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第八話 死に至る道、そして
しおりを挟む私は全てを呪った。
この穢れてしまった身体も、知ってたかもしれないのに何も教えてくれなかった二人もコロニーにいる狂った信者の群れもこの世界も何もかもを呪った。
吐き気は止まらず何も喉を通らない。
気分が悪い、いっそこのまま心臓を抉り出してやろうかとも考えたがまだ確かめないと、と思った。
村に帰って両親と兄弟に会いヨコが言っていた事を嘘だと言ってもらうまでは死ねない。
それだけが唯一私を人足らしめていた。
私は人を退け誰にも打ち明けられずにいた。
護り手もヨコも今の現状を受け入れ、心が落ち着くまでは何もしなくて良いと言って来た。
あの夜から三日が経ち何もせずベッドに横になっているとヨコがノックをして入って来て近くの椅子に座った。
ジンはこの部屋にまだ戻って来ていない。
彼が左腕を失ったという話を人伝に聞いたが私はまだ保護室に会いに行けずにいた。
「様子を見に来ました。具合はいかがでしょうか?」
それには答えず質問を返す。
「これから私に何をさせようと言うんだ?」
ヨコが答えた。
「新しいニエ様としてこの村を総べ次の継手を育むのです。それが我々の術であり全てなのです。コロニーを護る光となって下さい。これから忙しくなります。
被害は甚大で傷ついた者も死んでいった者も多いのですから。
貴方が皆の希望になる様に私達は手助けを致します。
リンネが死んだ事はまだ伝えていませんが近いうちに皆に伝えそして新しいニエ様として貴方を継承致します。護り手の補充もしなければなりません、能力を吟味し貴方の采配で決めていただいて構いません。」
「継手の事はコロニーの皆は知っていたのか?」
「連れて来られた子等は貴方の様に知らない者が大半です。
二十歳までの継承が済めば勘の良い者は察する事もあるでしょうがコロニーが作られてから大いなる神は秘匿されそれが美徳とされているのです。
護り手には大まかに伝えられますが全ては理解出来ないでしょう。
しかし大いなる神はすでに皆の心の中には存在している筈です。
ここにいる事が唯一の幸せでここにいる事が報いる事だと貴方達はそう教えられて来たではありませんか。
信仰はこの場にでは無くそれ以外によって形成されていくものなのですから。
そして人間世界の核はコロニーの中にこそ存在しています。
ここでは次の継手を探す事、そして捨てられた子等を一人でも生きていける様に育てる事を命題としていてそれが我らの大いなる神に報いる事、そして全ての人間の幸福に繋がるのです。」
それからヨコは無表情のまま窓の外を見た。
それから少し間を置いて話し始める。
「誠に言い辛い事ですが貴方のニエとしての期限はどれだけ長くとも十年です。前も言いましたが大いなる神は好みが偏っていまして発育し美しく若い肉体を必要としています。
幼すぎても定着せず三十歳前後の壮年期に差し掛かると代々のニエは亡くなってしまうのです。
それをどうか受け入れて頂きたい。それまでどうか幸せな人生をお過ごし下さい。その為には…」
テーブルに置いてあった料理が載った盆を怒りに任せてぶち撒けた。大きな音が鳴る。
「出て行け…」
ヨコはそこから何も言わずドアを出る時に深々と頭を下げて去っていった。
その時私はやっとニエと呼ばれている理由が分かった。それは生贄の贄だった。
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