往復ぶんのエネルギーしかないんだな?」

将也さんは分かったような分かってないような感じだ。

「タイムマシーンに乗って行くの?」

私は聞いた。

「タイムマシーンではあるんだけど、雪愛ちゃんがイメージしてるような乗り物型ではないよ。僕が作ったスマホ型の装置を使うんだ。さっき話した『ブルーメタル』をこの中にエネルギーとして入れる。」

意外と小さな物なんだな。

「仮にその18年前に行くとして、何人まで行くことができるのかな?」

ママはまだ半信半疑な感じで聞いた。

「それなんだけど、この中で行けるのは雪愛ちゃんだけだよ。」

「えっ!?私だけ?1人で!?」

「うん…。そうなんだよ…。」

「えっ!?何でなの!?」
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