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あなたの接吻

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希望の朝に、舞う羽根は、ひらひら散る桜の鳥、鳴いている子供のあなたは、そのままの姿で。
聴こえてくる舞い昇る光は、音を消して、言葉を消して、憧れるように、思い出、澄んでいるその目が、ひらいた口づけは結んで。
閉じていく瞳に映る永遠は、穏やかな雲と木木の調べ。
揺蕩うように、歩いていく、歩調は、狭まるあなたを想うたびに。
ロマンティックな青空の下、僕とあなたは、木の影に溶けるように、結ばれる手が手が、触れて、走っていく甘美な眉が、少しゆがんで、キスが降ってくる。桃色の風の隙間から、見えている、彼女は、覗き込む、愛見した、好きという気持ちは、僕に伝わって、誘い出す羽が開いて、騒めいた朝の小鳥は、寄り添う、僕のその手を休めるように、安らかに、光り、優日を感じて、穏やかに、ああ、言葉は、僕のもの、言葉は、あなたのもの、でも本当は、せせらぐ小川に、顔をひたす、冷たい温度が、本当は好き、目が覚めて、顔をタオルで吹くと、体の奥のほてりが静まっていく、うるやかな熱線、ドライヤーの朝の息、顔を映す、鏡に、語り掛ける、感謝の言葉は一つではない。
いつもありがとう、何て言って、鏡の奥の自分から離れた向こうにいる女に、視線を投げる。
投げキスのような、彼女のウィンク、照明に照らされた微熱顔は、僕だけを想う、確信のブラシさばき。
ここからが接吻。
あなたの接吻
鏡に口を近づけると、あなたは滑り落ちるように逃げた。反射した唇は、キスの破裂音に驚いて、呆然となる、そして、体を拭いて、水滴をぬぐって、細める、そう、あなたの存在は、鏡の中にだってあるっていうこと。
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