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心痴学者

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継承の、闇の中。
怒りに震える戦士は、拳を握って、語り合う、聖なる調べに酔いしれる。
鳴り響く共鳴の羅針盤は、指し示す道の先に原型のフールの予言に生きる。
そう、俺は、知っている、真理などないと。でも、戦わなくてはいけないものは、心にはない。現実と対峙して、タイトなジーンズに身を包む、そんなアバンギャルドの拳銃が、ナイフを砕く、夢跡地。
戦場で散った魂をひろうフールとクールの決闘は、決着はつかない。
朝ぼらけの、戦車から、血の命令が下って、配下に置いたペン折り預言者が、寒々しく、マントを脱いで、俺にこう言った。
「貴様、自由のペンを侵害するのか」
俺は言葉を返した。
「ペンを折ったお前こそ、もはや肉欲の野獣」
それならばと、大地を蹴って、ひた走る絶歌の戦士が、涙にくれる乙女の盾となって、凍りついたその大地に、一輪の蒼い花を咲かせた。
守って、戦士。
ああ、わかってるよ。
殴り合う価値もない。通わせる血もない。
でも、愛するものを守るためなら、死も厭わない、俺は、単なるクールなフール、ではない。じゃあ、と言って別れたあの日の恋人の声が、まだ、心に残っている。
くれた、プレゼントは、ハートのクロスのペンダント。そこに刻まれた文字は「リスを愛してる」
交換したねと言って、代わりに抱きしめてくれた、抱き合った、一瞬の苦しみは、今、喜びに変わる。
恋人のために殴ること。
俺の生き様は、そんなものさ。
心痴なやつは、ニッチにいきな。
心理学者のユングよ。
お前の、学説は、単なる戯言にしか感じない。
どこがだと言えば、こう答える。
「ない。微笑みの裏に、お前の言葉が、ない」
黙り込んでくつくつ笑う、その顔は、シタリの舌先で、女を舐める愚かな男尊女卑、人類救済偽善者
さあ、ユングよ、フロイトと訣別した時を思い出せ。
あっただろう、貴様にも、追憶の中で微笑む恋人の純粋なその日々が
愛は知れない、ならお前は痴れない。
ナッシング。
ナッシング。
ナンセンスな議論は、歪んだ理論の朽ちていく老獪な猿色コート。
俺は違う。と信じている。
信じるものは救われるなんて、簡単に言うなよ。信じたのなら、その舌を切られるまで、吐き続けろ。
無様な理論は理屈を超えない。
アインシュタインにでも頼んで、時空を超えて、イエスにでも遭ってろよ。
未知との遭遇信仰破綻
さあ、タイムマシンはぶっ壊れて、ネロに奪われたら、もう終わり。
終末予言はきっと青の書。
真っ青なお前の顔が、目に浮かべば、そのままボコ殴って、夢判断。
無用な心配はいらないよ。
夢は所詮、夢だって?
そんなことはないけれど、お前の見た思想は、きっと白昼夢、そう蜃気楼。
真実を殴れば、手が潰れる。
偽りに触れれば、世界はなくなる。なんて、信じるものは、きっと、そのまま生死を彷徨って後は神次第ってとこさ。
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