もち妖怪もちっこ夫婦

荒井 恵美

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もちっともち妖怪

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「のう、母さんや、今日も、ケンタは元気かのう?」
「あらあら、お父さんったら、そんなに気になるなら様子をみてきたら、どうですか?」
「ケンタは、わしら、もち一族のもちっこを
食べてるからの、元気に育つさね」

そう、私達夫婦は、もちの妖怪じゃった。
もちっこ、という。
昔は人間の子供たちにも、もちっこを
わけていたけれど
この時代、人間はわしらがみえぬように
なってしもうた。

「さてと、今日も、ケンタの様子を
見に行くとするかの」
重いもちの腰を、ねばーっとのばして
準備運動をした。
「母さんの体もやわらかいが、わしも
なかなかのものじゃろう?」
お父さんは今日のねばりに、気分をよくしていた。
「私も準備運動しなくちゃねぇ」
お母さんは、ぷんっとほっぺを
ふくらませ、ぷんぷん踊りをした。
ぷく~っと、ほどよいもちっこが出来あがった。

「さあ、出来立てをケンタへもっていこう」

葉っぱでできた家を出て、森へむかう。
川をぬるっと、すべって渡り
ある人間の家の庭先にやってきた。

ここの人間はニワトリを放し飼いにしている。
エサもたくさん、もらえている。
ここで生活している1羽のヒヨコが
ケンタだ。
「さて、ケンタはどこじゃろうか?」
見渡してもケンタの姿は、なかった。

もちっこ夫婦は、顔を見合せて
声をそろえて、さけんだ
「また、脱走か?」

そうケンタは脱走の常習犯だった。

「いかん、道にでも出ていたら危険じゃ」
「ケンタをさがしましょう」

歩いていると、カエルに出会った。
ケンタの行く先をたずねることにした。

「カエルさん、ヒヨコのケンタを見かけていないかい?」
「おや、もちっこじゃないか。ケンタなら
人間の子供たちの学校へ行くとアルイテいたぞ」
「カエルさん、どうもありがとうございます。
そうじゃ、お礼にもちっこをどうぞ」

母さんはほっぺをぷく~っと、ふくらませ、
ぷんぷん踊りをした。もちっこが出来た。

カエルは喜んだ
「こんなら出来立てのもちっこは、久しぶり、うまい。」

カエルとわかれた夫婦は、ケンタをさがして
学校近くの坂道に、来ていた。
夫婦は、コロコロまるまって進んだ。

「ぴー!」

叫び声がした!
ケンタの声だった。

ケンタは坂道の真ん中にいる。
人間の車が近づいている。

「ケンタがあぶない!」
もちっこ夫婦は、頭の回転が早かった。

「父さんは、右!私は左!」
そう叫んで、車のタイヤの下に
夫婦がねばり腰で
ねばーっと車を持ち上げた。

「ケンタ!今のうちに逃げろ」
車を持ち上げながら叫んだ。

「もちっこ父さん、母さん、ありがとうぴー」
ケンタは道の端っこの草むらに隠れた。

ケンタの安全を確認すると
夫婦は車から離れた。

「ケンタよ、今日も無事でよかった」
「さぁ、もちっこたんと食べなさい」
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