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第11話
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「ここ、どこ? おじちゃんたち、だえ? おねいちゃんは?」
小さな女の子は周りをきょろきょろ見ながら話しかけて来た。あんまり物怖じしない性格みたい。亜麻色っていうのかな? でもちょっと金髪っぽい感じの長い髪が背中ぐらいまであるね。大きなくりくりした瞳は少し青っぽい紫色だよ。珍しいな、こんな瞳初めて見た。
「お姉ちゃんの名前は凛だよ。あなたのお名前は?」
「てぃたるだよ。てぃたる・ありゅしとくりゃあと。ごちゃい!」
外国の子だなあ。名前は多分「ティタル」だね。苗字は「アリュシトクリャアト?」、舌っ足らずで言ってるから良く判んないや。歳は5歳だね。名前も可愛いな。
「ティタルちゃん、5歳だね。自分のお歳、言えるなんてエラいね~♪」
しゃがんで彼女の瞳を見つめながら話しかけるとキャッキャッて感じで抱きついて来た。
「えへへ、りんおねいちゃん、しゅき~♪」
うわあぁ~! なに、なに、この幸福感♪ あ、これが「尊い」って感情? クラスのオタクっぽい男子たちが時々言ってた「尊い」ってコレ? 判る、今の私なら判るよ! 君たちの気持ち。一人っ子で、ずっと妹か弟が欲しかった私には最高のご褒美だよぅ♪
「うむ、リン。其方に懐いたな。それが何かと都合が良い。茶でも飲める場所でゆっくり事情を聴こうではないか。行こう。」
流石はリーネオさん、もうすっかり落ち着いている。こういうとこだぞ? 微妙チビデブ君。もう男子としての器が違うね。ヤクルトと2ℓのペットボトルくらい? 私はティタルちゃんの手を引いてリーネオさんと神官さんたちに付いて行った。
「確かに神官殿たちには万一を考えて『召喚』の儀式の準備まではお願いしていた。だが、どうして勝手に『召喚』が起こってしまったのだ?」
「万一」って言うのは、私がイコォーマに来なかったときのことだね。リーネオさんは全ての可能性を考えて手を打ってたんだね。やっぱ出来る男は違うよ。
「そうなのです。私共もリン様がイコォーマの【戦巫女】に内定したとの知らせを受けまして、準備を『召喚』の儀式から【戦巫女】の任命の儀へ切り替えようとしたところでした。」
「すると突然、『召喚』の儀式が勝手に始まってしまい、その幼子が召喚されて来たのです。」
二人の神官さんが説明してくれた。聞いてて私は何か嫌な予感がして来ていた。大人の話が判らないティタルちゃんは私の横にちょこんと座っている。じっとこっちを見つめながら。彼女が不安にならないように頭を優しく撫でてあげる。髪がサラサラ、フワフワだ。頭の中で快感物質が出て来るのが自分で判るよ♪
「しかし、困ったな。一つの国に【戦巫女】が二人以上居ることは別に教会の教義に反することではない。問題は任命の時期だな。」
リーネオさんが困った顔で呟いた。彼の説明によると【戦巫女】を『召喚』したり任命したりすると、その後1ヶ月間は新しい【戦巫女】の任命は出来ないんだって。次に任命の儀が出来るのは3月27日だそうだ。
「ちなみに『召喚』は何回でも出来るんですか?」
「いえ、リン様。『召喚』の儀は特殊ですので、一度行ってしまうと数十年は出来ません。様々な条件が満たされないといけませんので。しかも必ず成功するとは限りませぬし・・・。」
私の質問に神官さんの一人が答えてくれた。なるほど、だからペルクーリ王太子は私を嫌々でも【戦巫女】として使ってたんだ。本当に仕方無いって感じだったな。
「最悪、次の戦はこのような幼子を【戦巫女】として押し立てて戦わなければならぬのか。【戦巫女】は心が穏やかでないと力が発揮出来ぬ。だが幼子は直ぐに心が揺れるからな・・・。」
こればかりはリーネオさんも頭を抱えてしまった。うーん。どうしたもんかな・・・。ふと横のティタルちゃんを見る。ニコニコとこちらを見上げてるよ。上機嫌だね。私の「伝意」の効果もあるけど、元々から人懐っこい性格なのかな? あ、そうか!
「あの、こういう案はどうでしょう。私がティタルちゃんに付き添って戦に行くんですよ。私は【戦巫女】として3回の戦で経験があります。だから助言も出来ると思いますし。この子の心のサポートは任せて下さい。」
「うむ。それしか無いか。リンよ、良くぞ申してくれた。流石は俺が見込んだ【戦巫女】よ。」
リーネオさんが褒めてくれた。嬉しいな♪ 頬っぺたが熱くなる。
「よし。そうとなればやることは決まった。この幼子が『召喚』されたことは他言無用だ。戦の寸前まで存在は明かさぬ。次にリンはティタルと共に水軍の訓練に出来るだけ同行せよ。その子を船に出来るだけ慣れさせるのだ。」
リーネオさんは一呼吸、間を置く。
「最後は俺の仕事だ。出来るだけ戦の始まる時期を遅らせる様に動く。上手く行けば3月の27日より遅く出来るかも知れぬ。そうなればリンを【戦巫女】に任ずることが可能だからな。」
うんうん、方針が決まった途端、リーネオさんはてきぱきと指示を出し始めた。やっぱりデキる男は違うね。カッコいい!
「ふむ。では先ずは腹拵えだ。昼餉を食べに行こう。リン、ティタルよ。付いて参れ。」
「はい、リーネオさん。行こ、ティタルちゃん。」
「うん。てぃたる、おひるごはん、たべゆ。」
私はティタルちゃんの手を引いてリーネオさんに付いて行く。そして食事中に彼女から聞いた話が私にある「決意」をさせることになった。
小さな女の子は周りをきょろきょろ見ながら話しかけて来た。あんまり物怖じしない性格みたい。亜麻色っていうのかな? でもちょっと金髪っぽい感じの長い髪が背中ぐらいまであるね。大きなくりくりした瞳は少し青っぽい紫色だよ。珍しいな、こんな瞳初めて見た。
「お姉ちゃんの名前は凛だよ。あなたのお名前は?」
「てぃたるだよ。てぃたる・ありゅしとくりゃあと。ごちゃい!」
外国の子だなあ。名前は多分「ティタル」だね。苗字は「アリュシトクリャアト?」、舌っ足らずで言ってるから良く判んないや。歳は5歳だね。名前も可愛いな。
「ティタルちゃん、5歳だね。自分のお歳、言えるなんてエラいね~♪」
しゃがんで彼女の瞳を見つめながら話しかけるとキャッキャッて感じで抱きついて来た。
「えへへ、りんおねいちゃん、しゅき~♪」
うわあぁ~! なに、なに、この幸福感♪ あ、これが「尊い」って感情? クラスのオタクっぽい男子たちが時々言ってた「尊い」ってコレ? 判る、今の私なら判るよ! 君たちの気持ち。一人っ子で、ずっと妹か弟が欲しかった私には最高のご褒美だよぅ♪
「うむ、リン。其方に懐いたな。それが何かと都合が良い。茶でも飲める場所でゆっくり事情を聴こうではないか。行こう。」
流石はリーネオさん、もうすっかり落ち着いている。こういうとこだぞ? 微妙チビデブ君。もう男子としての器が違うね。ヤクルトと2ℓのペットボトルくらい? 私はティタルちゃんの手を引いてリーネオさんと神官さんたちに付いて行った。
「確かに神官殿たちには万一を考えて『召喚』の儀式の準備まではお願いしていた。だが、どうして勝手に『召喚』が起こってしまったのだ?」
「万一」って言うのは、私がイコォーマに来なかったときのことだね。リーネオさんは全ての可能性を考えて手を打ってたんだね。やっぱ出来る男は違うよ。
「そうなのです。私共もリン様がイコォーマの【戦巫女】に内定したとの知らせを受けまして、準備を『召喚』の儀式から【戦巫女】の任命の儀へ切り替えようとしたところでした。」
「すると突然、『召喚』の儀式が勝手に始まってしまい、その幼子が召喚されて来たのです。」
二人の神官さんが説明してくれた。聞いてて私は何か嫌な予感がして来ていた。大人の話が判らないティタルちゃんは私の横にちょこんと座っている。じっとこっちを見つめながら。彼女が不安にならないように頭を優しく撫でてあげる。髪がサラサラ、フワフワだ。頭の中で快感物質が出て来るのが自分で判るよ♪
「しかし、困ったな。一つの国に【戦巫女】が二人以上居ることは別に教会の教義に反することではない。問題は任命の時期だな。」
リーネオさんが困った顔で呟いた。彼の説明によると【戦巫女】を『召喚』したり任命したりすると、その後1ヶ月間は新しい【戦巫女】の任命は出来ないんだって。次に任命の儀が出来るのは3月27日だそうだ。
「ちなみに『召喚』は何回でも出来るんですか?」
「いえ、リン様。『召喚』の儀は特殊ですので、一度行ってしまうと数十年は出来ません。様々な条件が満たされないといけませんので。しかも必ず成功するとは限りませぬし・・・。」
私の質問に神官さんの一人が答えてくれた。なるほど、だからペルクーリ王太子は私を嫌々でも【戦巫女】として使ってたんだ。本当に仕方無いって感じだったな。
「最悪、次の戦はこのような幼子を【戦巫女】として押し立てて戦わなければならぬのか。【戦巫女】は心が穏やかでないと力が発揮出来ぬ。だが幼子は直ぐに心が揺れるからな・・・。」
こればかりはリーネオさんも頭を抱えてしまった。うーん。どうしたもんかな・・・。ふと横のティタルちゃんを見る。ニコニコとこちらを見上げてるよ。上機嫌だね。私の「伝意」の効果もあるけど、元々から人懐っこい性格なのかな? あ、そうか!
「あの、こういう案はどうでしょう。私がティタルちゃんに付き添って戦に行くんですよ。私は【戦巫女】として3回の戦で経験があります。だから助言も出来ると思いますし。この子の心のサポートは任せて下さい。」
「うむ。それしか無いか。リンよ、良くぞ申してくれた。流石は俺が見込んだ【戦巫女】よ。」
リーネオさんが褒めてくれた。嬉しいな♪ 頬っぺたが熱くなる。
「よし。そうとなればやることは決まった。この幼子が『召喚』されたことは他言無用だ。戦の寸前まで存在は明かさぬ。次にリンはティタルと共に水軍の訓練に出来るだけ同行せよ。その子を船に出来るだけ慣れさせるのだ。」
リーネオさんは一呼吸、間を置く。
「最後は俺の仕事だ。出来るだけ戦の始まる時期を遅らせる様に動く。上手く行けば3月の27日より遅く出来るかも知れぬ。そうなればリンを【戦巫女】に任ずることが可能だからな。」
うんうん、方針が決まった途端、リーネオさんはてきぱきと指示を出し始めた。やっぱりデキる男は違うね。カッコいい!
「ふむ。では先ずは腹拵えだ。昼餉を食べに行こう。リン、ティタルよ。付いて参れ。」
「はい、リーネオさん。行こ、ティタルちゃん。」
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