王子と俺は国民公認のカップルらしい。

べす

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4、隣国の王子もドン引きです

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隣国の第二王子である私は他国の市場を調査する為平民スタイルで従者と街中を歩いてた所、とある本屋の前で思わず目を剥いた。

「…なぁ、チリク。これは何だ。」

「何だと言われましても、艶本でしょう。…男同士の。」

艶本をこんな店頭の一番目立つ場所に、それも陳列棚いっぱいに置く本屋など見たことも聞いたこともない。

艶本専門店なのかと思えば、艶本があるのは店頭だけで、奥は至って普通の本屋であった。

「あらっ、いらっしゃいませ!こちらの本は同性カップルの方々には三割引で販売しておりますよ!ぜひお手にとってご覧ください!」

呆然と突っ立っていた私達に、女性店員が朗らかに艶本を勧めて来る。

え?同性カップル?聞き間違いか?

俺が混乱していると、横でチリクが
「我々はカップルではありませんので。」
と淡々と否定していた。

…聞き間違いじゃなかったのか。

「それは大変失礼致しました。最近ではロギルダ殿下とレダ様のお陰でお付き合いをオープンにされる同性カップルの方々が増えたものですから…。それで、我々も教会での同性婚受理を応援すべく、こうしてキャンペーンを展開しているのです。」

にっこりそう説明してくれる女性店員の言葉の中に、気になる名前が出て来てまたもや耳を疑う。

「え?今、ロギルダ殿下と仰いましたか?ロギルダ殿下とは、この国の第三王子の?」

思わず聞き返すと、「勿論!そのロギルダ殿下ですよ!」と満面の笑みで返された。

ロギルダ王子はその美貌もさることながら優れた魔法と剣術を操る王族きっての天才だと、他国にまで話が伝わるほどの王子である。

そのロギルダ王子の相手が男?
そんなの、王が許さないだろう。

そう思い黙っていると、女性店員は更に衝撃の事実をぶち込んでくる。

「ロギルダ殿下とレダ様の仲は、もはやこの国で知らない者はいない公認の仲ですもの!ロギルダ殿下のあまりの溺愛っぷりに、陛下も王妃様も既に内々にはお認めになっているとか。でもレダ様はとても恥ずかしがり屋なので、ロギルダ殿下が常に愛を囁きお心を解している最中なのですよ!先日もロギルダ殿下がそんなレダ様にこちらの艶本をプレゼントされて、予習しておくようにと…うふふ!」

それを聞いた私達はあまりの話に固まってしまう。

え、いやいや。
国民も王も公認?
どの国の教会も同性婚など認めていないぞ。
どうなっているのだ。

「…エルウィン様、そろそろ…。」

「あっ、そ、そうだな。」

俺達は女性店員に一言言って本屋の前から移動すると、路地裏に入りチリクとコソコソ話し合った。

「おい、さっきの話は事実だと思うか?」

「事実でなければあの女性店員は懲罰ものですよ。店頭のポップにはロギルダ殿下公認の文字もありましたし…」

既に王と王妃には挨拶済みだが、そんな事一言も聞いていない。
ロギルダ王子とは明日面会する予定だが、何だか不安になってきた…。

「同性婚が受理されていない環境下で、先に国全体に自分達の正当性を認めさせる王子とはどれほどの猛者か…物凄い傲慢で面倒な性格だった場合覚悟が必要だな…。」

「そんな話は聞いたことはありませんが、まぁ気持ちを引き締めておくのは良いことではありませんか?」

しかし、俺達はこの時周りから自分達が路地裏でどう見えているか全く気付いていなかった。

「ねぇ、あのカップル、凄く恥ずかしがり屋なのね。初々しいわ。」

「本当。こんな所でコソコソしなくても、この国ではロギルダ殿下がそこら中でレダ様とイチャイチャしてるから、ちょっとくらいくっ付いて歩くくらい誰も何とも思わないのにね。」
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