12 / 20
第十二話 告白
しおりを挟む
狭い保護室で三人とも次の言葉を探し続けた。
動揺を隠せない二人、ニーナは俯き肩を震わせている。どうやら泣いている様だ。
「なんで…なんで君なんだよ…なんで、なんで!!」
ニーナの声が部屋に木霊する。
まだ伝えていない一番大事な事を私は口にする。
「僕でこの手で継手信仰を終わらせようと思うんだ。」
「お前それはどういう事だ?」
「心臓にいるこいつを取り出して焼く。だから二人に力を貸して欲しい。」
「君、それをするという事がどういう事か分かっているの?
死んじゃうんだよ?何で君がニエなの!何でこんな事になっちゃうの!」
取り乱し、泣き叫びながらニーナが言う。
私は鎮まった心のままベッドに横たわるジンと隣の椅子で項垂れるニーナを交互に見つめながらゆっくりと頷く。
「分かってる。こいつがいるから人間は苦しまなくてはいけないんだ。
だからここで、僕がそれを終わらせる。大いなる神を殺す。」
長い沈黙が過ぎる間、私の決意が変わらない事を二人とも理解した様だ。
思い詰めた顔を貼り付けたまま小さな声でニーナがぽつりぽつりと話し始めた。
「【清め火】ならそのやり方が分かるかもしれない、わたしの育った場所に辿り着ければだけれど。」
私もジンもニーナが何を言っているのか分からなかった。
「わたしは清め火の村からここに送り込まれ紛れ込んだ者。
そしてコロニーの情報を【清め火】に渡し続けて来たの。
幼い頃から灼かれた顔を忘れるなと教えられて来た。全てはニエを燃やす為だと教えられて来たから。」
髪をかき上げたニーナの片目は焼かれ白く濁っていた。
「そしてあの夜仮面の者達が来るのも知っていた。でも聞いて欲しい。
ニエだけを狙うと彼らは言っていたの。こんなにコロニー側に死者や怪我人が出るなんて思っていなかったの。それだけは信じて、お願い…」
私とジーンはニーナが泣き止み落ち着くまで待った。
「それでね、もう何が大事な事なのか分からなくなっちゃった。
どこにも居場所がない気がして。
コロニーを裏切り、清め火ももう信じられくなった。そうしたら次は君がニエになってしまった。わたしはどうしたらいいの?教えてよ君たち、わたしはどうしたら良かったの?教えてよ…」
「俺達を信じればいい。」
ジンが優しく声をかける。やはりこの男は頼りになると私は思った。
ジンが真っ直ぐな目を私に向け語りかける。
「その話に乗った、ただお前を殺す為ではなく生かす為に付いて行く、ニーナの故郷までな。そこに行けば何か良い手が思い浮かぶかもしれない。」
気づけば三人とも泣いていた。
「私が貴方を殺さなければならない所だった。そうなっていたら私も心臓を燃やした後、自分の喉を掻き切っていたと思う。そんな事したくない。」
ニーナは涙を流しながら悲しそうに微かに笑うと言った。
私はこの運命に抗おうと思った。愛する人にこれ以上辛い思いをさせる訳にはいかないのだ
動揺を隠せない二人、ニーナは俯き肩を震わせている。どうやら泣いている様だ。
「なんで…なんで君なんだよ…なんで、なんで!!」
ニーナの声が部屋に木霊する。
まだ伝えていない一番大事な事を私は口にする。
「僕でこの手で継手信仰を終わらせようと思うんだ。」
「お前それはどういう事だ?」
「心臓にいるこいつを取り出して焼く。だから二人に力を貸して欲しい。」
「君、それをするという事がどういう事か分かっているの?
死んじゃうんだよ?何で君がニエなの!何でこんな事になっちゃうの!」
取り乱し、泣き叫びながらニーナが言う。
私は鎮まった心のままベッドに横たわるジンと隣の椅子で項垂れるニーナを交互に見つめながらゆっくりと頷く。
「分かってる。こいつがいるから人間は苦しまなくてはいけないんだ。
だからここで、僕がそれを終わらせる。大いなる神を殺す。」
長い沈黙が過ぎる間、私の決意が変わらない事を二人とも理解した様だ。
思い詰めた顔を貼り付けたまま小さな声でニーナがぽつりぽつりと話し始めた。
「【清め火】ならそのやり方が分かるかもしれない、わたしの育った場所に辿り着ければだけれど。」
私もジンもニーナが何を言っているのか分からなかった。
「わたしは清め火の村からここに送り込まれ紛れ込んだ者。
そしてコロニーの情報を【清め火】に渡し続けて来たの。
幼い頃から灼かれた顔を忘れるなと教えられて来た。全てはニエを燃やす為だと教えられて来たから。」
髪をかき上げたニーナの片目は焼かれ白く濁っていた。
「そしてあの夜仮面の者達が来るのも知っていた。でも聞いて欲しい。
ニエだけを狙うと彼らは言っていたの。こんなにコロニー側に死者や怪我人が出るなんて思っていなかったの。それだけは信じて、お願い…」
私とジーンはニーナが泣き止み落ち着くまで待った。
「それでね、もう何が大事な事なのか分からなくなっちゃった。
どこにも居場所がない気がして。
コロニーを裏切り、清め火ももう信じられくなった。そうしたら次は君がニエになってしまった。わたしはどうしたらいいの?教えてよ君たち、わたしはどうしたら良かったの?教えてよ…」
「俺達を信じればいい。」
ジンが優しく声をかける。やはりこの男は頼りになると私は思った。
ジンが真っ直ぐな目を私に向け語りかける。
「その話に乗った、ただお前を殺す為ではなく生かす為に付いて行く、ニーナの故郷までな。そこに行けば何か良い手が思い浮かぶかもしれない。」
気づけば三人とも泣いていた。
「私が貴方を殺さなければならない所だった。そうなっていたら私も心臓を燃やした後、自分の喉を掻き切っていたと思う。そんな事したくない。」
ニーナは涙を流しながら悲しそうに微かに笑うと言った。
私はこの運命に抗おうと思った。愛する人にこれ以上辛い思いをさせる訳にはいかないのだ
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる