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顕れ

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 神は、笑う。
 世界をへいげんするように、ラカンティア第十七星にそいつの住処はある。
 通称「音楽の終わり」
 調べが、鳴っている。
 小鳥さえ、木の葉さえ、牛さえ、何もない、あるのは、ただ広がっていく世界。
 神と言われた彼は、殺し続けた。
 怒り憎しみ、人間の神と言われて、慢心がピークに達したとき、ビッグバン新生のただなか、肉体の破滅と共に、塗り込めた。
 呪われた大地に。
 流れる血が川となり、肉が、土になって、髪が、木々になった。
 寄りつく者はない。
 彼は、移動天災を利用して、ラカンティア中に現れる。
「顕れ」と言われる。
 破壊して、搾取して、音楽を憎んだ。
 音楽とは、人間の精神に深く入り込む、奇跡の徴だ。
 肉体に潜む負の感情を洗い流す力があるが、彼は、人間に裏切られた。
 かつてのラカンティア幻想大戦において、陣頭指揮を執り、徹底的に人間のために、幻想と戦った。
 勇敢な戦士だった。
 武器は天秤。
 右手に心臓、左手に剣、地球のエジプト文明の犬に似ていたが、違う。
 心臓はダークマター製で、剣は、アラシンカスという伝説の獣の牙でできている。
 剣を心臓にかざすことによって、ラカンティア象形文字「義勇」を意味した。
 神聖人との死闘。
 彼は英雄だった。
 しかし、決定的なところで裏切られた。
 とある川で、水浴びをしているところを、背後から、最も信頼する兵士に撃たれたのだ。
 心臓を。
 ダークマターは分解して、ビッグバンを誘発し、戦争は、熾烈になっていった。
「顕れ」を討ったのは、男。
 何ていうことはない、彼の持つ女たちを手に入れたいという短絡的な動機だった。
 歴史は語る。
「偉大な者が、勝てないのは、人間の欲望だけ」
 そして、彼は、人間が聞く音楽を殺すために、人間の耳をつぶし続けた。
 なぜ、音楽か。
 人間は交尾するときに必ず音楽を聴いた。
 移動天災が生じて、巨大なハウリングが起こると、人間は、互いに殺し合う。
「顕れが来たぞ」
「犬だ!」
 と人間は叫んで、半狂乱で逃げる。
 
 ザクロたちは、今、ラカンティア第十三星「動物楽園」にいた。
 動物たちと出会ってきた。
 リス、蛇、豹、そして、今、次の星へ向かうべく、次元テレポートのある場所、「聖域」に入っていった。
 反響ピラミット。
 音を利用して、次元空間テレポートを試みるのだ。
 聖域は、北の果てにあった。
 大地も凍る極、人間は「曲」と呼び変えている。
 反響ピラミットは、透き通るダイヤモンドに似た素材でできている。
 そこに入ると、曲が流れる。
 そう「神」が作曲した究極の生体バランスでできた神曲。
 入り口には、音符と杖、ラカンティア象形文字「創造」を意味する印があって、くるものを拒むかのように、悠然と構えている。
「いくぞ、みんな」
 とザクロが言う。
 頷く旅の仲間たち。
 反響ピラミットの内部に侵入しようとしたその時。
 激しいハウリングが起こった。
「来たわよ、ザクロ」
「あれか!」
「そう、顕れだな、こりゃ」
 銀豹のラピスタは、人間体にもどり、ショートダガーを抜いた。
 ピラミットの頂点に顕れがいた。
 右手に心臓、左手に剣
 けたけたと笑っている。
「終わり、終わり、終わり……」
 そして、ひゅっと消えた。
「やべえやつに出くわしちまったな」
 とラピスタ。
「とにかく中に入ろう」
 ザクロ。
 またひゅっと現れた、刹那、ラピスタが神速で、矢を放った。
 しかし、顕れは消えた。
「中に入ったらしいわ」
 と夢乃リス。
 三人は顔を見合わせた。
「厄介な敵だな、現れんなって」
 そして、ザクロも雷刀を抜いた。
 反響ピラミットの内部に入っていく。
 
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