4 / 12
4、隣国の王子もドン引きです
しおりを挟む隣国の第二王子である私は他国の市場を調査する為平民スタイルで従者と街中を歩いてた所、とある本屋の前で思わず目を剥いた。
「…なぁ、チリク。これは何だ。」
「何だと言われましても、艶本でしょう。…男同士の。」
艶本をこんな店頭の一番目立つ場所に、それも陳列棚いっぱいに置く本屋など見たことも聞いたこともない。
艶本専門店なのかと思えば、艶本があるのは店頭だけで、奥は至って普通の本屋であった。
「あらっ、いらっしゃいませ!こちらの本は同性カップルの方々には三割引で販売しておりますよ!ぜひお手にとってご覧ください!」
呆然と突っ立っていた私達に、女性店員が朗らかに艶本を勧めて来る。
え?同性カップル?聞き間違いか?
俺が混乱していると、横でチリクが
「我々はカップルではありませんので。」
と淡々と否定していた。
…聞き間違いじゃなかったのか。
「それは大変失礼致しました。最近ではロギルダ殿下とレダ様のお陰でお付き合いをオープンにされる同性カップルの方々が増えたものですから…。それで、我々も教会での同性婚受理を応援すべく、こうしてキャンペーンを展開しているのです。」
にっこりそう説明してくれる女性店員の言葉の中に、気になる名前が出て来てまたもや耳を疑う。
「え?今、ロギルダ殿下と仰いましたか?ロギルダ殿下とは、この国の第三王子の?」
思わず聞き返すと、「勿論!そのロギルダ殿下ですよ!」と満面の笑みで返された。
ロギルダ王子はその美貌もさることながら優れた魔法と剣術を操る王族きっての天才だと、他国にまで話が伝わるほどの王子である。
そのロギルダ王子の相手が男?
そんなの、王が許さないだろう。
そう思い黙っていると、女性店員は更に衝撃の事実をぶち込んでくる。
「ロギルダ殿下とレダ様の仲は、もはやこの国で知らない者はいない公認の仲ですもの!ロギルダ殿下のあまりの溺愛っぷりに、陛下も王妃様も既に内々にはお認めになっているとか。でもレダ様はとても恥ずかしがり屋なので、ロギルダ殿下が常に愛を囁きお心を解している最中なのですよ!先日もロギルダ殿下がそんなレダ様にこちらの艶本をプレゼントされて、予習しておくようにと…うふふ!」
それを聞いた私達はあまりの話に固まってしまう。
え、いやいや。
国民も王も公認?
どの国の教会も同性婚など認めていないぞ。
どうなっているのだ。
「…エルウィン様、そろそろ…。」
「あっ、そ、そうだな。」
俺達は女性店員に一言言って本屋の前から移動すると、路地裏に入りチリクとコソコソ話し合った。
「おい、さっきの話は事実だと思うか?」
「事実でなければあの女性店員は懲罰ものですよ。店頭のポップにはロギルダ殿下公認の文字もありましたし…」
既に王と王妃には挨拶済みだが、そんな事一言も聞いていない。
ロギルダ王子とは明日面会する予定だが、何だか不安になってきた…。
「同性婚が受理されていない環境下で、先に国全体に自分達の正当性を認めさせる王子とはどれほどの猛者か…物凄い傲慢で面倒な性格だった場合覚悟が必要だな…。」
「そんな話は聞いたことはありませんが、まぁ気持ちを引き締めておくのは良いことではありませんか?」
しかし、俺達はこの時周りから自分達が路地裏でどう見えているか全く気付いていなかった。
「ねぇ、あのカップル、凄く恥ずかしがり屋なのね。初々しいわ。」
「本当。こんな所でコソコソしなくても、この国ではロギルダ殿下がそこら中でレダ様とイチャイチャしてるから、ちょっとくらいくっ付いて歩くくらい誰も何とも思わないのにね。」
79
あなたにおすすめの小説
英雄の帰還。その後に
亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。
低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。
「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」
5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。
──
相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。
押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。
舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。
かくして王子様は彼の手を取った
亜桜黄身
BL
麗しい顔が近づく。それが挨拶の距離感ではないと気づいたのは唇同士が触れたあとだった。
「男を簡単に捨ててしまえるだなどと、ゆめゆめ思わないように」
──
目が覚めたら異世界転生してた外見美少女中身男前の受けが、計算高い腹黒婚約者の攻めに婚約破棄を申し出てすったもんだする話。
腹黒で策士で計算高い攻めなのに受けが鈍感越えて予想外の方面に突っ走るから受けの行動だけが読み切れず頭掻きむしるやつです。
受けが同性に性的な意味で襲われる描写があります。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
嫌いなアイツと一緒に○○しないと出れない部屋に閉じ込められたのだが?!
海野(サブ)
BL
騎士の【ライアン】は指名手配されていた男が作り出した魔術にで作り出した○○しないと出れない部屋に自分が嫌っている【シリウス】と一緒に閉じ込められた。
酔った俺は、美味しく頂かれてました
雪紫
BL
片思いの相手に、酔ったフリして色々聞き出す筈が、何故かキスされて……?
両片思い(?)の男子大学生達の夜。
2話完結の短編です。
長いので2話にわけました。
他サイトにも掲載しています。
学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。
第二話「兄と呼べない理由」
セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。
第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。
躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。
そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。
第四話「誘惑」
セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。
愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。
第五話「月夜の口づけ」
セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる