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三匹のりすらー

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間合いを詰めて、笑いの角を丸めて、福が来れば、太陽のした。
明日は元気、君たち三人のリス。
恋をして、憧れて、かわいい服を着て、お出かけをしたら、角に立つ王子がいる。
彼は、待っている。
七色に煌めく薄い光のカーテンが、あなたの心にふっと息を吹きかけて、接吻
熱いコーヒー喫茶店。
小さな胸と仄かな煙草の煙、微かに揺れて、スカートははだける。
まさぐるように、君の唇をふさいで、ねじこめば、喘ぎの愛が、こぼれるルビーのかさぶた。
少女の頃、丘の上に登って、夕日に暮れる空のもと、電車の過ぎていく過去と、今と未来に、希望を積んで、走った、あなたは、憧れた。
私たちは、アナウンサーになりたい。でも、恋をして、お嫁さんになりたい。
いつか、運命が、私たちを導いたなら、王子様が待っているわ。
電車に飛び乗って、東京をめざした。
旅立つ春は、雨が降っていた。
母さんのくれた指輪、ダイヤモンドじゃないけれど。精いっぱいの恩返しをするから、きっと待っていてね。それは、翡翠のときめき。
桜が、舞っている。
空気は少し冷たくて、電車の窓から、逸る胸、恋人を待つような気持ち、違うわ、夢をかなえるの。私は、まだ何にもない。
駅のホームで、舞っている。
それから、王子様がやってきた。
一瞬で、もう十年くらいがすぎてしまった。
人生はきっとそんなもの。
一生懸命仕事して、現実は酷薄。
出会いもあるけど別れもあって、あんまり楽しいこともなかった。
そんな日、コーヒーを淹れて、と頼んだあなたにはにかんで見せた、衣はエレガント。心は素朴、まるで、変わっていない性格、変わったのはお金が少し手に入ったこと。
プレゼントが私なんて、まるで中学生みたいね。
あの頃に帰りたい。帰れない。電車が、車が、猫が、犬が、私たちの前を通り過ぎていく。
どっかの家から煙突に乗って、煙が、立ち上る。横目で見ても、恋も夢も始まらない。
ああ、母さん、私は、愛していたのかしら。
いつか出会った初恋の人にもう一度出会いたい。
ああ、父さん、私は、信じていたかしら。
あの日夢見た、夢が、もう現実になって、散って逝った乙女心。
三人はこうして、独りの王子を待った。
星に眠る王子は枕元で、三人の愛を守って、囁く、夜明けが、そう、夜明けのリビドーが、包み込むピンクのベッドの上で、戯れて、リカちゃん人形が、泣いていた。
抱きしめたあなたとの思い出だけ、夢が去っていった気がする。
また、こうして、朝日が昇れば、煙突の煙が、空に登り、一日が始まる。
ずっと、こうしていたい。
時はそれを許さない。
仕事、恋、憧れ、三つを手に入れたいけれど、手にできないものがある。
過ぎ去っていったトキメキの赤い薔薇の花。それから真実の「愛」、何てバカみたい。
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