上位互換を手に入れたから私はお払い箱?《お金持ちの国の【戦巫女】をクビになったけど直ぐに再就職出来ました》

ぶっちゃけマシン

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第16話

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「良いか、これからは俺を呼ぶときは『あなた』と呼べ。特にいくさの時、へいたちの前ではな。」

軍議ぐんぎのある部屋に向かう途中で廊下ろうかの角でリーネオさんが真顔まがおで言ってきた。え? 突然どうしたの? 私は意味が判らなくて口をぱくぱくさせちゃった。

「間違っても『リーネオさん』などと他人行儀たにんぎょうぎで『さん』付けで呼んではならぬ。そちらの呼び方が良いのなら『リーネオ』と呼び捨てにするが良い。」

ひぃっ、よ、呼び捨てとかもっと無理ですぅ!急にどうしたの、リーネオさん? 

「さあ、どちらで呼ぶか、先ず選ぶが良い。時間が無い。さ、早くするが良い。」

私が何も言わないうちに「究極の二択」みたいになっちゃったよ。どうしよう。

「そ、それじゃあ・・・。『あなた』の方で・・・。」

勇気を振りしぼって「あなた」を選択したよ。顔が赤くなるのが自分でも判る。

「何を赤くなっておる。さ、練習だ。呼んでみよ!」

「あ、あなた。」

下を向きながら精一杯呼んでみたけど、ちょっとどもっちゃった。

「下を向くな! 俺の眼を見ろ。真っ直ぐ見つめて自信を持って呼んでみよ!」

「あなた!」

顔が近い、近いですぅ。整った精悍せいかんな顔が息が掛かりそうなくらい近くにある。私はほとんど、自棄やけになって叫ぶように呼んでみた。一生懸命いっしょうけんめいに彼の瞳を見つめながら。

「ふむ。まだ顔が少し赤いが良いだろう。直ぐにれる。その調子で頼むぞ。」

再び、軍議のある部屋に向かいながらリーネオさんは説明してくれた。【戦巫女いくさみこ】が王太子のことを他所他所よそよそしく呼んでいると兵隊さんたちの士気? つまり「やる気」が下がると言う事とか、もしかしたら、まだ【戦巫女いくさみこ】じゃないことを敵にさとられるかも知れない事とかだ。

ちょっと、それならそうで先に言って下さいよ。でも【戦巫女いくさみこ】の任命が終わったら結婚はまだでも婚約はするんだよね。今から「あなた」って言う呼び方にも慣れておかなくちゃね・・・。


「待たせたな! それでは軍議を始めようか。リン、其方そなたは俺の横に座れ!」

「おお、貴方あなた様が神々と交信が出来でき、悪神に罰すらお与えになれると言う【戦巫女いくさみこ】リン様であられますか! このお方が我が軍についてられれば此度こたびの戦の勝利は間違いない!」

えらい兵隊さんの一人がそう言うと、周りの人たちも一斉に活気付いた。そうか、なるほど此処ここで、私が『リーネオさん』なんて他人行儀に彼を呼んじゃうと皆が不安になっちゃうわけか・・・。事情は分かったけど、もうちょっと早く行って欲しかったよ。男の人って、たまに言わなきゃいけない事の順番間違えるよね・・・。

「皆さん、このたびは良く集まって下さいましたね。私は水の上でのいくさは初めてです。どうかお助け下さいね。それでは貴方あなた、軍議をお始め下さい。」

私は集まっている人たちの眼を見ながら、出来るだけ丁寧ていねい挨拶あいさつした。ちゃんと「あなた」も言えたぞ! 頑張がんばったよ、私。ちょっとっぺた赤くなった気がするけど。

「うむ。軍議を始める。皆の者、忌憚きたんの無い意見を述べよ。」

リーネオさんが軍議を始めた途端、皆さんが活発に意見を出し始めたよ。その一つ、一つを最後までしっかり聞いてから、彼はその意見の良い所を拾い上げる。けれど、どうしても此処ここがダメと言う点があれば、どんなに良い所があってもその意見を取り入れることも無かった。

「うむ、天気が荒れた方が有利なのは確かか。我らがイコォーマの方が操船にはけておるからな。 して、明日の天候は?」

「漁師たちによると、明日は残念ながら快晴との見立てです。」

そうか。色々な条件を頭に入れていくさってするんだな。私、感心しちゃったよ。だって、ゴルジョケアの戦の前には軍議なんて無かったし。適当に兵隊の頭数だけ比べて勝てるとか思ったら、直ぐにいくさ始めてたよ。部下に意見聞くとかしなかったもん。大体、【戦巫女いくさみこ】さえ居れば勝てるって相手のことめてたし。

「ふむ。天候までは我らの意のままには出来ぬ。明日は此度こたびの軍議でまとめた打合せ通りにやれば必ず勝てる。なんと言っても天下無双の【戦巫女いくさみこ】リンが我が方についてる。皆の者、明日は勝つぞ!」

リーネオさんが軍議をめる。って、私のことを持ち上げ過ぎないで下さい。大体、明日はティタルちゃんが【戦巫女いくさみこ】ですよぅ。過大評価、反対!

「さて、明日は朝早くからいくさになる。早く、寝所に戻ってティタルと共に良く休むが良い。俺も準備を確認したら、直ぐに休む。明日は大働おおはたらきしてやるからな!」

もう大りだ、リーネオさん。私も絶対に足を引っ張らない様にしなきゃね。寝所に戻った私は寝ているティタルちゃんを起こさない様にベッドに入った。そうだ、寝る前に一つやらなきゃならないことを思い出したよ。私はそれを終えると直ぐに眠った。不思議と不安は無かった。
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