27 / 29
第27話
しおりを挟む
「暴動が起きていないだと? 貴様ら、予の指示通りにしたのだろうな?」
「はい、ペルクーリ殿下。しかし、イコォーマは最初からこちらの動きを予想していたようです。困窮して都に集まった農民共を刺激しないように慎重に宥め、暴動を未然に防いだのです。」
「それを貴様らは黙って見ていたのか? さらに井戸に毒を入れて混乱させたり、その事をイコォーマのせいにして噂を流すなど、やれることはまだあった筈。手緩いぞ!」
「しかし、そんなことをしてはゴルジョケアの西半分が再建不能になってしまいます。例え戦に勝ったとしても都、ティペリスとその周辺の村々を復興させることは容易ではありませぬ。」
「まずは戦に勝つことが先決だ。都など、このイターンに遷せば問題無い。何故、貴様らが復興のことなどを気に掛けるのだ! 出過ぎた事をするな!」
臣下の騎士どもが縮み上がる。全員、震えあがって直立不動の姿勢になりおった。それで良い。貴様らは予に言われたことだけをしていろ。許可もなく余計な事をしたら家族諸共、処刑してやるからな。
ええい、忌々しい。暴動が起きてイコォーマの軍勢と農民との間に衝突を起こせば無知蒙昧な民心など幾らでも操れたものを・・・。愚民どもを宥めるのには【戦巫女】リンの働きも大きかったと言う。奴等は何故、あの娘をあのように慕うのか、さっぱり理解出来ぬ。
確かにリンを手放したのは失敗だった。小麦は凶作で税の取り立ては捗らないは、伯父上からはお叱りの書簡が届くはで碌なことが無い。やはり書簡でのご指摘の通り、国外に追放などせず城の何処かにでも幽閉して置けば良かったのだ。そして小麦の取り入れの時だけ、あれを【戦巫女】に任ずれば事は足りておった。
「どうなさいました、ペルクーリ殿下? お顔の色が優れませんよ?」
「うむ? いや、何でもないぞ。其方が心配することは無い。」
予の可愛い【戦巫女】ラスカーシャが上目遣いで尋ねてきおる。そうだ、女はこうやって男を立てて居れば良いのだ。それをあのリンは正面から予の目を真っ直ぐ見つめて来る。少しは膝や腰を屈めて下手に出れば、まだ可愛気もあったものを・・・。
第一、あの目が気に喰わぬ。予のことを憐れむような、蔑むような気持が犇々と伝わって来おったわ。特に予が敵国を陥れる名案を思い着いて話して聞かせてやったときの汚いものを見るような目は一生忘れぬ。【戦巫女】で無ければ、今頃は手討にしておるわ!
何故か、あの目を見ていたら自分がちっぽけで中身の無い器の小さな男の様に思えて来てならぬのだ。予は王太子、つまり次の国王だぞ。このラスカーシャの様に媚びて敬えぬのか!
「殿下、どうなさいました? また敵を苦しめる名案でもお考えなのですか? どうかラスカーシャにも話してお聞かせ下さいませ。」
「うむうむ、良いぞ。近う寄れ。」
ラスカーシャが甘えるように話掛けて来るので抱き寄せてやる。豊かな肉付きの素晴らしい抱き心地。女はこうでなくてはな。あのリンのように痩せっぽちではこうは行かぬわ。大体、あの娘は抱き寄せようとしたら嫌がって、予を突き飛ばしおった。兎に角、無礼だったわ・・・。
「あ、あの殿下。我々はどうしたら・・・。ご指示をお願い致します。」
「それくらい自分たちで考えろ! 見て判らぬか、予は今忙しいのだ!」
騎士どもめ、ぼうっと突っ立ちおって。全く無能なりに無い知恵を振り絞って働こうとは思わぬのか! 仕方が無い、少し指示を出してやるか。ラスカーシャの手前、少しは恰好も付けておかねば成らぬのでな。
「そうだ、傭兵の集まり具合はどうだ。金に糸目を付けるな。どんどん集めるのだ。」
「ですが、これ以上は『質』が保証出来ません。もう罪人紛いの破落戸のような者しか集まりません。いざ、戦となれば我らの命令に従うかどうかも・・・。」
「戯けい! それを何とかするのが貴様ら騎士団だろうがっ! 戦など、所詮は数だ! 相手が見ただけで逃げ出すくらいの数を揃えよ!」
「ははっ! 畏まりました。」
ふむ、なかなか恰好が付いたか。ラスカーシャが潤んだ瞳で見上げて来る。中々、気分の良いものよ。これは堪えられぬわ。
「それと『アレ』の準備の方は進んでおるのか? 念のため、抜かりなくやっておけよ!」
「ははぁっ! 仰せのままに!」
そうだ、予には伯父上から授かった策と奥の手があるのだ。決して負けることはないわ。今に見ておれよ、リーネオとリンよ。首を洗って待っておるが良い。予に刃向かったことを心の底から後悔させてやるからな・・・。
「はい、ペルクーリ殿下。しかし、イコォーマは最初からこちらの動きを予想していたようです。困窮して都に集まった農民共を刺激しないように慎重に宥め、暴動を未然に防いだのです。」
「それを貴様らは黙って見ていたのか? さらに井戸に毒を入れて混乱させたり、その事をイコォーマのせいにして噂を流すなど、やれることはまだあった筈。手緩いぞ!」
「しかし、そんなことをしてはゴルジョケアの西半分が再建不能になってしまいます。例え戦に勝ったとしても都、ティペリスとその周辺の村々を復興させることは容易ではありませぬ。」
「まずは戦に勝つことが先決だ。都など、このイターンに遷せば問題無い。何故、貴様らが復興のことなどを気に掛けるのだ! 出過ぎた事をするな!」
臣下の騎士どもが縮み上がる。全員、震えあがって直立不動の姿勢になりおった。それで良い。貴様らは予に言われたことだけをしていろ。許可もなく余計な事をしたら家族諸共、処刑してやるからな。
ええい、忌々しい。暴動が起きてイコォーマの軍勢と農民との間に衝突を起こせば無知蒙昧な民心など幾らでも操れたものを・・・。愚民どもを宥めるのには【戦巫女】リンの働きも大きかったと言う。奴等は何故、あの娘をあのように慕うのか、さっぱり理解出来ぬ。
確かにリンを手放したのは失敗だった。小麦は凶作で税の取り立ては捗らないは、伯父上からはお叱りの書簡が届くはで碌なことが無い。やはり書簡でのご指摘の通り、国外に追放などせず城の何処かにでも幽閉して置けば良かったのだ。そして小麦の取り入れの時だけ、あれを【戦巫女】に任ずれば事は足りておった。
「どうなさいました、ペルクーリ殿下? お顔の色が優れませんよ?」
「うむ? いや、何でもないぞ。其方が心配することは無い。」
予の可愛い【戦巫女】ラスカーシャが上目遣いで尋ねてきおる。そうだ、女はこうやって男を立てて居れば良いのだ。それをあのリンは正面から予の目を真っ直ぐ見つめて来る。少しは膝や腰を屈めて下手に出れば、まだ可愛気もあったものを・・・。
第一、あの目が気に喰わぬ。予のことを憐れむような、蔑むような気持が犇々と伝わって来おったわ。特に予が敵国を陥れる名案を思い着いて話して聞かせてやったときの汚いものを見るような目は一生忘れぬ。【戦巫女】で無ければ、今頃は手討にしておるわ!
何故か、あの目を見ていたら自分がちっぽけで中身の無い器の小さな男の様に思えて来てならぬのだ。予は王太子、つまり次の国王だぞ。このラスカーシャの様に媚びて敬えぬのか!
「殿下、どうなさいました? また敵を苦しめる名案でもお考えなのですか? どうかラスカーシャにも話してお聞かせ下さいませ。」
「うむうむ、良いぞ。近う寄れ。」
ラスカーシャが甘えるように話掛けて来るので抱き寄せてやる。豊かな肉付きの素晴らしい抱き心地。女はこうでなくてはな。あのリンのように痩せっぽちではこうは行かぬわ。大体、あの娘は抱き寄せようとしたら嫌がって、予を突き飛ばしおった。兎に角、無礼だったわ・・・。
「あ、あの殿下。我々はどうしたら・・・。ご指示をお願い致します。」
「それくらい自分たちで考えろ! 見て判らぬか、予は今忙しいのだ!」
騎士どもめ、ぼうっと突っ立ちおって。全く無能なりに無い知恵を振り絞って働こうとは思わぬのか! 仕方が無い、少し指示を出してやるか。ラスカーシャの手前、少しは恰好も付けておかねば成らぬのでな。
「そうだ、傭兵の集まり具合はどうだ。金に糸目を付けるな。どんどん集めるのだ。」
「ですが、これ以上は『質』が保証出来ません。もう罪人紛いの破落戸のような者しか集まりません。いざ、戦となれば我らの命令に従うかどうかも・・・。」
「戯けい! それを何とかするのが貴様ら騎士団だろうがっ! 戦など、所詮は数だ! 相手が見ただけで逃げ出すくらいの数を揃えよ!」
「ははっ! 畏まりました。」
ふむ、なかなか恰好が付いたか。ラスカーシャが潤んだ瞳で見上げて来る。中々、気分の良いものよ。これは堪えられぬわ。
「それと『アレ』の準備の方は進んでおるのか? 念のため、抜かりなくやっておけよ!」
「ははぁっ! 仰せのままに!」
そうだ、予には伯父上から授かった策と奥の手があるのだ。決して負けることはないわ。今に見ておれよ、リーネオとリンよ。首を洗って待っておるが良い。予に刃向かったことを心の底から後悔させてやるからな・・・。
0
あなたにおすすめの小説
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる