もち妖怪もちっこ夫婦

荒井 恵美

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もちっと妖怪もちっこ夫婦2

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「父さん、今年も正月がそろそろきますね」
「そうじゃな、ヒヨドリたちは、来るじゃろうか?」
「この辺りは、椿もたくさん咲きますからね、椿のミツは、たいそう美味しいそうな」
「なんの、もちっこに比べたら、たいしたことないさ」

父さんは朝の準備運動をはじめた。
ねばーっとのびて、右へ左へよじる
「今日のねばりも、よさそうじゃ」

私達夫婦は、もちの妖怪だ。
もちっこという。
ご近所さんや、お客様にもちっこを
ふるまう。

「母さん、もちっこは、たくさん用意しておかねばな。ヒヨドリさんたちは団体さんじゃからな」
「そうですねぇ、父さん」
そう言うと、母さんは、ほっぺをぷく~っと、ふくらませて、ぷんぷん踊りをした。
もちっこができあがった。
母さんはぷんぷん踊りを、続けてたくさんの
もちっこをつくった。
「もちっこ、たくさん食べてもらわにゃの」

ふと母さんが、つぶやいた。
「今年もアメちゃん、起きてくるかしら?」
「母さん、アメちゃんはカタツムリじゃ
冬眠していなければ、死んでしまう」
「そうでした、そうでした。
でも、アメちゃんは、ほれ、ヒヨドリさんに
恋しているからねぇ。
恋する娘は、強いものよ」

去年のことである。
アメちゃんはヒヨドリの鳴き声で目が覚めた。
「ピーヒュララ」
とても、大きなたくましい声じゃった。
アメちゃんは、ちょっとだけと思って
寝床を抜け出した。

一目見てヒヨドリのドクさんに恋をした。
皆の先頭を、飛ぶリーダーのドクさんは
勇ましい青年じゃった。
アメちゃんは、見惚れていると
死にかけて、倒れた。
偶然もちっこ夫婦が通りかかり
母さんが、アメちゃんをつつみこんで
あたためて、葉っぱのお風呂にいれた。

それから元気をとりもどし
もちっこ夫婦の近所に引っ越しした。

さすがに、今年は起きてこないだろうと
夫婦は、話し合っていた。

「ピーヒュララ」
声がきこえた。
「ほら、母さん団体さんの到着じゃ」

「今年もお世話になります」
ドクさんは、皆をしたがえて、やってきた。
「よく来てくださいました。
嬉しいねぇ。もちっこの準備はできていますよ」

団体さんで賑わうもちっこ夫婦の家は
楽しかった。

楽しそうな声が、近所のアメちゃんを起こした。
アメちゃんは「ドクさんだわ」
つぶやいた。
近所だから、大丈夫と、寝床からでてきました。
しかし、外は冬、アメちゃんはあっという間に
倒れてしまった。

ヒヨドリたちの話し声で気がついた。
「あんな所に、カタツムリがたおれている」

もちっこ夫婦の頭の回転は、早かった。

「父さんは、ねばり腰!私はお風呂を!」
そう叫ぶと、父さんは
腰をねばーっとのばして、のばして
アメちゃんの所まで届いた。
いそいで母さんが、用意した葉っぱのお風呂に入れた。アメちゃんは、気がついた。

ドクさんは、アメちゃんの所にやってきた。
「やあ、今年も会えたね。アメちゃん」
そう言うと、アメちゃんはほっぺを赤くした。
「覚えてくれていたのですね」
アメちゃんは、満面の笑顔だった。

「さあ、アメちゃんも、もちっこ食べて」
「今年も、アメちゃんが無事でよかった」
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