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踊り

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ギターの貴公子は、旋律に泣く乙女の恥じらいを包み込む、剣よりもコード。
大きな白い外套、月夜の下で、噴火した火山が、酩酊。
酔うように、道を行けば、行き止まりで、ギターをまさぐる、指ははじけるポップソード。
武器は、いらない。
音符の風が、山を川を、越えて届く、愛する女に響き合う調和のシンフォニー。
交じり合う、音の衝突、事故は危ない。
車からシューベルト。
未完成は、後ろで待つ少女の吐息に隠れて、雲が、流れていく後ろ髪は亜麻色、髪を引っ張って子供の嬌声は、空気の振るえと溶けていく音楽の鳥。
一斉にはばたいて、ギターが、乾いた音を振るわせる、憧れの曲はシーラン。
鳥たちは、首を振って、翼を揺らし、宇宙まで届けと、言わんばかりに、鳴く、泣いている子供は、泣き止むように、子守歌。
シューベルトとシーランがセッションしたなら、未知の曲。
閃光の彼方へと飛んでいく不協和音一歩手前で、ピアノが止まる。
「そこはちがうよ」
とシーラン。
楽聖に連なるためには、まだ足りない。
二人とも未完成。
私は、聴く。
耳を澄ませて、鳥の声を。
いつのまにか、セッションは止んでいた。
窓辺に寄って、二人を見下ろし、音楽の情熱に揺れるその瞳は蒼かった。
私は、感じる。
心を込めて、詩を書く。
いつの間にか、病んできた体に、せき込んで、ポップソード&グレートシールド。
剣は未知を切り裂き楯は追憶を守る。
女はいつも信じるだけ。
体と体、心を……
平和な時が楽興に暮れる夕日の中を、進んでいくカラスと合わさる重なるスコアの夢を、アヴェマリアに泣いている少年の肩を抱いた母の思いは、今いずこ。
男はいつも進むのだ。
体と体、欲するままに……
泣いていないでと言って、手を引っ張る少女の指を愛おしそうに見つめる、感じるぬくもりが、男のすべて。
だから女よ。
シーランとシューベルトが一緒に歩いていたらこう言って。
「音楽は平和だね」
そしたら私はこう言い添える。
「音楽はきっと愛することと同じなんだよ」
と。
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