天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!

蛇ノ眼

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第五章『最大の厄介事開始!それは謎の招待状から始まった』

第61話「晩餐会開始」

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 扉は見た目に反して重さは無く、フワリと羽が開くようにウィンとシャープを迎え入れた。
 
 目の前に広がった部屋は白一色。2人は眩しさを感じて目を細める。
 部屋の中央には白い大理石で作られた長い机。その上には豪華な食事や酒、色とりどりのフルーツが並べられている。

 上座に1人の人物が立っていた。2人の姿を確認すると、胸に手を当て丁寧に頭を下げる。
 
 「初めましてクォートです。ウィン、君がここに来てくれると思っていたよ」

 ウィンも同じように丁寧なお辞儀を返す。

 「クォートさん初めまして、ウィンと言います。セディユから聞いていた通り、お美しい方ですね」

 クォートは微笑む。
 ウィンの斜め後ろに立つシャープが胸を押さえる。クォートの笑顔にはそれほどの破壊力があるのだ。
 何もかもセディユから聞いていた通りだった、ただ一点を除いて。

「本当にお美しいですね……特に、その『漆黒』の翼」

 そう、クォートの翼は純白でなく、漆黒だった。だが、ビロードのように輝く翼は美しい事に変わりはなく、ウィンは溜息交じりに見惚れていた。

「そうだろう?ボクも気に入っているんだ」

 そう言ってフワッと両の翼を広げて見せる。
 陶器のように白い本体に漆黒の翼が広がる。それはまるで天使のようにも悪魔のようにも見えた。いや、もはやどちらでも無い存在と言った方がいいだろう。

「堕天使……という存在で合っていますか?」
「それでいいよ。ボクはその呼び方あまり気に入ってはいないけど」
「確か、天使が堕天使になる条件は悪魔の体液を取り込む事……でしたっけ?」
「そう、それで合ってる」
「では、クォートさんは悪魔とそうなるような事を?」
「そうだよ」
「それは、望んで?それとも……」
「ふふふ、ボクの『恋バナ』に興味津々と言う感じだね。じゃあ食事でもしながらゆっくり聞かせてあげるよ」

 そう言うとクォートは2人に席を進める。

「待てや……俺らはアンタとゆっくり食事しに来たんちゃうねん。まずチルダを眠りから覚まさせぇ」
「ああ、それなら君達が部屋に来た時点で解いているよ。今頃目を覚ましてるんじゃないかな」
「なんやて!?」
「チルダには悪い事をしたと思っているんだ……でも、そうしないとウィンは来てくれないから……」

 クォートは居た堪れないように顔を伏せる。

「せやったら、後はお前を一発ぶん殴って帰るだけや!」

 そう言ってシャーと尻尾を逆立てる。

「まぁまぁ、シャープ。少し話を聞きましょうよ、カレットとの約束もありますし」
「あ……」

 思い出したように動きを止めるシャープ。

「そうか……そうやったな。嬢ちゃん必死やしな……」

 カレットとの会話を思い出して大人しくなる。

「おい、お前。願いを叶えるとかいう話が嘘やと解ったら、一発ぶん殴って即帰るからな」
「それでいいよ」

 

 クォートの向かいの席にウィン、シャープはその斜め前に着席する。

「では、晩餐会を始めよう……と、その前にボクの『大切な友達』も呼ばないとね」

 クォートはそう言うと、シャープの前の誰も着席していない席に視線を向ける。
 すると誰も居なかったその席に、セディユが突然現れる。

「え!?」

 セディユは状況が把握出来ないと言うように、ウィンとシャープの顔を交互に見る。

「ウィンにシャープ……無事でしたか、この状況は……」

 そこまで言うと上座に座るクォートの存在に気が付く。

「ク……クォート……やはりあなただっ……」

 言葉を区切る。いや区切ると言うよりも呼吸が止まったという感じだ。

「クッ……クォート!あなた!?……その……翼……」

 席からガタリと立ち上がったセディユ。その顔は蒼白し、ガタガタと震え出す。

「うそ……うそだと言って下さい……これは夢なんですよね……?」
「セディユ、現実だよ」

 クォートは優しく笑む。
 それを見たセディユはストンと元の席に落ちるように腰を下ろし「ウソ……ウソです……うっ……うぅ」そう呟いてポロポロと涙を零した。

「セディユさん……」

 シャープはオロオロとしながら声をかける。

「ナゼですか……?あの美しかったあなたが……なぜ……そんな……」
「おぞましい姿に?」

 あえて言わなかった言葉をクォート自身に言われてセディユはハッと顔を上げる。

「ねぇ?ウィン、君はボクの姿を開口一番どう言ってくれたっけ?」
「美しいと言いました」

 その返しに、セディユは反論する。

「それは!ウィンは美的感覚がズレているからで!私の姿ですら最初から美しいと……」
「私の美的感覚ってズレているんですかぁ?どう思います?シャープ」
「え?う~ん……頭はおかしいけど、ソコはまだまともっちゅーか……だってセディユさんは綺麗やし……」

 次にその視線をクォートに移して「腹立つけど、あいつも綺麗は綺麗やな」とフンッと鼻を鳴らす。

「いえ!そういう問題じゃ無くて!天使が黒い翼になるという事はとても忌まわしい事で……」
「悪魔とのコミュニケーションですよね。それが忌まわしいのですか?」
「そりゃ!だって悪魔ですよ!?人間でもなのに、悪魔だなんて!」

 セディユはハッとして口を噤む。

「クスクス……セディユは相変わらずなんだね。その『天界族至上主義』」
「…………」
「人間や悪魔は下等。枠にハマっていない形は問答無用で不細工……」

 その言葉にセディユは唇を噛む。

「セディユ、キミは家畜のように扱われていながら、それに気が付く事も無く飼い主である天使を妄信していたね」
「!そ……そんな、私は飼われてなんて……」
「ああ、知らなかったよね?天界族として恥ずべき存在の褐色の天使。なぜ駆除もされず施設に閉じ込めておくのか」
「慈悲です。たとえこのような姿でも同族の命を奪う事などしない……それが天界族の誇りだからです」
 
 凛とした態度で返すセディユ。

「でもセディユ。あなたを天界から追ってきた筋肉ダルマ天使、あなたの命を本気で取ろうとしていましたが?」

 セディユと出会った日の事を思い出すようにウィンが返す。

「あ……あれは……私が天界を脱走したからで……私は収容されていた身なのです、その私が脱走したのですから……悪いのは私なのです」
「クスクスクス」

 心底可笑しそうに笑うクォート。

「クォート、何が可笑しいのですか?私は……天界からあなたが消えたと聞いて、人間界に行けば会えるのでは……と思って」
「それだよ。別に理由なんかなんでもいいんだよ、あいつ等はね『だから処分した』っていう建前が欲しいだけなんだよ」
「え?」

 クォートは両の手を広げて、使を取ると続ける。

「『褐色の天使は不吉で呪われた存在。ですが天界族の慈悲の心で命を奪いなど致しません』って言っておけばなんか誇り高いだろ?セディユがそう感じたように」

 畳みかけるような言葉に、セディユは言葉を返せずにいる。

「でもさ、本当は邪魔なんだよ。だから処刑されても致し方ない状況を作るのさ……たとえば、下界に降りる事が出来る穴の近くに収容する。しかもその穴の警備はガバガバって感じでね」
「そんな……」
「そう、ついでにもう1つ。唯一下界からの侵入を許してしまう穴だろ?そこにあえて施設を作ったのは、侵入者にまず君達をぶつけて時間稼ぎするためさ」
「え……」
「キミ達はそうとも知らず、天界族の誇りを目を輝かせて語っていたね」
「……」
「ああ……本当に愚かだよセディユ……いいや、天界族は」

 そういうクォートの笑顔はそれまで見せていた光り輝くものではなく、ドロドロとしたどす黒さを感じるものだった……
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