iラバーポエマーズ

鏑木ダビデ

文字の大きさ
上 下
23 / 35

清純と清らの歌

しおりを挟む
流れるリズムとスコアの中で、夢に踊った清らの乙女は、口に含む。
没薬のしみ込んだ布と、忘我、奥の奥に、注ぎこまれて、落日。
むせび泣く喜びの静寂。
二つのモスクが、てっぺんで稲妻を反射して、雨の中、降り注ぐレイニーストリート。
君は天国へ急いで、歌が鳴れば、ヴァイオリンとピアノは、シューベルトの生命。
小道によれば、後を追う、筋が幾百と啼くカラスの奇怪な小唄に、酔いしれる美酒の傾き。
注いで、愛して、引き裂いて、君はそう言って、諦観のままに身をひるがえした。
捧げられた君は堕天使
肉愛のまま、幕が閉じて、楽屋裏で吠える犬は、緑色。
小道を行けば、襲い来る嵐の、気配が消えて、入ってくる、それは勇者。
剣を持って、挑む、敵は多数。しかし、乱材の精神は、ばらばらに分解した肉体の破片。
「ああ、私の愛した男」
乙女は、野の華を摘んだ森の奥に、石畳を越えて、たどり着いた。
花輪をかぶせた。
しかし、獣はいっこうに鳴りやまない雷鳴のように、襲ってくる。
散りゆく花々。
一凛、一凛、心を込めて編んだ花飾りが、夜の訪れとともに、散り、踏みにじられる。
群靴が去って、雨が止む。
勇者は死んで、女は後を追った。
「天国で会いましょう」
女は勇者の頬にキスをして涙を流した。
そして、自らの心臓に剣を突き立て、果てていった。

しおりを挟む

処理中です...