コロニー

神楽 羊

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第三話 強襲

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 コロニーの中

 私達に課せられた仕事は大きく三つある。
 一つは訓練、一つはクリーチの撃退
 撃退とは境界からのクリーチ狙撃の任務の事をそう呼んでいた。
 外に出ての殲滅は【護り手】と経験を積んだニエを崇拝する兵士達が請け負っている。
 護り手は十人程いて年は様々だったが皆戦闘能力に長けていてその力を買われ護り手になったのだろう、それでもクリーチには手を焼いているようだったが。

 そして最後の一つは農耕。
 私達三人は主にクリーチ撃退を任されていたが時々農民の手伝いとして駆り出され畑仕事や雑用なども受け持っていた。コロニーは広く一つの村の様になっていて畑もありそこで取れるものを私達は配給されていた。
 ここで私はいつも疑問に思う事がある。
 この畑だけで私達は暮らせていけるのか? 確かに大きな畑ではあるがこれだけ大勢いる人間が食べていける程の食糧が自給自足出来るとは思えなかった。
 何より時々出る魚や山の物はどこから来ているのか?
 他の村を襲っているのか?もしかして人を攫うだけでなく食べ物まで強奪しているのか、そう考えると私の心は萎んでしまった。
  誰かの為の食糧を私が奪っているのだとしたら、それで生きれなくなった人がいるかもしれない。

 幹部やニエには普段近づく事が出来ないので周りの仲間に聞いては見たものの誰もそれが当たり前だというように稲を刈る手を止めようとはしない、彼等はこの生活にそれ程飼い慣らされているのだ。
  ジンにも聞いてみたが寂しく笑う様に肩を竦めると何も答えてはくれなかった。
 その時私はその態度に少し違和感を感じた。

 夕闇が迫り仕事が終わりの時間になったので私は畑の裏側にある門に向かってこそこそと歩いていった。
 この場所と正門だけが唯一の外の世界への扉だった。 門番達も交代の時間のようで火を囲みながら何人かが夜飯を食べている。
 隠れていたつもりだがすぐに見つかり

「早く帰って点呼しないとまた殴られるぞ。」
と訝しげな視線を向けた門番が気怠そうに言った。

 秋の風が気持ち良く吹いている。
 太い格子状の裏門からは外が見えた。草原が広がり遠くからクリーチの唸り声が聞こえる。
 それだけが私の世界だった。


***



真夜中、外の騒がしい声で目が覚めた。とても寒い、異変を感じてテーブルの燭台に火を灯すと私はジンを起こした。
 外から銃声が断続的に聞こえている。
「何かがおかしい、クリーチ撃退にしては銃声が続き過ぎている。」
 寝ぼけ眼のジンに声をかける。
「確かに、そして音が近過ぎるな。」
 敵襲を知らせる鐘が鳴る。ここに来てから初めての事だった。
 私とジンはすぐにコートを羽織り銃を持ち部屋を出た。周りの兵士達に声をかける。
「クリーチか?」
背の高い兵士が言う
「分からないがコロニーの中で戦闘が起きているようだ、皆で下に向かおう。」 
 私達は五人ほどの人数で宿舎の階段を駆け下りた。引き金に指をかける。

 中庭に着いた時裏門の方がやけに明るい事に気がついた。私はそちらの方へ一目散に駆け出す、後ろからジンたちの追うぞと言う声が聞こえる。
 息を切らしながら墓の前を通り裏門へ抜ける道へ出ると遠くに見える畑が燃えていた。

 叫び声が聞こえる、それも人の、断末魔の叫びが


 畑の手前で二十人程の兵士達が近くにある遮蔽物の後ろから銃を撃っている。
 私は近くにいる兵士に声をかけた。
「咎人が襲って来た!」
 と彼は興奮気味に叫ぶ。
 その名前、だけは聞いた事がある。咎人とは何らかの罪を犯し村から追われた人間達の総称だった。
 兵士達は人に対して銃を撃った事がない者ばかりで明らかに圧されている。
向こう側はこちらを殺しに来ているというのにコロニーの兵士達にはその覚悟は出来ていなかった。
当たり前だが訓練で人間を殺した事などないのだ、その動揺が目に見えてわかった。
 コロニー側には負傷者や死人も多数出ている様だ。

 裏門の方角を見ると閉ざされているはずの格子が真ん中からバックリと裂けて炎を吹き上げ燃えていた。
 敵は火矢を撃ちながら畑を横切り、隊列を組みこちらに向かってきている。
 数は五十は居るだろうか、角の生えた奇妙な仮面を被り誰一人と顔は見えない。
 号令なのか歌なのかよく分からない呪いの様な不気味な声を上げ続けている。

 明らかに異様な集団だった。



   
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