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第十三話 あの日見た世界
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ヨコ、そして護り手が手薄な今行動するしかないと三人で遅くまで話し合った。眠気に襲われないようにコーヒーを啜る。
まずニーナが連絡を取り【清め火】の仲間に馬車をこちらへ向かわせるよう手筈を整える。
今までの全てを手紙にしたため、打つ手の無い場合は新しいニエの中に存在する大いなる神を差し出すという条件で
彼等からすれば悲願を果たすこの上ない機会を逃すはずもなく、すぐに返事は返ってくるだろう。
大方私達が予想した通り、ニーナの他に存在する協力者を通じて出した文はすぐに戻り明後日の新月の晩、私達三人はニーナの故郷へ向けて出発する事になった。
各々怪しまれぬ様に旅の支度を済ませる。
銃を持ち食糧を背嚢に背負いコロニーが静寂に包まれる頃私達は出発した。
まだ修復されきっていない簡易的な裏門の板、その僅かな隙間をくぐり抜け身をかがめながら草原を抜ける。
私は目の前にある開けた大地を感慨深く眺める。
あの時【清め火】達が来なければ、クリーチの侵入が無ければ
そして継手にならなかったならこの場所に立つ事は出来なかったかもしれない。
そしてこの旅が終わればもう生きてはいないのかもしれない、そう思った私は草いきれの匂いを精一杯吸い込んだ。
クリーチに警戒をしながらそして夜警に立っている兵士達に気づかれぬよう細心の注意を払いゆっくりと歩く。
明かりも付ける事が出来ずクリーチに襲われても銃は使えない、それはそのまま全滅を意味していた。それだけは絶対にする訳にはいかない。
幸いな事にクリーチに襲われる事もなく森に辿り着いた私達は木陰に座り込む水を飲んだ。
仮面達が馬車を用意して待っていた。
馬車の数は五つで異形を含めて三十人はいるだろうか?私達の護衛と見張りを兼ねているのだろう。
そして私達は馬車に乗り込む。静かに一団は目的地に向けて走り出す。
大昔からのデジャヴの様に私は窓の外を見た、
–––––この偶然の中に意志は宿っているのだろうか?
ぼんやりとそんな事を考えていた。正面に座るジンとニーナも何となく物思いに耽っている様に見えた。
滑る様に走る馬車は森を走り続け、少し開けた草原に出た。
血と獣の臭いが充満し馬車の上に居る仮面達が大声で何かを一斉に叫び出す。
深い傷を負った赤目が襲いかかって来た、手負いの獣は執拗にニエを狙ってやって来たのだ。ただ傷は深く、満足に動く事さえままならない様に見える。
瞳はとうに落ち赤目の由縁はもう無い。
大いなる神を取り入れる為だけに動く可哀想な土塊、本能のままにこうすることしか出来ない物、私は赤目を憐み、慈しみそして【私達】に似ていると思った。
ただここで終わる訳にはいかない。
戦闘体勢に入った仮面達と私達は火の矢と鉛玉を傷だらけの赤目にありったけ打ち込んだ。反撃する事も出来ず、声を上げる暇も無く赤目は燃えながら倒れそして手足の方からゆっくりと灰になっていく。
思わず私は駆け寄り赤目の頭を撫でる。
「お前は誇り高く戦った。痛かったろう、辛かったろうに。後は私に任せてゆっくりとお休み。」
私の目から涙が頬を伝う。何故か分からないが不意に家族の顔が浮かんだ。全てのものはただ自ら為すべき事を為しているだけなのだ。
意志は必ず存在している。
その思いをしっかりと噛み締め私は馬車に乗り込んだ。
まずニーナが連絡を取り【清め火】の仲間に馬車をこちらへ向かわせるよう手筈を整える。
今までの全てを手紙にしたため、打つ手の無い場合は新しいニエの中に存在する大いなる神を差し出すという条件で
彼等からすれば悲願を果たすこの上ない機会を逃すはずもなく、すぐに返事は返ってくるだろう。
大方私達が予想した通り、ニーナの他に存在する協力者を通じて出した文はすぐに戻り明後日の新月の晩、私達三人はニーナの故郷へ向けて出発する事になった。
各々怪しまれぬ様に旅の支度を済ませる。
銃を持ち食糧を背嚢に背負いコロニーが静寂に包まれる頃私達は出発した。
まだ修復されきっていない簡易的な裏門の板、その僅かな隙間をくぐり抜け身をかがめながら草原を抜ける。
私は目の前にある開けた大地を感慨深く眺める。
あの時【清め火】達が来なければ、クリーチの侵入が無ければ
そして継手にならなかったならこの場所に立つ事は出来なかったかもしれない。
そしてこの旅が終わればもう生きてはいないのかもしれない、そう思った私は草いきれの匂いを精一杯吸い込んだ。
クリーチに警戒をしながらそして夜警に立っている兵士達に気づかれぬよう細心の注意を払いゆっくりと歩く。
明かりも付ける事が出来ずクリーチに襲われても銃は使えない、それはそのまま全滅を意味していた。それだけは絶対にする訳にはいかない。
幸いな事にクリーチに襲われる事もなく森に辿り着いた私達は木陰に座り込む水を飲んだ。
仮面達が馬車を用意して待っていた。
馬車の数は五つで異形を含めて三十人はいるだろうか?私達の護衛と見張りを兼ねているのだろう。
そして私達は馬車に乗り込む。静かに一団は目的地に向けて走り出す。
大昔からのデジャヴの様に私は窓の外を見た、
–––––この偶然の中に意志は宿っているのだろうか?
ぼんやりとそんな事を考えていた。正面に座るジンとニーナも何となく物思いに耽っている様に見えた。
滑る様に走る馬車は森を走り続け、少し開けた草原に出た。
血と獣の臭いが充満し馬車の上に居る仮面達が大声で何かを一斉に叫び出す。
深い傷を負った赤目が襲いかかって来た、手負いの獣は執拗にニエを狙ってやって来たのだ。ただ傷は深く、満足に動く事さえままならない様に見える。
瞳はとうに落ち赤目の由縁はもう無い。
大いなる神を取り入れる為だけに動く可哀想な土塊、本能のままにこうすることしか出来ない物、私は赤目を憐み、慈しみそして【私達】に似ていると思った。
ただここで終わる訳にはいかない。
戦闘体勢に入った仮面達と私達は火の矢と鉛玉を傷だらけの赤目にありったけ打ち込んだ。反撃する事も出来ず、声を上げる暇も無く赤目は燃えながら倒れそして手足の方からゆっくりと灰になっていく。
思わず私は駆け寄り赤目の頭を撫でる。
「お前は誇り高く戦った。痛かったろう、辛かったろうに。後は私に任せてゆっくりとお休み。」
私の目から涙が頬を伝う。何故か分からないが不意に家族の顔が浮かんだ。全てのものはただ自ら為すべき事を為しているだけなのだ。
意志は必ず存在している。
その思いをしっかりと噛み締め私は馬車に乗り込んだ。
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