天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!

蛇ノ眼

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第二章『魔物のハーレムを作りたい!』

第6話「本編スタート」

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「せんぱーい!」

 ウィンは声の主に振り返った。
 長い廊下を、まるで犬のように駆けて来るルートの姿があった。
 ルートが犬の獣人なら、尻尾をブンブン振り回している事だろう……とウィンは思う。

「五月蝿いのが来たぞえー」
「やっと面倒な式が終わったのに……」

 ルートはウィンの前まで駆け寄ると、一旦息を整えた。
 そしてキラキラした目でウィンを見て言う。

「先輩!ご卒業おめでとうございますっ!」
「わざわざそれを言いに来たのですか?」

 ウィンとルートが出会った試験の日から、更に1年が過ぎウィンは卒業の日を迎えていた。

「今日は下級生の授業は無かったですよね?」
「はい!どうしてもお祝いのお言葉をお伝えしたくて!だって……ご自宅まで押しかけたら迷惑ですよね?」
「ええ」
「そんなハッキリと……」
「そもそもルートにとっては別にお祝い事じゃないですよね?」
「そんな事!ついに俺の尊敬するウィン先輩が正式なテイマーとしてご活躍するんです、嬉しいっすよ……はい」

 ルートの顔はみるみる沈んだ。

「なんだこのガキ?言ってる事と態度がチグハグぞえ?」
「嬉しいです、でも……明日から学校で先輩に会えないのかと思うと……」
「というか、学校で会えんかったらドコでも会えんぞえ」
 
 ピリオドの言葉にルートの顔はみるみる青くなる。

「え……せ……先輩」
「普通に考えたらそうですよねぇ~?」
「…………」
「ルートにわざわざ会う理由も無いですし」
「……………………」
「でも、ルートに用事は無いですが学校にはたまぁ~に用事がありますので」
「!」
「まぁ運が良ければ会えるんでは無いですかぁ~?」

 尻尾があればブンブンしているに違いない勢いでルートは喜んだ。

「このガキ解りやすいぞえ~」




「ちょっと邪魔なんだけど」

 廊下で立ち話をしていた2人に、後ろから不機嫌な声がかけられた。

「あ!すいませ……あ……カレット先輩」

 現れたのはウィンの同級生カレットと、その使い魔である兎の獣人リーダだった。

「クソ生意気コンビぞえ」

 ピリオドの言葉にリーダの黒く長い耳がピクリと動いた。

「あ、カレット先輩もご卒業おめでとう御座います」
「誰?」

 カレットは不機嫌な顔を見せながら、腰に手をやり高圧的な態度でルートを見据える。

「お嬢様、彼の名前はルート。学年内ではトップの成績保持者です」

 リーダは白い手袋の手で、眼鏡をくいっと上げながら答えた。

「ああ、あの竜と契約してるっていう?」
「あ……はい」
「竜は?いないの?」
「えっと……チビは騒がしいのが苦手みたいで、学校には着いて来たがらないっす」
「そりゃそうね、竜なんか連れてたら皆好奇の眼差しよね」

 ルートは痛いところを突かれたように、視線を地に落とした。

「ほんと、少し珍しい魔物を連れてるってだけで煩くて面倒よね」
「あ……そうっすよね……カレット先輩も」

 ルートはリーダに視線を向けた。在学中に獣人を連れていれば目立つのは事実だった。
 次にカレットの視線がウィンに向けられた。

「ウィン、貴方の顔を今日で見なくてよくなると思うと清々するわ」
「私はとても悲しいですよ……」
「え!?ウィン先輩……カレット先輩の事……」
「だってぇぇー!リーダさんに会えなくてなるなんてっ!寂しい!寂しくて兎さんのように死んでしまいますー!」

 ウィンはリーダに熱い視線を送った。
 リーダはゴミムシを見るような目でウィンを見返した。

「その目……たまらない……カレット!お願いしますっ!ピリオドとリーダさんを交換してくださいっ!」
「何回言うのよ!それっ!無理に決まってるでしょ!」
「このカラスこう見えて結構凄いんですよ」

 ウィンはカレットにピリオドをズイッと差し出す。

「そうぞえ!俺様すごいぞえー!そんな偉そうなだけの兎とは訳が違うぞえ!」
「なっ!」

 リーダとピリオドの間に殺気が走った。

「バッカじゃないの!?私は強さや珍しさでリーダを所持してるんじゃないわっ!……お父様の形見だからよっ!」

 騒がしかった場がシンと静まった。

「そうよ……そのためだけにこんな学校にも通ったの。私は卒業してもリーダ以外と契約する気も無い」

 ルートは何か言いたそうな顔を見せる。
 カレットはウィンとルートを押しのけるように廊下を歩き出した。

「さようならおバカさん達」

 カレットはそう言い残すと、リーダと共に去って行く。

「形見だから所持?……」

 その背を、複雑な表情で見てルートは呟いた。
 

 ――――――


 その後、ウィンは足早に自宅を目指していた。

 4年間席を置いた学校だが、未練など全く無かった。
 カレット同様『魔物と契約を結ぶ地位を法的に得るため』だけに通った場だったからだ。
 なので、ルートが言っていた『テイマーとして世間が期待するような活躍』などウィンにはやる気も無い。
 ウィンがテイマーとしてが叶えたい夢はただ一つだった。

「ここからです……ここから私の『魔物ちゃんハーレム計画』が本格始動するのですっ!本編スタートですっ!」

 そう、ウィンの夢は愛する魔物に囲まれて、皆で幸せに過ごす事だった。
 
「やぁ~と『契約できる魔物は1体』という縛りから解放されましたからね」
「やっぱりウィンはこうで無いといかんぞえ!人間に囲まれている時はテンションが下がりすぎてて面白く無いぞえ!」


 ウィンは屋敷に戻ると不要な荷物を置き、すぐに庭に出た。
 
「で!?何を捕まえるぞえ!?」
「そりゃ最初は可愛い獣人に決まっていますっ!」
「獣人って、あの生意気兎の種族かえ」
「そうですそうです、意思疎通が出来て触れて愛でれる可愛い魔物ちゃん代表です」
「可愛くないオッさんの獣人はどうするぞえ?代表ぞえ?」
「獣人にオッさんはいませんし、可愛くない獣人もいません!」
「なんで断言するぞえー?」
「 『そういう種族』 だからですよ」
「ほえ?」
「まぁ!難しい話は置いて置いて……とりあえず行動ですっ!」
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