コロニー

神楽 羊

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第九話 燃える咎人

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ネンが育った場所



 彼らは過酷な土地で暮らしていた、自らの事を山の民だと名乗りながら。

 大いなる神に異を唱えた者達は咎人と呼ばれ顔に烙印を押されて村を追放された。
 そして彼らは人目を避けるように山へと逃れ集落を作った、それがこの場所の始まり

 これはコロニーが作られる随分と前の話だ。

***

 村の長はよくこんな話をする。

「私達は人間として正しい事をしたからこそ村を出る事になったのだ。我々に咎などなく若いお前達が負い目を感じる必要は毛程も無い。
 決して砂の者達を恨んではいけない、縋る事でしか生きれない弱い人間がそれ程多いのだ。
 ここで我々は神を持たず助け合って生きよう。」


 ネンはその言葉を聞くたびに心の中にあるどす黒い汚泥の様な感情が積もるのを感じる。 
 意味は分かる。
 だがそれでは濡れ衣を着せられた全ての民に申し訳が立たないのではないか?
 自分の母親の美しい顔を焼け爛れさせた者達をこのまま許しておいていい筈がない。

 ネンの母は烙印を押されたあの日から塞ぎ込み心を無くしてしまった。
 父にもネンにも終に癒せる事は無く山の奥にある崖から飛び降りて死んでしまった。

「大いなる神を盲信し継承し、生贄にされていく若者達を見過ごす事が出来なかった仲間達を私は誇りに思っている。」

 酒を飲む度に同じ事を何度も話す村長の左目は灼けて白く濁っている。
 何も見えない瞳で彼は何を見ているというのか。
 幼いネンには理解が出来なかった。

 村の大人達も私達の子供はクリーチに食われる為に生まれて来た訳でも生贄に捧げられる為に生まれた訳でもないのだと良く語り合っていた。

 だからこそとネンは思う。
 その禍根を断ち切らなければならないと。


 そうして彼等は目立たぬように暮らして来たが山の民の中にもネンの様な思いを持ち、先祖の代からの土地や財産、全てを奪われ山奥で暮らす事を強いられた事をどうしても許せず大いなる神に恨みを募らせ殺そうとする者達がいた。

 彼らは煮えたぎる感情を押し殺し仲間を集め復讐の牙を研いでいた。
その勢力は年を経る毎に増えていった。

 継手を育てるコロニーが築かれ継承の儀式が確立されたという情報を得た不許の主義者達は蜂起を決意する。

 大いなる神が秘匿されニエを中心としたコロニーを襲う為の準備を彼等は着々と進めていた。

 ネンは継手を燃やす事こそが唯一この世界を幸福に出来る事だと考えていた。
 その為には自分の身などどうなっても構わない。若いネンはただそう信じたのだ母の形見の首輪を肌身離さず身につけながら。

 このまま波風を立てずこの場所で暮らそうとする者達と継手を討ち取ろうとする者達で対立が起こり山の民は分裂、袂を分かつ事となる。

 不許の主義者達は自らの事を【浄め火】と名乗りコロニーに対する殺人の訓練を積み重ね火傷の跡を隠す為に仮面を付けた。
 そして周到な用意を重ねコロニーを襲撃する事となる。

 ネンは自ら進んで継手を燃やす役目を受けると心に決めていた。
 それは自分の命と引き換えだという事もネンは知っていた。
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