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第7話
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宿に戻って来た。本当に男の人、二人と一緒に泊まるのだろうか。私はちょっと不安だった。リーネオさんとディーナーさんが信用出来ないってことじゃない。でも、初めてのことなので自分でもどうしようもない。
「むう。狐よ、居るか?」
「は! ここに。」
リーネオさんが何処かに問いかけると部屋の隅に突然、女の人が現れた。背の高さは私と殆ど同じ。違うのは体形。クラスの男子とかが見たら大騒ぎしそうな超グラマーさんだ。顔立ちはキツイ感じもするけど美人だよ。
「ふむ。して『掃除』は終わっておるか?」
「御意! 基より女将の心掛けが良いので魔道具の類は全く・・・。と言いたい処ですが一つだけ。これを見つけました。」
そう言って「狐」さんは胸の谷間から、小さなアクセサリーみたいなものを取り出した。ってか、そこに入れとく意味ってあるの? まあ、良いか。彼女は取り出したそれをリーネオさんに渡した。
「ふむ。鞍の手入れをしたときに紛れ込ませたな。馬具を扱う業者が変わったようだ。女将には含めておこう。おお、そうだ。自己紹介をしておけ。」
「御意! 私はそこに居るディーナーの妹にして密偵のクアーエと申します。以後、お見知りおきを、お嬢様。」
いきなり登場して「お嬢様」とか呼ばれても・・・。けれど、向こうは挨拶をしている。失礼はいけない。
「リンと言います。え、えっと。私たちが晩御飯を食べている間にまで、お仕事ありがとうございます。ちゃんと御飯は食べましたか?」
私は彼女の眼を見て言った。なんか自分は暖かい食事をしていたのに彼女だけ黙々とお仕事してたなんて申し訳ない気がしたから。と思ったら、クアーエさん肩を震わせてる。ヤバイ、なんか怒らせるようなこと言ったかな?
「・・・。このクアーエ、例えこの身を砕きましてもリン様を守り抜くことを誓います。若旦那様、お許しを!」
「うむ! その志、尊いと思う。お前はリンと同じ女子だ。俺や其方の兄は思い至らぬところ多いだろう、助けて貰いたいと思う。」
「はは、有難き幸せ!」
あれ? 何か、勝手に話が纏まっちゃったよ? まあ良いか。私は今、唯一の同性であるクアーエさんと揉めなきゃ正直どうでも良いし。けれど彼女が居てくれるお陰でリーネオさんとお話し易くなったのは感謝だね。
「それで、次の戦は何時、何処で起こるのですか?」
私は単刀直入にリーネオさんに聞いた。
「ふむ。やはり聡いな。だが、この後の話を聞いたら後戻りは出来ぬぞ。それでも良いか、リン?」
「私はお話を聞く以外に選ぶ道が無いです。お願いします。」
私が即答するとリーネオさんはゆっくりと話し出した。
「まずはこの地図を見よ。」
彼が見せてくれた地図を見て私はビックリしてしまった。この世界にはこんなに沢山の国があるんだ! ゴルジョケア国に居た時はこんなちゃんとした地図なんて見せて貰えなかった。次に攻めるかも知れない周りの国しか載ってない手書きの地図だけだよ。
「薄々気付いていたとは思うが、俺は商会の跡取息子ではない。この『イコォーマ』と言う国の王太子だ。」
分かり易くするためか幾つかの国の名前に色が塗ってある。彼が指差した国の名前は青く塗られてる。今居るソウルジェキ国の西隣のところだ。他にはゴルジョケア国がオレンジ色、ストルバク国が黄色、プロージアと言う国の名前が赤く塗られてる。
「そして戦になりそうな国がここ、『プロージア』国だ。戦場は恐らく我が国か、このソウルジェキ国のどちらかだな。今、情報を集めさせている。」
「どうして、この『プロージア』国が攻めて来るのですか?」
「うむ。あの国はプサフヌト河の利権を独り占めしたいのだ。」
リーネオさんが説明してくれた。プロージア国には海が無い。なので国の産物を輸出するにはミスピエル湖と言う大きな湖を渡ってプサフヌト河を下るのが一番なんだって。その先には豊かな商人の国、ストルバク国があるから。けれどソウルジェキ国を通るので通行税を取られちゃう。
だったらソウルジェキ国を占領しちゃえ! そしていっその事、プサフヌト河の使用権を独占して今度は周りの国から河の通行税をたくさん取っちゃえ!とまあ、そんな理由らしい。
「ソウルジェキ国は通商で成り立っている国だ。特に重い通行税を掛けている訳では無い。どちらかと言うと運河の設備の維持費に手数料を含めた程度の額だ。」
「要するに戦を吹っ掛けるための『口実』ってことですね?」
「よろしい。その通りだ。」
リーネオさんはウンウンと頷いた。なんか社会の先生みたいだ。
「ソウルジェキは軍事力はあまり持っていない。なのでそこは周辺国に頼っていたのだ。我がイコォーマもその一つよ。我が国は小国だが軍隊は強い。ミスピエル湖を治める水軍も持っている。」
私はじっと彼の話に聞き入った。
「もちろんソウルジェキの後ろ盾としてはゴルジョケアも一枚噛んでいた。しかし今回、明らかに国力が落ちた。ペルクーリの馬鹿は判って無いようだが、周辺の国も直ぐに気付くだろう。」
「【戦巫女】が変わったことにですね?」
リーネオさんはそうそうと言うように頷く。ちょっと優等生になったみたいで気分が良い。
「プロージアも直ぐに気付くだろう。いや、もう知っているかも知れんな。そしてあの国ももうすぐ強力な駒を手に入れる。」
「プロージアにも【戦巫女】が現れるってこと?」
「そうだ。リン、話の呑み込みが良くて何よりだ。」
リーネオさんはニッコリと笑った。まるでテストで良い点を取ったときに褒めてくれる先生みたいだった。
「むう。狐よ、居るか?」
「は! ここに。」
リーネオさんが何処かに問いかけると部屋の隅に突然、女の人が現れた。背の高さは私と殆ど同じ。違うのは体形。クラスの男子とかが見たら大騒ぎしそうな超グラマーさんだ。顔立ちはキツイ感じもするけど美人だよ。
「ふむ。して『掃除』は終わっておるか?」
「御意! 基より女将の心掛けが良いので魔道具の類は全く・・・。と言いたい処ですが一つだけ。これを見つけました。」
そう言って「狐」さんは胸の谷間から、小さなアクセサリーみたいなものを取り出した。ってか、そこに入れとく意味ってあるの? まあ、良いか。彼女は取り出したそれをリーネオさんに渡した。
「ふむ。鞍の手入れをしたときに紛れ込ませたな。馬具を扱う業者が変わったようだ。女将には含めておこう。おお、そうだ。自己紹介をしておけ。」
「御意! 私はそこに居るディーナーの妹にして密偵のクアーエと申します。以後、お見知りおきを、お嬢様。」
いきなり登場して「お嬢様」とか呼ばれても・・・。けれど、向こうは挨拶をしている。失礼はいけない。
「リンと言います。え、えっと。私たちが晩御飯を食べている間にまで、お仕事ありがとうございます。ちゃんと御飯は食べましたか?」
私は彼女の眼を見て言った。なんか自分は暖かい食事をしていたのに彼女だけ黙々とお仕事してたなんて申し訳ない気がしたから。と思ったら、クアーエさん肩を震わせてる。ヤバイ、なんか怒らせるようなこと言ったかな?
「・・・。このクアーエ、例えこの身を砕きましてもリン様を守り抜くことを誓います。若旦那様、お許しを!」
「うむ! その志、尊いと思う。お前はリンと同じ女子だ。俺や其方の兄は思い至らぬところ多いだろう、助けて貰いたいと思う。」
「はは、有難き幸せ!」
あれ? 何か、勝手に話が纏まっちゃったよ? まあ良いか。私は今、唯一の同性であるクアーエさんと揉めなきゃ正直どうでも良いし。けれど彼女が居てくれるお陰でリーネオさんとお話し易くなったのは感謝だね。
「それで、次の戦は何時、何処で起こるのですか?」
私は単刀直入にリーネオさんに聞いた。
「ふむ。やはり聡いな。だが、この後の話を聞いたら後戻りは出来ぬぞ。それでも良いか、リン?」
「私はお話を聞く以外に選ぶ道が無いです。お願いします。」
私が即答するとリーネオさんはゆっくりと話し出した。
「まずはこの地図を見よ。」
彼が見せてくれた地図を見て私はビックリしてしまった。この世界にはこんなに沢山の国があるんだ! ゴルジョケア国に居た時はこんなちゃんとした地図なんて見せて貰えなかった。次に攻めるかも知れない周りの国しか載ってない手書きの地図だけだよ。
「薄々気付いていたとは思うが、俺は商会の跡取息子ではない。この『イコォーマ』と言う国の王太子だ。」
分かり易くするためか幾つかの国の名前に色が塗ってある。彼が指差した国の名前は青く塗られてる。今居るソウルジェキ国の西隣のところだ。他にはゴルジョケア国がオレンジ色、ストルバク国が黄色、プロージアと言う国の名前が赤く塗られてる。
「そして戦になりそうな国がここ、『プロージア』国だ。戦場は恐らく我が国か、このソウルジェキ国のどちらかだな。今、情報を集めさせている。」
「どうして、この『プロージア』国が攻めて来るのですか?」
「うむ。あの国はプサフヌト河の利権を独り占めしたいのだ。」
リーネオさんが説明してくれた。プロージア国には海が無い。なので国の産物を輸出するにはミスピエル湖と言う大きな湖を渡ってプサフヌト河を下るのが一番なんだって。その先には豊かな商人の国、ストルバク国があるから。けれどソウルジェキ国を通るので通行税を取られちゃう。
だったらソウルジェキ国を占領しちゃえ! そしていっその事、プサフヌト河の使用権を独占して今度は周りの国から河の通行税をたくさん取っちゃえ!とまあ、そんな理由らしい。
「ソウルジェキ国は通商で成り立っている国だ。特に重い通行税を掛けている訳では無い。どちらかと言うと運河の設備の維持費に手数料を含めた程度の額だ。」
「要するに戦を吹っ掛けるための『口実』ってことですね?」
「よろしい。その通りだ。」
リーネオさんはウンウンと頷いた。なんか社会の先生みたいだ。
「ソウルジェキは軍事力はあまり持っていない。なのでそこは周辺国に頼っていたのだ。我がイコォーマもその一つよ。我が国は小国だが軍隊は強い。ミスピエル湖を治める水軍も持っている。」
私はじっと彼の話に聞き入った。
「もちろんソウルジェキの後ろ盾としてはゴルジョケアも一枚噛んでいた。しかし今回、明らかに国力が落ちた。ペルクーリの馬鹿は判って無いようだが、周辺の国も直ぐに気付くだろう。」
「【戦巫女】が変わったことにですね?」
リーネオさんはそうそうと言うように頷く。ちょっと優等生になったみたいで気分が良い。
「プロージアも直ぐに気付くだろう。いや、もう知っているかも知れんな。そしてあの国ももうすぐ強力な駒を手に入れる。」
「プロージアにも【戦巫女】が現れるってこと?」
「そうだ。リン、話の呑み込みが良くて何よりだ。」
リーネオさんはニッコリと笑った。まるでテストで良い点を取ったときに褒めてくれる先生みたいだった。
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